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カフェだと作業がなぜ進むのだろうか?

倉下忠憲
先日の五藤隆介さんの記事「カフェーではかどるオサレノマドワーカーになる」を読みました。私もMacBook Airを入手して以降、かなり本格的なノマドワーカーになっています。

朝から日中までは家で作業して、夕方から夜までは落ち着いたカフェで作業を進めるというような「一日の定型」が出来上がりつつあります。時にはカフェからカフェへのはしごをすることもあります。

五藤さんが書かれているように、たしかにカフェだと不思議に作業がはかどります。これって一体なぜなんでしょうか。

制限時間

一つ考えられるのは、「制限時間」があることでしょう。カフェであれば閉店時間、あるいはノートパソコンや無線LANルーターのバッテリーの限界時間というのもあります。これらの「制限時間」は一つの「制約」になります。制約というのはある種のルールです。そして、ルールができるとゲーム感覚が生まれます。

「あと2時間しかない」という感覚から、「2時間でどこまでできるかやってみよう」という発想が生まれてくるというわけです。言い換えれば、制約の中から自主性が立ち上がってくる、となります。この自主性は集中力を生み出す上で大切な要素です。

また、「終わりが見えている」ことで時間に対する意識が鋭くなるということもあります。私も五藤さんも、普通ならば家で「いくらでも」仕事ができてしまいます。すると、「1時間ぐらいはまあいいか」と甘い推測に流されがちです。今が夜の20時だとして、「今日はまだあと4時間ある」とか「2時まで頑張れば6時間ある」と、ずるずる「作業予定時間」が変更されていき、結局実際に作業は手つかず、という悲惨な事態が起きかねません。

こういう時間感覚の麻痺も、限定環境ならば発生しにくいというわけです。

自分の「作業場所」作り

人間には人格というものがありますが、それは固定的なものではありません。場所や文脈に応じて変化してしまうものです。この人格というのは気分の雰囲気(モード)というものも含まれています。職場でスーツを着ているときと、家でパジャマでいるときの気分はきっと違うでしょう。例えば、集中していたり、リラックスしていたりと、その状況にぴったりあった気分が出てきているはずです。

逆に考えれば、ある種のモードに入りたければ、同じような場所や文脈でやった方が良い、となります。仕事に使っている手帳を開くと頭が仕事モードに切り替わるということはないでしょうか。ということは、仕事モードにきりかえたければ手帳を開けば良い、ということです。この形を作ることができれば、気分の切り替えを意識的に作れるようになります。

家で仕事を進める人の場合、さまざまな役割(仕事・家庭・個人)が家の中に存在しています。こういう時、「書斎」などの作業するためだけの場所を持たないと、モードをうまく作るのは難しいでしょう。私の場合は、家がそれほど広くないので(というか狭い)、日中妻が家事をやったり、テレビやDVDを見だすと、モードが乱れてきます。集中力が無くなるというよりも、集中しようという気持ちが湧いて来にくい感覚です。

こういう場合に、カフェが「書斎」というか「作業場所」になります。ここに来れば作業をする、ということを繰り返していると、徐々にそこにいけば作業する気持ちが湧きやすくなる、という現象が期待できます。

他にすることもなく、周りの目もあるので、必然的に作業に追いやられる環境がそれを加速させます。逆に考えると、作業しにカフェに行ったのに、実際に作業をあまりしないでサボってしまうとモード的にはあまり良くない結果を引き起こすことになるでしょう。

わざわざ感

五藤さんも先ほどのエントリー内で書かれていますが、「わざわざ感」は結構重要です。

もう一つ大事なのは、カフェーにわざわざ行った。わざわざお金を払った、という事実を元に、勿体ない根性で元を取ろうと考えさせるという事です。

家で作業できるにも関わらず、移動時間を使い、お金を払ってカフェで作業するわけです。上記に書いたような理由をまったく無視すれば完全に不合理な経済的活動です。だからこそ、その分作業しなきゃな、という気分が湧きやすいのも確かです。こういうのは「認知的不協和」の一種ではないかという気がしないでもありません。

心理的な理由はなんにせよ、「実際に作業が前に進む」というのが大切なことです。お金がかかりすぎるのも問題ですが、作業が手に付かない方が遙かに大きな問題です。わざわざ感の利用というのも重要ではないでしょうか。

さいごに

という感じで、実際にほぼ毎日のようにどこかでノマドワークしている人間の考えを書いてみました。

毎日家で仕事している方や、同じ職場で同じ人と毎日顔を付き合わせていることに嫌気がさしている方は、ノートパソコンあるいはお気に入りのノートでも持ってカフェで作業してみるのも、なかなか楽しい体験です。

ただ、運用を誤るとカフェでないと集中しようとする気分が湧いてこないという事態にもなりかねません。家や職場でも、どこかに「作業場所」を設定して、そこでモードを作れるようにしておくのが良いでしょう。

▼こんな一冊も:

ノマドワーカーについて知りたいなら、この一冊。隙間時間の有効活用以上のメリットがノマドワークには存在しています。

ノマドワークで気をつけるべき点が紹介されています。

▼関連エントリー:

カフェーではかどるオサレノマドワーカーになる 

▼今週の一冊:

現代における勉強の重要性を再確認した一冊です。今の時代どのような勉強が必要なのかと、その勉強法についても触れられています。読みやすい内容とは言えないかもしれませんが、本書で指摘されている多くの点について私は同意することができました。大雑把な印象では、「勉強法」を俯瞰してながめた総集編的な位置づけなのかな、という気がします。

大学生や新社会人の方が目を通されるとよいかもしれません。今後の就職における競争相手が変化していく、なんてまったく想像もしたことがない方ならば、危機感を新たにされることでしょう。すでにそういう意識を持って行動されている方は、目新しい事実はないと思います。


▼編集後記:
倉下忠憲
 アップルの回し者ではありませんが、ノマドワークとMacBook Air(MBA)の相性は最高です。

MBAを持っている人の多くから賛同を得ている意見です。価格とスペックを見ても満足度は高いので、新年度に新しいパソコンを買うことを検討されている方は、ぜひ選択肢に加えてみてください。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。