前回のエントリーでは執筆を進めていく上で活用したA5ノートの使い方を紹介しました。
今回は、そのEvernoteアレンジの紹介です。私は結構、アナログツールで実際にやってみて、それをデジタルに置き換えるにはどうすればいいかという考え方をします。これもそこから生まれたEvernoteの使い方の一つです。
プロジェクトノートの構成要素
前回のエントリーから「プロジェクト・ノート」について簡単にまとめてみると、「散らばっていたアイデアなどを一つの企画の元に集め直し、それ以降は関係するアイデアをばんばん書いていくというノート」ということになります。その企画に関する情報はすべてそこに集約されている状況を作れば、安心感も生まれますし、情報を探し回る必要もなくなります。
そのノートに書かれているのは、
- 基本情報:タイトル案、締め切り、ページ数などの基本情報
- 構成案:全体の構成をまとめたもの
- 各章ページ:各章ごとのアイデア
- 参考文献:参考にした文献
- メモ:その他メモ
といったものです。
ここまで土台となる情報があればEvernoteで実装するのは簡単ですね。
例えば「クラウド時代の知的生産の技術」という企画があったとすれば、その名前のノートブックを作成して、それぞれの要素にあたるノートを作れば完成です。これでクラウドを介してどこでも持ち運びできる「プロジェクト・ノート」が出来上がりました。
しかし、問題があります。
それは「Evernoteでは任意の順番にノートを並び替えるのがとても面倒」、という事です。ノートのタイトルを工夫して(頭に3桁の数字を付けるなど)、名前順で表示させればコントロール自体は可能ですが、手間がかかることは間違いありません。
時系列で順番通りにノートを作成すれば一応任意の順番に並べられますが、後で変更したくなったときはお手上げです。アナログノートならばこのデメリットはある程度仕方がないと割り切れますが、デジタルのノートとしては操作性が悪いと言わざる得ないでしょう。
そこで、登場するのがNozbeです。
Nozbe
Evernoteと連携してくれる Nozbe はGTDをベースに設計されたクラウドのタスク管理ツールです。Nozbeについての詳細は割愛しますが、Evernoteのノートを表示させることができる、という機能を使えば、先ほどの問題はあっさりと解決します。
私の場合は、まず Nozbe でプロジェクト・ノートの構成要素を作成します。
そして作成したものをEvernoteに同期。
これで、EvernoteとNozbeに同じ内容のノートが作成されます。Nozbe側ではノートの表示順はドラッグ&ドロップで簡単に変えられますので、後からの変更も容易です。さらに次にすべき行動もタスクとして管理できますので、一石二鳥です(本来はこれがメインの機能ですが)。
このNozbeで作成されたノートには、EvernoteではNozbeのプロジェクト名がタグとしてつきます。逆にNozbe側で使いたいノートはそのタグを付けておけば表示可能です。
つまり、Evernote側ではプロジェクト名のノートブックを作って、そこに関連するありとあらゆる情報やアイデアを集める。そして、Nozbeで表示させたいノートについては同名のタグを付ける、ということになります。
さらにこのタグを使って、アイデアの入り口を広げることもできます。
» Nozbe – Simply Get Things Done!
Egretlistによるインプット
iPhoneアプリの「Egretlist」はチェクボックス付きのノートだけをEvertenoと同期するという変わったアプリですが、いろいろな使い方が考えられます。
先ほど出てきた「プロジェクト名」のタグ。これの下に第一章、第二章、第三章といった感じで、各章ごとのタグを作成します。そしてそれぞれのタグをEgretlistのプロジェクト(ややこしいですね)として登録します。
これでアイデアの入り口が完成です。思いついたアイデアをばんばん記入できます。このEgretlistを使ったやり方が、その他のEvernote系に送る系のメモアプリと違う点は「章立て」の構造がタグの形で保存されていることです。
例えば散歩中に、「第二章で使えそうなアイデア」がひらめいたら、Egretlistを立ち上げて、第二章のプロジェクトを選択し、どんどん記入していけばOKです。あるいはEgretlistを立ち上げてから、「さて、アイデア出しをしようか」という使い方もできます。
どちらにせよ「第二章」のタグを使えば、後からその章ごとに必要なアイデアをEvernoteで閲覧できます。
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更新: 2010/08/30
さいごに
今回はEvernoteでのプロジェクト・ノートの実装法について紹介しました。もともと様々な情報を集めていれば、「プロジェクト」ノートブックを作る事までは簡単なことです。そこに必要なものを集めていけばそれで完成です。
しかし、表示順の問題や、関連するかもしれない情報にまではアクセスしたくない時もあるでしょう。そういうときはNozbeを使えばOKです。おまけにタスク管理もできます。
また、アナログノートのように、ページをぱっと開いて、第二章部分にアイデアメモを書き付けるという使い方もEvernote単体では厳しいものがあります。そういう時はEgretlistを使う事で擬似的に章立てごとのアイデア管理ができるようになります。
このやり方が「完璧」であるとは考えていません。ただ、すこし工夫をすればアナログノート的な使い方、あるいはそれ以上の使い方もできるというのがEvernoteの面白さです。
情報の一元管理を行いながらも、複数の入り口と出口を設定できるEvernoteは本当にいろいろな使い方ができると思います。次回はもう少しその「Evernoteの使い方」について考えてみたいと思います。
▼参考文献:
本エントリーの「プロジェクト・ノート」のアナログ版が紹介されています。
▼関連エントリー:
▼今週の一冊:
ものすごくストレートなタイトルですが、それでもついつい読みたくなってしまう本。1979年~2010年までの村上春樹さんの未発表の作品などが雑多に集められた一冊です。文章力のトレーニングというといささか大げさですが、年代によってかわる文章のトーンの違いというのが見えてきてなかなか興味深いです。
印象深い一文は山のようにありますが、例えば次のような文章。
でもそれに劣らず素敵だと僕が思うのは、僕らがその音楽の持つ素晴らしさの上に、僕ら自身の心や身体の大事な一部を付託していくことができるという事実である。
音楽はただ音としてなっているわけでもなく、歌詞はただ空白を埋めているわけでもない。人の心を受け止める何かがその中には存在するからこそ、人はそこに強く惹かれていく。
こんな感じなのでしょうか。春樹中毒の方は是非。
一月にはヘイストでもかかっているんじゃないかと疑う今日この頃です。
現在は二冊目の自著が徐々に完成に向かっています。なんというか、執筆活動を始めて思うのは、「本を書くことのむずかしさ」と「本を書き続けていくことのむずかしさ」の二つです。さらに現代では「電子書籍の時代で、紙の本を書くことの意味」についても考えなければいけない気がします。なかなかやっかいですね。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。