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心の傷を癒す。または予防する4つの方法

「心が傷つく」という心理現象は、以下の4つの心的機能のせいで発生する、と考えられます。

1.サンクコストの過大視
2.損失回避性
3.後悔回避性
4.ピーク・エンドの法則

参考図書『経済は感情で動く―― はじめての行動経済学

経済は感情で動く―― はじめての行動経済学 経済は感情で動く―― はじめての行動経済学
マッテオ モッテルリーニ 泉 典子


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「傷ついた気持ちを和らげる」上で、どうして「経済心理学」めいた本が役に立つのか、不思議に思われる方も多いでしょう。理由は簡単で、つい最近の研究が示唆しているように、褒められた時と報酬を得た時に、脳が同じように反応するなら、他人にけなされたり凹まされた時とお金を失った時に、脳は同じように反応するはずだからです。

もちろん、「凹むこと」=「大金を落とすこと」とまでは言い切れないかもしれませんが、脳と心がどんなことを重視しているかについて、実証的によく研究してきたのが「経済心理学」です。そんなに重視しているものを失った時、心が傷つくのは自然のことです。

私たちの心脳が「失うまい!」としているのは、どんな状況での、どんな物事なのか。それが分かれば、なぜ自分が「傷ついた」のか、どんなことに気をつければ「傷つかなくなる」か、などといったことが見えてくるでしょう。

1.サンクコストの過大視

「サンクコストの過大視」とは、「これだけかけたんだから、元は取らなくちゃ!」と思う心の働きです。ギャンブルで人がはまるのも、青函トンネルに新幹線を通したくなるのも、基本的にはこの心の働きによるものです。

これはもちろん自然な心情と言えるでしょう。たくさんの投資がフイになってしまって、心躍る人の心には問題があります。愛情も資金もたっぷり投資した恋人にふられれば、心が傷ついても無理はありません。

しかし経済学の教えるところでは、

サンクコストは無視せよ

です。つまり、投資してうまくいかなかった分のことは、忘れてしまうのが最善なのです。もちろん、それは簡単ではありませんが、簡単でないことをすすめているから「格言」なのですし、自然の心情に任せておいては、なかなか「立ち直る」のが困難になります。そうした「凹みに向かう心理機能」をチェックするだけでも効果ありです。

2.損失回避性

持っているものは手放したがらず、持っているお金は後生大事にしたがる。脳と心は、利益から得られる喜びより、損失から感じる苦痛の方を、はるかに重視します。100万円が110万になった喜びより、100万円が90万円に減ってしまった悲しみの方が、より深刻な事態に思えるのです。

得ることが必ずしも「最善だ」とは言えないのに、失うことはいつだって「最悪だ」ということになります。心とは、そうした意味で、脳も心も傷つきやすいものとも言えます。いろんなものを得たり友達が増えても、それほど感激しないのに、損失が発生する度に強く反応するからです。

利益にフォーカスしたり、幸運のことを常に記録しておくといった「楽観主義的な自己啓発法」は、こうした心理的なバイアスに、一定の歯止めをかける上で有効です。「同僚の何気ないひとことに傷つく」ということはあって不思議はありませんが、「何気ないひとことでいい気持ちになった」ことも、思い出してみればいくつかあるのではないでしょうか。

3.後悔回避性

人間は短期的な失敗は避けたいと念じる一方、長期的にはやらないでいたことを後悔する、という法則。傷つくことを恐れて行動しないでいると、遠い将来、行動しなかったという思い出によって傷つくことになるという、二重に面倒な状況です。

この法則によれば、とにかく行動しておけば、人間は遠い将来には満足するのです。残るは、短期的な失敗による後悔の問題だけです。ですから、短期的な最悪の失敗を仮定し、それに耐えられるなら、後のことはあまり考えず行動してみるべきという指針が得られます。

4.ピーク・エンドの法則

終わりよければ、すべてよし。人間の心は、実際そのように働くようです。経験の良し悪しを測る心理的基準は、ピーク時と終了時の快苦の度合いによるということです。端的にいえば、ひとつの経験は、嬉しさ(悲しさ)の絶頂と、経験の最終段階における嬉しさ(悲しさ)だけで、測られるということです。

時間的な長さと、途中のプロセスを、脳はあまりカウントしないのです。だからアルバイトなどでも、最終段階でいやな思いをすると、経験全体が「イヤなもの」になってしまいます。

ですから、嬉しかったことや楽しかったことなど、ポジティブな思い出に偏って、ブログや日記にマメに付けておくというのは、よい方法です。そうしないとそれらはあっさりと忘れ去られ、ピーク時と終了時の感覚だけで経験が色づけされてしまうからです。

まとめ

「経済心理学」による「心の傷を癒し、予防する4つの方法」をここでまとめておきます。

1.サンクコストを無視する
2.失う悲しみを抑え、得る喜びに注目する
3.失敗した直後の後悔に耐えられるなら、行動する
4.プロセスにおける喜びの体験を記録する

つまりこれは、心と脳が失敗を過大評価し、成功にあまり着目しない自然の機能を持っているが、それに意識的に抵抗しよう、という考え方なのです。