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良い商品・サービスを作るにはどうすればいいか? 「サイゼリヤ」と「テツandトモ」の共通点



大橋悦夫前回に引き続き、『サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』でハッとさせられたことをご紹介します。

» 未然に防ぐことができるトラブルと不慮のトラブルとを明確に分けてEvernoteに記録を残しておく

『サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』は、ファミリーレストランチェーン「サイゼリヤ」の創業者・正垣泰彦氏による経営論です。

飲食ビジネスに取り組んでいる(志している)人にはもちろん、それ以外のビジネスに取り組んでいる(志している)人にもハッとさせられる指摘にあふれています。

今回のテーマは「良い商品・サービスを作るにはどうすればいいか?」です。

良い商品・サービスを作るにはどうすればいいか?

飲食店の場合、良い商品というのは「おいしい料理」ということになるでしょう。本書ではこの「おいしい料理」というものを極めてシンプルに定義しています。

私は「おいしい料理」とは「売れる料理」だと思っている。

サイゼリヤのヒットメニュー「ミラノ風ドリア」では、これまでに1000回以上「アロマ(食前の香り)」「テイスト(味)」「フレーバー(食後の香り)」の改良を続けてきた。お客様にとっては食べても分からないくらいの微調整の繰り返しだが、その影響で注文数が増えたり、減ったりする。

なお、私の予想が外れることも決して珍しいことではない(笑)。

だが、それで構わない。おいしいかどうかはお客様が決めるのであって、私が決めることではないのだから

つまり、良い商品は「お客さまが決める」、すなわち売れている商品が良い商品、ということになります。本書のタイトルにもなっている通りです。

お客さまに直接教えてもらうわけではない

では、「どんな料理が食べたいですか?」とお客さまに尋ねればいいか? この問いに対する答えが最近読んだ『ゲームにすればうまくいく』という本に載っていました。

数々の逸話があるセブンイレブンですが、そのなかでも有名なのが「真冬の冷やし中華」です。普通、冷やし中華といえば夏の定番。その冷やし中華をセブンイレブンが真冬の二月に並べはじめたところ、売れ出したというのです。

おそらく、顧客に「真冬に冷やし中華が食べたいですか?」とアンケートをとっても、「食べたい」という答えは少ないでしょう。店舗側も「冷やし中華は夏に売れる」という経験則から、なかなか真冬に冷やし中華を売ろうとは思わないはずです。

本書はいわゆる「ゲーミフィケーション」をテーマにした本ですが、上記のようなマーケティングや経営論にも踏み込んでいます。こうした課題をゲーム化を駆使することで解決していく、その原理とプロセスが非常に巧みで、「なるほど、そういう風に現実を捉えるようにすればいいのか!」と随所で感心させられます。

今回の課題である「良い商品・サービスを作るにはどうすればいいか?」については、端的に言えばPOSデータを集めて、これを分析することが解決の第一歩になります。

セブンイレブンのPOSデータには以下のような項目が含まれるそうです。

  • 販売商品
  • 販売金額
  • 販売日時
  • 担当者
  • 顧客の属性(子供・未成年・若者・壮年・熟年×男・女=10パターン)

お客さまに直接尋ねるのではなく、お客さまの購買行動を記録することで、その行動の背景にある動機や心理を探り、それをもとにやり方を変えたり、新しい取り組みを始めたりと、次にすべきことを導き出すということです。

このようにデータ(記録)をもとに行動をどんどん変えていくという手法は、「ソーシャルゲームにおけるチューニングに似ている」と指摘しています。

これらのデータを基にしたチューニングのプロセスは、ソーシャルゲームのチューニングと非常によく似ています。

セブンイレブンの場合は店頭の品揃えがチューニングの対象になります。ソーシャルゲームの場合は「プレイヤーがここでゲームを止めてしまったのは、この敵が強かったからだろうか、もう少し弱くしたらプレイを続けてくれただろうか」など、チューニングの対象はさまざまに存在します。

いずれも、効果の高いチューニングの対象に関する仮説を立てて、実際にチューニングをし、検証していきます。

お客さまに合わせてカスタマイズする

Evernoteを整理していたら、少し前に読んだ記事クリップが見つかりました。

この記事ではお笑い芸人のテツandトモの2人が、地方営業の際に工夫していることが紹介されているのですが、この工夫がまさにチューニングと言えます。

» テツandトモの“地方営業の戦略”がスゴすぎる「毎日新ネタをやっているようなもの」 | 日刊SPA!

トモ:ステージを披露する企業さんの中で知っていること、地方の自治体でしたらその場所の名産をネタに入れたりします。

いまイチオシの商品だったり、社員のみなさんがモットーとしていることなどを事前に楽屋でヒアリングするんです。毎年社員全員で社員旅行に出かける企業さんでしたら、社員旅行のエピソードなんかを入れるわけですね。そうすると「なんで知ってんの!?」と盛り上がるわけです。

つまり、事前にお客さまから“素材”を仕入れるわけです。仕入れた“素材”を自分たちなりの味付けで“調理”をして、出す。

ただ、仕入れには20~30分ほどしか時間をかけられないという制約があります。

» テツandトモの“地方営業の戦略”がスゴすぎる「毎日新ネタをやっているようなもの」 | 日刊SPA!

――20分ほどの時間で、今日のお客さんならではの「あるある」を引き出せるものなのでしょうか?

テツ:それが難しいんですよ(笑)。ただ、パターンはある程度決まっています。たとえば「会社の前のバス停の名前が最近変わったのなんでだろう~」とか、「会社の最寄り駅はみんな利用するのに、急行止まらないのはなんでだろう~」とか、「業績上がってるのにボーナスもらえないのなんでだろう」とか(笑)。

ふだん皆さんが思われていることを、ヒアリングを通してうまくネタにはめて作っていくわけです。

テツandトモの2人は、こうしたチューニングを欠かさないからこそ、盛り上がる、すなわち「良い商品・サービス」を実現できているのでしょう。

まとめ

チューニングを行うためには、当たり前ですがチューニングの対象となる“関数”が要ります。

関数とは引数を入れ替えることで結果が変わる仕組みと言えます。

たとえば、サイゼリヤでは5つの要素で料理や食材を点数化するための評価手法を持っているそうです。

ちなみに私は3~4店を経営していた頃に「この料理はおいしい」とか、「コクがあってうまい」とか、そういう主観的・抽象的な「おいしさ」の評価に疑問を抱き、何とか点数化できないものか、いろいろと考えたことがある。

その結果生まれたのが、「ルック(見た目)」「アロマ(食前の香り)」「テイスト(味)」「フレーバー(食後の香り)」「プライス(価格)」という5つの要素に分けて、料理や食材を点数化するという評価手法だ。

おいしさの評価に「プライス」が入っているのは、料理にお値打ち感がなければ、お客はその料理をおいしいとは思わないはずだからだ。

これらの5つはまさに「おいしさ」という関数における引数と言えるでしょう。

また、テツandトモが持っているのは「×××なのは、なんでだろう~」という関数であり、×××にはお客さまからヒアリングを通して仕入れたネタを引数としてはめ込むことになります。

従って、自分が良い商品・サービスを作るためには、まず自分はどんな“関数”を持っているのかを明確にすることがその第一歩になるでしょう。

関数が明確にない状態では、引数となる情報をいくら集めてもそれらを活かしようがないからです。