「スロット」というのはシンプルな発想で、たとえば毎日朝の7時から8時までの1時間を「原稿執筆タイム」としてブロックし、それを「執筆スロット」と名づける。
「執筆スロット」で何をするかは、プロジェクトの進行チェックリストを見て、1時間を使って順次進めていく、というやり方です。
スロットで仕事が進まない
別にこれで問題なさそうですが、非常に単純な問題がありました。スロットの時間が来ても、執筆に関する仕事をやりたくない。それどころか、「進行チェックリストを見に行きたくもない」のです。
見に行くといったところでEvernoteの特定のノートを引っ張り出せばいいだけです。TaskChuteを使えば、ノートが勝手に呼び出される仕組みにもできます。そこまでしてもやりたくない。いったいなんなんだろう。
やっているうちにわかってきたのですが、要するにやっぱり「できることならラクをしたい」のが人間なのです。「スロット」という「時間枠だけがある」状態で、何をするべきか・何をして良いかが書かれていないと、これをなるべく都合良く解釈しようとするのです。
たとえば「スロットが1時間もあるのか。じゃあ今日は「企画案について5分だけ考えて」残りの55分は遊ぼう」という、とんでもないことになるのです。
もちろん毎度毎度こんなにひどいことにはなりませんが、疲れていたり、ストレスがたまっていたり、気持ちが落ち込んでいたり、何かがうまくいっていないと、こういうふうになりがちです。そして多くの日は、疲れているか、ストレスがたまっているか、気持ちが落ち込んでいるか、何かがうまくいっていないものです。
フェーズごとのチェックリストをダブらせる
スロットにはもうひとつ問題があります。もともとこれは、次のような進行表をイメージして出てきている発想です。
▼書籍企画
□企画ミーティング
□企画案作成
□企画案提出
□第1章執筆
□第2章執筆
□第3章執筆
□第4章執筆
□原稿修正
□初校
□再校
□序文を書く
□プロフィール送信
もちろんもっと細かいものですが、このうちのいくつかは10分もあれば終わります。しかしこのうちのいくつかは2週間はかかります。すなわち「粒度の問題」が解決しきれません。
しかし粒度をそろえるというのは簡単な話ではないし、仮にできたとしても「今日はそれ、やりたくない問題」を防ぎきれないのです。「そもそも見に行きたくない問題」に至っては、どんなにキチッとした行程表を作っておいても対応したことにすらなりません。
私にとって効果が上がった対策は、やっぱりタスクリストを目にした瞬間、やらなければならない中身まで、きちんと書いてあることです。つまり「スロット」などと書く代わりに
□企画案提出
というタスクがリストに入っていることが、どうしても必要なのです。
ただし「スロット」には便利な面もあります。というのも
□企画案作成
□企画案提出
この2つを別々の日に分けてやる余裕がないことも多いのです。「スロット」として与えられている時間の中で、この両方をやってしまうという方が、管理する上では便利ですし、合理的に思えます。
そこで私は、プロジェクトをいくつかのフェーズに分けて、そのフェーズごとのチェックリストをタスクに直接なるべく名称として反映させつつ、連日取り組んでみるという方式を今は採用しています。具体的にはこうなります。
▼書籍企画
□企画を送るフェーズ(繰り返す)
□企画ミーティング
□企画案作成
□企画案提出
□原稿作成フェーズ=第1章執筆(繰り返す)
□原稿作成フェーズ=第2章執筆(繰り返す)
□原稿作成フェーズ=第3章執筆(繰り返す)
□原稿作成フェーズ=第4章執筆(繰り返す)
□原稿作成フェーズ=第4章+原稿修正(繰り返す)
□ゲラフェーズ=初校(繰り返す)
□ゲラフェーズ=再校(繰り返す)
□最終フェーズ(繰り返す)
□序文を書く
□プロフィール送信
この「フェーズとその中身」を直接リストに書き込んでいき、そこにぶら下がっているチェックリストを試行回数だけ、繰り返すのです。そして先のフェーズで完了しきれなかったチェック項目は、後の項目に送ります。
書いていると何か整然としているようでいて、これはなかなかダメなやり方ですが、現実に私がやっているのはまさにこうした進め方なのです。
できる人は感情の整理がうまい!: ラクに成果が出るビジネス心理学 (知的生きかた文庫) | |
佐々木 正悟
三笠書房 2014-02-22 |
新著案内です。
まだ発売まで少し日がありますが、初めて三笠書房さんの「知的生きかた文庫」から出させていただきます。
中経文庫さんの「すぐやる」シリーズ側の、パッと読める系です。少なくとも「青本」みたいな負担を読者さんに求めてる本ではないです(笑)。
「すぐやる」シリーズと比較すると、「やっているけど苦しい」方向けです。「すぐやる」は先送りがテーマでしたので、どちらかというと「やらなきゃいけないけどやれないのが問題」という人向けでした。
「どうして自分はこんなに大変なんだろう・・・」という人にぜひお読みいただきたいと思います。