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TaskChuteとは「渋滞情報を事前に知らせる装置」のようなもの

By: Stephen DurhamCC BY 2.0


佐々木正悟 このシゴタノ!の管理人である大橋悦夫さんの開発したTaskChuteは、見た目が「水も漏らさぬ時間管理ツール」のように見えるため、どうしてもとっつきにくい。

かく言う私も、今でこそすっかりタスクシュートマニアですが、大橋さんと知り合って少なくとも1年以上は「あれを使っている大橋さんという人は、多少頭がおかしいのに違いない」と思っていました。

しかしいまでは、TaskChuteがなくなると仕事ができなくなりそうです。習慣になってしまったということもあるとは思いますが、とくに私のようにほぼ完全に一人きりで、家で仕事を進めている人間としては、「仕事にまつわる不安と決断」という問題と無縁でいられないからです。

決心しないと仕事には取り組めない

「仕事とは小さな決断の連続」というのは本当にそうだと思います。実はこれは仕事に限らず、ごく些細なこと、休憩を取る、歯を磨くといったことですら、ほとんど気づかないにせよやはり「決断」を経ての行動なのです。

たとえば歯を磨くにしても、今すぐか30秒後かということを考えて決めています。決してそんなに厳密ではないにせよ、完全に無意識ではできないことです。もちろん今すぐでも30秒後でも1分後でも2分後でも3分後でもいいのです。トイレに行ってからでも娘とちょっと遊んでからでも妻とちょっと会話してからでもニュースを見てからでも、そのすべての前でも、その途中でも、いつでもいける。

しかし、決めずにやることはできません(今度何か行動を起こす際、そのことを決めずにやってみて下さい)。行くときは「今行く」と決めているはずです。

これは些細なことです。どうでもいいことです。しかしどうでもよくても完全に自動的にはやれないのです。一瞬にしても何かを考えます。何かをやってからやるか、それともやる前にやるか。スカイプの後にするか前にするか。前の方が気持ちはよいだろうが時間があまりない。後だとどのくらい後になるかははっきりしない。うんぬんかんぬん。

仕事だとこの悩みが非常に複雑になります。長く悩むとそれだけ時間もかかります。その悩みの大半をTaskChuteが肩代わりしてくれるのです。

時に「TaskChuteが精密すぎてみていて息がつまりそう」という話になるのですが、そんなに精密ではないし、精密だと息がつまるというのもおかしなものです。TaskChuteとは「渋滞情報を事前に知らせる装置」のようなものです。

手慣れたドライバーなら、たとえば「竹橋を先頭に混んでいるだろう」くらいのことは渋滞にはまる前から予測できます。しかし「竹橋を先頭に約5キロ。抜けるのに15分かかります」という方がより「精密」であり、判断の助けになります。なにより「竹橋のことなど何も知らない」初心ドライバーにも全く同じ予測ができます。

TaskChuteが「決断を助ける」というのはそういう意味です。使い込むほど「先の予測をする精度」も高まるため、「このまま渋滞を承知で突っこむか、それとも回避するか、あるいは一休みするか」といった判断を助けてくれるのです。その間にも車は走っているように、考えている間にも時間は進みます(慣れていない人はこういうタイミングでとても危険な運転をします)。そういった意味で渋滞情報とTaskChuteの情報はよく似ています。

制約条件が決まらないと安心して没頭できない

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上の図がTaskChuteの一部です。図の意味は8/31の分のシゴタノを書いているところで、日付は8/26。時刻は10:55です。

この日はセミナーがあったため、できれば家を11:30に出たいのですが、14分ほどオーバーすることが分かります。この数字は厳密ではありません。しかし何かを削らないと余裕がまったくないことは明らかであり、他の行動を取っているヒマはまったくないことが分かります。この情報があるから決断できるのです。

とりあえず、今この段階で何かのレビューをしていたり、5年後の計画を立てている場合ではありません。重要度がどれほど高くても、それらはここに入らないでしょう。

決断とは、妥当な選択肢の数が少なくなればなるほど容易にやれます。TaskChuteが管理しているのは実は「選択と決断」であり、行動は可能な選択肢の中から制約条件を加味して選ばれるものです。加味しきれないかもしれないとか、可能か不可能かの判断ができないとき、不安がつのります。

ノマドワーカーは「自由」です。自由だと選択肢の数は通常増えていきます。その選択肢の妥当性を全部検討し、おもむろに最善の行動を選び取るのは容易ではありません。〆切や習慣など、自由にならない時間帯を埋めていくことで、そこを容易にしていく必要があるのです。

広々とした、なにもない部屋を好き放題に使えた方がくつろげるでしょうか? たまに旅行などをするならそうかもしれませんが、日常生活ではむしろ不便ではないかと思います。キッチンは、広々としていてなにもないという状態では使い物になりません。むしろ、必要なものは手近なところに整理されていて、ほどよい広さしかない方が使い勝手がいいはずです。

時間も全く同じです。するべきことがまったくない膨大な時間がただあっても、何をどうすれば納得できるかが想像もつきません。部屋に家具をある程度並べてからの方が使うモチベーションが高まるように、時間もある程度使い方をシミュレートしてからの方が、使い方がはっきりしてきます。自由に仕事をする人にとって、このことはより重要になります。