今回は、プレゼンテーション資料を作成するにあたっての、シナリオ作り(プレゼンプランニング)の解説本です。
シンプルプレゼンは、混沌を削ぎ落した後に現れる
最近は、TED(学問、学術、エンターテインメイントなど様々な世界のプロが短時間で印象的なプレゼンをするイベント) やPechaKucha Night(「20枚のスライドを1枚20秒で話す」という縛りをつけたプレゼンイベント)など、心動かすプレゼンテーションを気軽にネットなどで視聴する機会が増えました。
これらのイベントで話すプレゼンターのスライドは、どれもシンプルでインパクトがあるものです。登壇するプレゼンターを目標に、プレゼンスライドを作ろう、スピーチを研究しよう、と頑張っている方も多いことでしょう。かくいう私も、こんなプレゼンができたらいいなーと思い、憧れながら日々研究しているところです。
ただ、いつも自戒を込めて気をつけなければいけないと思っていることは、「プレゼンスライド作成は目的でなく手段だということを忘れない」「結果だけでなくプロセスを追うようにする」ということです。
TEDやPechaKucha Nightで使われるスライドがいくらシンプルだからといって、プレゼンターが、プレゼン資料を作り始めるときからシンプルに考えているとは限りません。
中にはそういった天才的なプレゼンターはいるかもしれませんが、きっと多くの人は様々な想いや意思、伝えたいことがある中で、「どれを削り、どれを残すか」「どのタイミングで何を言うか」を究極まで考え、煮詰めた先にシンプルがあるわけです。
つまり、「シンプルは、混沌を削ぎ落した後に現れるものだ」ということです。
いくらシンプルでおしゃれで格好いいスライドを作っても、表面的なものをたどるだけでは、心動かすプレゼンにはなりません。だからこそ、混沌のプロセスもきちんと踏まないといけないし、勉強していかないといけないのではないかと考えています。
最近プレゼンの世界では、画面を読み上げるような文字の羅列のスライドは「スライデュメント」(スライド+ドキュメントの造語)といって、「つまらないプレゼン」の代名詞のように言われています。しかし私は、特にプレゼンに慣れないうちは、思考整理のプロセスの一つとして、あえて「スライデュメント」を作ってもいいのではないかと思うのです。「スライデュメント」を作る過程において思考は整理され、自分が伝えたいことが研ぎすまされていくからです。
このことをふまえ、今回、シンプルプレゼンがシンプルになる前のプロセス部分を明らかにした本を作りました。
かっこいいスライドの作り方でなく、伝わるための思考整理の手法をスライドに落とし込んだものです。シンプルプレゼンに行き着く前段階の「資料作成の教科書」のように使っていただきたく、執筆しました。
「キースライド」と「タイミング」がプレゼン設計の要
思考プロセスを考える上でのポイントは「キースライド」(プレゼンのキモとなるスライド)と「タイミング」(キースライドを出す位置と順番)です。
相手の心に響く「キースライド」を作り、相手に出すタイミングを間違えなければ、たとえ流暢なプレゼンができなくても、話をとちってしまっても、相手はきちんと分かってくれます。
この本では、キースライドの作り方、プレゼンで伝えるべき順番(タイミング)を、以下の6つのプロセスに分けて説明しています。
- 自分ゴールを決める
自分がなぜ、この資料を作る必要があるかのゴールを考える
- 相手ゴールを調べる
相手が自分の資料に求めていること、相手の価値観、判断基準を探る
- 自分ゴールと相手ゴールの「かけはし」を探る
「自分のアイディアを採用すると、相手にとってメリットがある」という伝え方ができないか考える
- キースライドを作る
「かけはし」を踏まえた落としどころを端的に表すスライドを作る
- キースライド挿入のタイミングを考える
相手の心に響くタイミングで、キースライドを入れる場所を決める
- 補強スライドを作る
キースライドを補強するスライドを作って順番を調整する
これらを一覧で把握できて、書き込むことによってすぐに活用できる「伝わる図解設計図」もついています。
パワーポイントやキーノートなどのプレゼンソフトが使えなくても、相手に「伝わる」ための下調べ、構成案などの準備のコツが掴めれば、相手が納得するプレゼン資料は作れます。
仕事で資料を作ったことがある方、すべてにお役に立てる本になるよう、実際に、私が「通した」企画書を例にあげながら、ポイントを絞った解説もつけています。本全体の図解ラフも私が作成しました。
この本で紹介している「プレゼン以前のプランニングとしての資料作成」は一見地味です。「プレゼン」というと華やかなイメージがありますが、表舞台の背後には、膨大な時間の準備が眠っているのです。
でも、この地味な作業にこそ、宝が隠れています。
資料作成は、ビジネスパーソンなら誰でも経験したことがあるでしょう。誰でも経験したことがある、地味な作業を丁寧に積み上げていくことが、やがて華やかな表舞台に立つ礎となるのです。
この本が、あらゆるコミュニケーションにおける「うまくいかない」を解決する「かけはし」となりますように。そんな想いを込めて書いた本です。
お役に立てると幸いです!
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今回紹介した新刊『絶対!伝わる図解』の内容を、一番最初に公開するセミナーがあります。残席4だそうです。お目にかかれることを楽しみにしております!
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▼池田千恵:
前向き早起きエバンジェリスト。朝を有効活用してビジネスの基礎体力をつける「Before 9(ビフォア・ナイン) プロジェクト」主宰。
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