1.キーワードで考える
キーワード(言葉のカギ)を書きながら考えると、考えるスピードがあがります。
キーワードとは、頭にあるイメージの引き出しのカギを開くための言葉(ワード)のカギ(キー)です。
たとえば、少子高齢化、異常気象などの言葉を聞くと、イメージがわいてきます。キーワードには、大量の情報やイメージを引き出す力があります。
長い文章で考えるよりは箇条書き、箇条書きで考えるよりはキーワードで考えた方が、思考のスピードがあがります。キーワードをブレーンストーミング(自由発想)すると、大量の情報をコンパクトに集めることができます。
2.書きながら考える
キーワードを書きに書きながら考えると、大量の情報をコンパクトに記録していくことができます。メモ用紙は、罫線が入っていないコピー用紙が最適です。
書きながら考えることに慣れていない人は、A3サイズのコピー用紙がおすすめです。大きい紙の方が、書き損じを気にしないで書けます。書き損じをした場合、消しゴムではなく、二重線なので消せばいいのです。大きい紙の方が、書き損じしても空きスペースが確保できます。
「考える-書く-確認する」のサイクルが回ると、考えたことを蓄積できます。
書くことで、安心して次の新しい考えに専念できるので、結果的に考えるスピードがあがるのです。書くことで考えた軌跡が残ります。考えている瞬間自体は部分的で断片的です。書き残すことで、考えようとしている全体像が見えてくるのです。
いうまでもありませんが、キーワードを書きながら考える前には、目的の確認が第一です。
目的を明確にするためのもっとも簡単な方法は、「テーマ名」を左上に記入してから、内容を考えはじめることです。たとえば、「効率的な仕事の方法には何があるか」というテーマ名を記入してから、内容を書きながらキーワードで考えるのです。「To Doリスト」「1日4分割法」などを、キーワードとして列挙すればいいでしょう。
3.要するにポイントは何か、コンセプト(基本方針)を明確にする
複雑なことでも、単純明快に考え、伝えることが効果的です。
複雑なことは自分の頭が混乱します。また、より多くの人に理解してもらうことが困難です。複雑なものこそ、単純明快に考えことが大切なのです
単純明快に考える上では「要するにポイントは何か?」を問いかけるという方法があります。ポイントを簡単な言葉で表現する習慣を身につけるのです。ポイントを簡単な言葉で表現することを、コンセプトともいいます。
コンセプトとは問題解決のためのポイントを単純明快に表したもので、言い換えれば基本方針です。コンセプトは日本語にピッタリ来る単語がないので、イメージがわきにくい人も多いようです。
コンセプトが難しいと感じる人は、「要するにポイントは何か?」、または「基本方針は何か?」を問いかけてください。「要するに」と単純明快に考えることで、解決策を単純明快、シンプルにする効果があります。
4.ブレーンストーミングで頭をフル回転させる
自由発想する手法にブレーンストーミングがあります。
ブレーンストーミングはアイデア出しの手法です。ブレーンストーミングのコツは自由発想です。これを言ったら怒られるとか、はずかしいと思っていたのでは、せっかく思いついたアイデアも忘れてしまいます。自由発想しているうちに、潜在的に眠っていたアイデアがひらめいてくるものです。
ブレーンストーミングのルールは5つあります。いずれも、自由発想するために役立つルールです。
- 既成概念や常識を捨てる
- 何でもいいからたくさんだす
- 3セズ(批判セズ、議論セズ、くどくど説明セズ)
- 人のアイデアをヒントに発想する
- アイデアは箇条書きにして記録するのです。
ブレーンストーミングを料理にたとえると食材集めです。食材がなければ料理は作れません。また、大根1本で料理をしろと言われても困ってしまいます。料理には食材が必要です。優れた解決策を見つけるためにも、ブレーンストーミングでアイデアを集めるのです。
5.何かを決定する前に代替案を複数考えよう
