米国マサチューセッツ工科大学のエドワード・エーデルソン教授により発表された、すばらしい錯視図形です。タイルAとタイルBを比べてください。Aはチェッカーボードの黒いタイル、Bは白いタイルに見えます。つまり、AとBの明るさはあきらかに違って見えるのです。
しかし、驚いたことに、AとBはまったく同じ明るさです。AもBもマウスでドラッグして、好きな場所に配置することができます。本当にAとBが同じ明るさなのかどうか、確認してください。
確認は引用元のページからできますので、気になるという方は確認してみてください。
これが、無意識の力です。
無意識の力というのはあやしげに思えるかもしれませんが、自意識による調節を受け付けず、頑固に整然と働きつづける力です。AとBが同じ明るさだと「知って」も、同じ明るさに見えるようにはならないのです。
無意識の力というのはこうしたものです。この無意識の力を、時間管理のために、タスクシュートで活用するのです。
やるべきことのみをどんどん進められる事態
TaskChuteの生みの親である大橋さんがときどき「人は、時間がないということが分かってない」と言います。
「意識ではわかっていても、無意識ではわかっていない」ということです。
朝起きて何となく、メールをチェックします。それから、ゆっくりとコーヒーでも淹れて、Kindleで小説を読んで、着替えをしながら、お金を下ろしにいくかどうかを検討したりしている人があるとします。
その時いきなり不安が襲います。
「今日は、取材の打ち合わせがあったのでは?!」
大急ぎでGoogleカレンダーをチェックしてみるとたしかにそうです。
「まさか!しまった!」
というわけで、コーヒーはキャンセル。Kindleもキャンセル。言うまでもなくATMにいっている場合ではありません。
これが「無意識でもわかる」ということです。
メールチェックやら、読書やら、コーヒーやら、その時にやっていてはいけないことを、絶対にやっていてはダメだと、肌で感じ取ることが、このときにはできます。
なんの躊躇もなく、自動的に、ビシビシと「要らないタスク」を捨て去ることができるわけです。
取材の打ち合わせがあったということについては、確認しようとしまいと、もともとあったのです。
自覚するべきは、それも無意識の力を借りる必要があるほどに自覚するべきは、今すぐ取材の打ち合わせに向かえば間に合うが、今すぐやらないと間に合わなくなるという事実です。
こうなれば人は真剣になります。
こうなればことさら「やる気を出そう」なんて考える必要もなくなります。
こうなれば「集中しよう」などと思う必要もありません。
「優先順位をつけよう」などと考える必要もありません。優先順位を検討するまでもなく、コーヒーを飲みたいとは思わなくなっているからです。
安心感と焦燥感
以上からわかるのは、真剣に集中するのに必要なのは、安心感と焦燥感だということです。
今すぐやれば間に合うが、今すぐやらないと間に合わない。この心理が無意識と自意識に共有された時、人はすんなりととるべき行動をとれるわけです。
タスクシュートはこのようにして、私達に仕事をさせるという力をもたらすのです。
効果があるのは、何らかの意味で「今すぐやるべきこと」を私達が抱えているからです。大橋さんが「時間がないのがわかっていない」という言葉で意味しているのは「今すぐやらないと間に合わなくなることのいくつかを忘れている」と指摘しているのです。
「もうどうやっても間に合わない!」となったら当然ダメです。それではやる気になるのではなくてパニックに陥るだけです。その前に事態を正しく知ることの価値はとても大きい。
いっぽうで、今すぐやらなければならないほどのことは、なにひとつ抱えていないというのなら、タスクシュートを使って得られるものとして、本当の安心感だけです。そういう状況の人は率直にうらやましいと申し上げます。