タスクを実行する不安


最近、なにかについて不安になったことはありますか?

私は最近になって、タスク管理に関する課題を検討するにあたり、認知心理学でも行動科学でも脳(認知神経科学)でもなく、もっぱら精神分析を援用しています。

そういう活動についてもどかしく思われたり、もっといえばイライラする人もあるでしょう。

個人的な話をすると私はずっと封印してきた箱を今になってひっくり返してどんどん引っ張り出しているのです。だから急に困ったことを始められたと思う人がいても不思議ではないのです。

引っ越し以来、ずっと奥の方にしまっておいたパンダマークの段ボール箱を野放図に開封しているようなものです。

でも精神分析のほうが、「仕事術」を説明するツールとして、はるかに私には腹落ちする内容が含まれているわけです。たしかにリスクは意識します。しかし人間は永遠に生きられるわけではありません。なんらかの保身のための安全運転を一生続けていられるものでもないと踏ん切りをつけたわけです。

不安とは、こういうときには典型的な心境です。不安とはなにか天然のモノが私の中で暴走を始めつつある時に先行きを心配する心理です。行動科学を引用しておけば少々の「突っ込み」が入ってもあの手この手で十分に対応できます。

そもそも行動科学は、より現代にフィットして「科学らしく」見えるから好意的な反応を期待できます。

これが「精神分析」だの「フロイト」だのとなると、あまり好意的な反応なんか期待できません。ましてや「タスクシュート」との関連なんかイメージしづらいに決まっています。そんなことを始めずに「安泰な余生」を確保するべく行動指針を固めたほうがいいのではないでしょうか?

と、ある面の「私」は考えます。これを防衛・適応メカニズム(防衛機制)というわけです。私の中の「親役(が超自我と名づけられています)」もこれをはっきりと支持します。

「超自我」は一般に「私」に「罪悪感」を覚えさせるのが典型的な戦略です。「ホラ! だから言わんことじゃない!」というのが口グセです。

超自我は、元を正せば私の「母」だっただけに(私の個人的な事情です。「父」の影はここではむしろ薄い)さすがは私のことをよく知っています。私の「罪悪感」を喚起するにはなにを言えばいいのか、どんな声音を使ったらいいのかをよく知っているのです。

私がMacの「ゴミ箱」のようなところにしまっておいた「世間に出せない私」こそが「エス」の正体です。精神分析では「エス(イド・イット・それ)」と言いますし、ユングは「影」と言いました。

エスはときどきとんでもないことを言い出します。「ぼくだって精神分析の話をしたいよう!」と言ったのは、昨日今日の話ではありません。そのたびに私は冷や汗をかいて、そんな欲望をうまく寝かしつけ、文化に支持されているらしき超自我とうなずきあってきたわけでした。

そんなムリなことをしないで、個人的な興味を満たしたいだけなら家で東畑先生の本でも読んで、自分を慰めていたらいいじゃないの?

これまた母の声です。もちろん現実の母は東畑さんの名前もそれどころか「セイシンブンセキ」なんてクチにもしません。

私は永らくこの「声」に調子を合わせるかっこうで、「安全な話」を表向きして、家でひっそりとフロイト全集だとか河合隼雄さんや小此木啓吾さんの本を読んで気持ちを落ち着けていました。

最近では藤山さんや東畑さんの本を読みあさっては「変なの」が表に飛び出さないように用心してきました。2016年のころのことです。

東畑さんの本にも登場するドナルド・ウィニコットによるとその「世間向きの私」は「偽りの自己」などと言われ、フロイトの本を読んでいる私こそが「ほんとうの自己」というようですが私はべつに「ウソ偽りを書いていた」わけではないのです。タスク管理を認知科学や行動科学で説明するのは決して「ウソ」ではなく「道に外れた」やり口でもないと思います。

ただ、あまりに「表向き」と「内向き」でやっていることとやりたいことのズレが大きくなると仕事の張り合いはなくなりますし、情熱を込められなくなります。ウィニコットによればこれが「分裂」なのです。

仕事が「面倒くさい」とき、私たちは多くの場合「不安」を意識しています。「エスの暴走」のせいで人生がややこしくなるのはたしかに不安なものです。でも「ほんとうにやりたいこと」をゴミ箱に入れては寝かしつけてばかりいるなら、表向きの安全なタスクを実行するのが「気乗りしない」し「めんどう」なのも当然です。

▼編集後記:



私のある日のタスクシュート(TaskChute Cloud)の画面を公開しつつ、朝起きてから夜寝るまでの間の全タスクをどのように実行しているかを紹介している動画です。
 
サンプル動画もありますので、ぜひ覗いてみてください!
 
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