「残り時間」は仕事でも毎日のように意識するものです。窓のあるオフィスで仕事をしていると、すなわち外光が入ってくる環境にいると徐々に外が暗くなってきて「残り時間」が減っていくことを実感します。
仕事が予定通りに進んでいればよいのですが、そうでなければこの暗さはプレッシャーになります。
いつも暗くなってから「うわ、もうこんな時間だ!」と驚かされるのですが、これは少しずつ夜の帳(とばり)が降りるために気づくのが遅れるのが原因と言えるでしょう。つまり、“ゆでがえる”です。
ゆでがえるとは、
『2匹のカエルを用意し、一方は熱湯に入れ、もう一方は緩やかに昇温する冷水に入れる。すると、前者は直ちに飛び跳ね脱出・生存するのに対し、後者は水温の上昇を知覚できずに死亡する』
およそ人間は環境適応能力を持つがゆえに、暫時的な変化は万一それが致命的なものであっても、受け入れてしまう傾向が見られる。例えば業績悪化が危機的レベルに迫りつつあるにもかかわらず、低すぎる営業目標達成を祝す経営幹部や、敗色濃厚にもかかわらず、なお好戦的な軍上層部など。
と解説されています(疑似科学的な作り話という指摘もあり)。
真偽はともかく、「うっかり」とか「油断」とか「不意を突かれる」の背景には「暫時的な変化」があると考えられます。
仕事でいえば、朝のオフィスは水の状態、夜遅くのオフィスは熱湯の状態です。
(現実にはほとんどないでしょうが)最初から終電間際のオフィスに出社したのでは「たいした仕事はできない」ということで、その時間でできることを慎重にチョイスできるはずです。
一方、水が徐々に沸点に近づいていくように、朝から出社して少しずつ時間が経っていき、定時を超えて残り時間が減っていく状況にいると、なかなか「今を逃すと間に合わなくなる」という「限界点の超過」に気づきにくくなり、その結果、到底一日ではできない作業量を抱えたまま夜を迎えてしまう、といったことが起こりやすくなります。
そこで、ふだんからオフィスに低音量でBGMを流しておき、「スーパーマリオ」に倣って、例えば3時間おきに徐々にBGMのテンポが速くなるようにしておくと「ハッ、もう3時間たったんだ!」ということにイヤでも気づき、夜になって最悪の事態を迎える前に対策を打つことができるではないか、と思います。一つのアイデアとして。
ちなみに、カフェで仕事をするとはかどるのは、初めから「作業できる時間は限られている」という意識で臨めることが大きいでしょう。そこに「暫時的な変化」の余地はないのです。
少しずつクギを刺していく
僕自身は、毎日23時を限界点と定めています。どんなに仕事が忙しくても、あるいは遊びに夢中になっていても23時には切り上げて、そこからはその日のレビューや翌日の段取りのためのフェーズに移行し、24時には就寝できるように切り替えるためです。
いきなり23時のアラートが鳴っても対応が難しいので、21時台から少しずつ“前奏”が始まります。
たとえば、21時になると「お金にまつわるタスクの締め切り」のリマインダーが届きます(夜遅くにお金に関わる作業をすると、ミスを起こしやすくなるため、21時以降は制限をしています)。22時になると「翌日のゴミ出しの準備」(曜日によって収集内容が変わるので、それに合わせて「燃えるゴミ」とか「資源ゴミ」といった異なるリマインダーが届きます)、22:20になると「歯みがき」といった具合です。
こうして、少しずつその日のクロージングを予感させるリマインダーが届くと、心の準備が進むわけです。これは、以前書いた「プレクロ」の考え方に沿っています。
毎日のことなので、このような“プログラム”を組んでおくと、だんだんリズムに慣れてきて、規則正しい行動習慣が身につくようになります。
ちなみにリマインダーにはiPhoneアプリのDueを使っています。1分ごとにスヌーズを設定しているため、完了させるまでしつこくリマインドしてくれる点が使い続けている(手放せない)理由です。
合わせて読みたい:
時間によって行動を制限する、という考え方とその効用はこの本で徹底的に解説されています。