たまたま思いついたアイデアに固執して、周囲が見えなくなる人が意外に多いのではないでしょうか。あるいは、思いつきで提案された経営課題を、やるやらない議論をすることが好きな人が多いようです。
たまたま考えた1つの案に固執するまえに、ちょっと立ち止まって、それ以外の可能性も考えておくことが、失敗しないための決断に重要です。
たとえば、新規事業を考えるのであれば、1案に固執しないで、もっと可能性を広げて、広範囲で探索してみてはいかがでしょうか。
思いつきのアイデアを、やる・やらないの議論をしていても、偏った議論にしかなりません。「他にも解決策のアイデアはないか、代替案(オプション)をいろいろ出してから絞り込む」ことが効果的です。代替案とは、「解決策の候補」です。
代替案を考えることを、オプション思考といいます。
オプション思考で視野を広げて、さまざまな代替案を作成してから、最も魅力的な解決策を決定することが効果的です。
オプション思考を適用する場面として、画期的な方向転換をしたいとき、現状打破をしたいとき、いいアイデアを出したいときなどがあります。また、大きな意思決定をする場合には、オプション思考が不可欠です。
おわりに
今回は、考えるスピードをあげるというテーマでご紹介しました。
キーワードを書きながら考える、コンセプトで単純明快に考える、ブレーンストーミングでアイデアを広げる、代替案を複数考えて可能性を広げることを紹介しました。「自分の頭で考える」という決意は、スピード思考に不可欠です。
- 1.『仕事がデキる人になるための「始めの一分間」』
時間は1日24時間と誰に対しても平等ですが、同じ時間でも人よりパフォーマンスを上げる、またはムダな時間をなくすことで自分のやりたかったことを実行するなビジネスの場に限らず、誰かとあったときの第一印象というのは非常に重要なものです。第一印象で失敗をしてしまうと、そのイメージを払拭するのにとても時間がかかってしまいます。
その逆に、第一印象が良いとその後もとんとん拍子に事が進んでいきます。
そして、これは対人関係に限られたものではありません。何かを考え始めるとき、仕事を始めるとき、朝起きて一日を始めるとき、これらのときも最初の一歩次第でその後が変わってきてしまうのです。
本書では何かを始めるときに調子良く物事を進めるためのポイントを
- 「なぜうまくいかないのか」
- 「うまくいく人の習慣」
- 「法則①」
- 「法則②」
- 「活用例」
の5つに分けて詳しく説明をしていきます。
いつもエンジンがかかるまで時間がかかってしまう、そう感じている人に読んでいただきたい一冊です。
PDF: 339ページ
- 2.『世界一わかりやすいポーター博士の「競争戦略」体験授業』
ストラテジー(戦略)といえばM.E.ポーター博士を置いては語れませんが、ポーター博士をご存知ではない方も多いかもしれません。しかし、好業績を上げている経営者や、経営コンサルタントの間では、ポーター博士の『競争の戦略』は座右の書として重宝されてきました。
本書では業界内外にある5つの競争要因を中心に「競争戦略」とはどのようなものかを、大学院教授と企業のマーケティング担当をしている社会人大学院生の二人の会話を通して説明していきます。
- 学生:「いま、家電メーカーのマーケティング部門にいます。しかし、新製品を出してもヒットしないし。おまけに価格が下がって利益が出ません。どうしていいか、悩んでいます」
- 教授:「それなら、ポーター博士の『競争の戦略』を理解することが近道だよ。これから何回かに分けて話してあげよう」
- 学生:「でも先生、そもそも、なぜ戦略が必要なんですか?」
- 教授:「企業は競争にさらされているからだよ。そもそも競争とは何かから説明したほうがよさそうさだね」
(本書序章より)
PDF: 264ページ
▼西村克己:
岡山市生まれ、大学教授、経営コンサルタント。富士フイルム、日本総合研究所を経て芝浦工業大学大学院「工学マネジメント研究科」教授に就任。専門分野は、経営戦略、戦略的思考、論理思考、図解思考、タイムマネジメント、プロジェクトマネジメント。現在までに96冊の著書がある(累計180万部)。