連載第5回(最終回)となります。
- 資産運用のよいアドバイザーに出会うには?
- 私がバイサイドアドバイザーを始めた理由
- 利益を最大化するためにプロフェッショナルの知識と時間を買う
- よい資産運用アドバイザーの選び方
- 信頼できる資産運用アドバイザーを選ぶための11の基準(今回)
資産運用はギャンブルではない
資産運用を行なう上で、リスクをとることは避けられません。実際に、「資産運用は怖い」というイメージを抱いている方は少なからずおられるでしょう。
ただし、失敗する可能性はもちろんゼロではありませんから、怖くないとは言いませんが、正しく怖がっている方よりも、“投資”と“投機”を混同して怖がっている方が多いように思います。
車の運転も目をつぶって速度超過で運転すると怖いですが、しっかり全体を俯瞰し制限速度を守り状況を把握しながらの運転は怖くないのと同じです。
資産運用とは、自らの資産を保持、または増やすために、株式や債券、不動産などに“投資”を行なうことを意味するのです。
投機はギャンブルと言い換えることができます。
ギャンブルは一瞬でほぼ全ての財産を失う可能性がゼロではありません。大きなリターンの可能性もあるとはいえ、それを投資と呼ぶべきではないでしょう。
投資は、当然ながらプラスになることを期待して行なうものですが、一義的には財産を守るための行為です。
ですから、ひとつの出来事で財産の大部分を失うようなことはあってはならず、なればこそポートフォリオも、国家や商品の種類の別を問わずできるだけ分散する必要があるのです。
個人ですべてをカバーするのには限界がある
分散投資に必要不可欠のマクロな視点について、「どれだけマクロであればよいのか」という疑問を持った方もおられるのではないでしょうか。
一言でいってしまえば、その答えは「広ければ広いほどよい」ということになります。
とはいえ、これまで日本株だけを買っていた投資家の方が、10の地域に目を配ろうとすると、それぞれに割くことのできる時間も10分の1になってしまいます。
また、株式だけではなく通貨や不動産も見ようとすれば、さらに減ってしまうでしょう。あくまでも、無理がない範囲で見聞を広げるバランス感覚が必要です。
しかし、自らそのような知識をゼロから積みあげるのは、どうしても限界があります。
やはり私としては、自分の代わりに何年・何十年と知見を積みあげてきたアドバイザーに、もうひとつの目になってもらうことをお薦めしたいところです。
ちなみに、海外に強いアドバイザーとはいえ、世界中のありとあらゆる国を、日本と同じレベルでカバーしているわけではありません。私もセルサイドアドバイザー時代に、それなりに海外経験を積ませていただきましたが、得意な地域、不得意な地域というものは存在します。
視野の広さと専門性に関しては、ある程度は個人の能力でカバーできるものの、究極の部分では両立することは不可能なのです。
商品に関しても、世界的に同時株安になるリーマン・ショックのようなことが再び起こる可能性は否定できません。株式しか買ったことのない投資家は、債券や為替、不動産などにも目を向けておくべきです。
当然それだけの経済危機ともなれば、株式以外も地盤沈下を起こしてしまうかもしれませんが、視界に入る非常口の数くらいは増やすことができるでしょう。
絶えず敏感に向き合っている人を探す
刻一刻と変化する投資対象をフォローするためには、自分自身も同じような速度で動かなければいけません。仕事などをしながらでは、非常に難しいことです。だからこそコーチのアドバイスが必要なのではないでしょうか。
企業は時代にマッチした価値を生み出さなければ生き残ることができません。投資も同様に、絶えず変化を受け入れながら行なうことが重要です。
同じニュースに対しても敏感な人と鈍感な人がいます。
人は関心のないものには鈍感になります。しかしこれまで鈍感であった分野が、トレンドになってしまうことも往々にしてあります。お客様に得意でない分野であれば、わかりやすく解説してもらう必要があるでしょう。
ジャーナリストの池上彰さんは、取材する時間がとれなくなるからと、自ら仕事量をセーブするまでは、テレビでほぼ毎日見かけるほどの人気を誇っていました。
その解説のわかりやすさが池上さんの最大のストロングポイントですが、それはアドバイザーにおける説明力と同義です。
最新動向について知りたくなったときは、常にそれらに敏感に向き合ってきた人にアドバイスを求めるべきなのです。
信頼できる資産運用アドバイザーを選ぶための11の基準
最後にまとめも兼ねて、アメリカのCBSで取りあげられていた「信頼できるバイサイドアドバイザーを選ぶための11の基準」をご紹介しましょう。
日本では当てはめるのが難しいタイプのものもありますが、総じてわかりやすい形でまとめられています。
- 経験のあるアドバイザーかどうか
- 説明力のあるアドバイザーかどうか
- そのアドバイザーに払う報酬の仕組みを理解できているかどうか
- そのアドバイザーは官公庁に登録されているか(無許可ではないか)
- アドバイザーに依頼するお金の保管場所はどこか(口座がどこにあるか)
- 商品の品ぞろえが多いかどうか
- 取引を最終的に決めるためのプロセスを説明してくれるアドバイザーかどうか
- アドバイザーとのコンタクト頻度はどれくらいか
- いままで法令違反をしたこのないアドバイザーか
- アドバイザーの人柄はどうか
- あなたのアドバイザーは最低2人から紹介状をもらえるか
それぞれの詳細については、これまでの連載および拙著『BUY SIDE ADVISOR』も合わせてご参照ください。
▼これまでの連載記事一覧:
▼井上正明:
Avalon株式会社代表取締役兼CEO。
1959年兵庫県生まれ。香川大学卒業。
日興証券、日興証券ニューヨーク支店、日興証券シドニー支店、日興証券インドネシア支店、その後外資系証券であるメリルリンチシンガポール支店、帰国後メリルリンチ日本証券、独立系FP事務所にてFP業務を経て、現在は、独立し、富裕層向けにバイサイドの資産運用アドバイスを行う。