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Evernoteの新機能「ノートブック・スタック」を使いこなす

堀 E. 正岳

Evernote の強みの一つは情報のインプットがとても楽な点です。ウェブブラウザからボタンひとつ押すだけ、iPhone から写真を撮影するだけ、ScanSnapで書類をスキャンするだけでどんどんとノートがたまっていきます。

すると多くの場合、Evernote のノートの整理が追いつかなくなってデフォルトのノートブックにノートが大量にたまることになっていきます。私の場合、ざっとみてすべてのノートの半分近くがデフォルトのノートブックにたまっていることが多くあります。

Evernoteの検索機能を使えばこれでも情報を探し出すことは難しくありませんが、特定のテーマに基づいてノートを集約しておきたい場合にはノートブックにまとめておくほうが便利です。

今回は、Evernoteに加えられた新機能、ノートブック・スタックを援用しつつ、デフォルトのノートブックにたまったノートの処理方法をみていきましょう。


ノートブック・スタック機能

Evernote の最新ベータに追加されたノートブック・スタック機能は、ノートブックの階層化ととらえることもできますが、より正確には「テーマが似たノートブックをまとめておく機能」と考えたほうが分かりやすくなります。

例えば「囲碁」「将棋」「チェス」というノートブックが個別にあってそれぞれに詰め問題や定石がまとめられているとします。この場合、これら3つのノートブックを「ボードゲーム」というスタックのもとにまとめておくことができます。

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チェスについて検索したいのならチェスのノートブック中で行うこともできますが、ボードゲーム全般の話題から検索したいなら「ボードゲーム」というスタック上で検索を行うこともできます。つまりこれまで「ノート」「ノートブック」と2段階あった粒度に3番目が加えられたといってもいいでしょう。

これが本当の意味での階層化と違うのは、「ボードゲーム」の階層にノートを加えることができない、つまり、3つのノートブックに共有されているノートを作ることはできないという点です。スタックはあくまで、同一のテーマのノートブックをまとめておくという機能を果たしているのです。

デフォルト・ノートブックからスタックへ

それでは早速、新しく登場したノートブック・スタックに向かってノートを整理していきましょう。

Evernoteでノートを作った際に、整理のための一つのヒントになるのは「ノートがどこで作成されたか」「どのようなファイル形式か」というメタ情報です。たとえばScanSnapで作られたノートは20100806180625といった日付を元にしたPDFであることが多いですし、あるウェブサイトでクリップしたノートにはすべて同じソースURLがついています。

そこでこれを「保存された検索」で捉えるようにすれば、一瞬でデフォルトのノートブックに置いてあるノートを分流させることができます。

stacks.gif

たとえばScanSnapで2010年に作成されたノートなら、「intitle:2010 resource:application/pdf」という検索で大半をひっかけることが可能でしょう。また、あまり知られていませんが iPhoneからクリップしたノートなら「source:mobile.iphone」、ウェブブラウザからクリップしたノートは「source:web.clip」で検索できます。

クリップした場所や手段は、たいてい用途と一致させることができます。ウェブでクリップした情報の多くは「このネタは面白い」と思ったものでしょうし、特定のURLでクリップしたものの多くは同一のテーマであることが多いはずです。

そこで、「保存された検索」を一つのスタック向けに作成して、ヒットしたものはすべてそのスタックの該当するノートブックに放りこむようにすれば、整理整頓のスピードが加速します。スタックのなかに新たに Inbox に類する整理用のノートブックを作っておいて、なんでもそこに放りこむようにしてもいいでしょう。

実例をあげると、自分の場合、ソースURLが Lifehacker だったり、Mashable! といったブログの場合はブログのネタであることがあらかじめ分かっています。そこで保存された検索に「sourceurl:http://lifehacker*」というものがあれば、そこに入っているものはブログ関係のネタであることが自動的にわかります。そこでそうした検索にかかったノートはすぐに、ブログというスタックのなかの「ネタ」というノートブックになげこんでしまいます。

もっともありがちな組み合わせについてこうして保存された検索を作っておけば、スタックにむけてノートを振り分けてゆく作業が楽になるわけです。

ふたたび、ノートブックかタグか

ノートブック・スタックの登場で、これまでノートブックの中の情報をさらにタグで分類するという整理方法を行っていたのを、すこし修正したほうが便利になります。

今後はノートブックの中でテーマを分けられるようなら、積極的にスタックを利用してノートを振り分けておき、タグは「ノートブックをまたぐ情報」に対して付けておくのがよいでしょう。

たとえばタグはテーマの分類よりも、「重要」「面白い」「要再検討」といったノートに対してアクションや、よりメタ的にノートの内容について記述するための用途に特化するのがよさそうです。

なんだかちょっと混乱しそうですが、こうした整理はすべてノートが多すぎて困ったときにとるべき手法であって、ふだんはデフォルトのノートブックに大量のノートを積もらせておき、必要に応じて検索するという使い方でもよいでしょう。

ノートブック・スタックでEvernoteはさらに一段階の進化を遂げました。次回は、もうひ一つの重要な新機能、ノートの共有機能についてその長所と注意点をまとめておこうと思います。

今週の本

私のふだんの仕事は研究者ですが、研究者こそビジネス書を読んで、仕事の効率化や、ビジョンを実現するための考え方を身につける必要があると思う瞬間がよくあります。

「研究だけに専念していればよい」という古式ゆかしき研究者はいまではもう少なくなり、一人で研究、事務作業、プロジェクトを推進するリーダーシップをとらなくてはいけないということが多くなっています。シゴタノ!の読者にもこうした企業の研究所などで、専門性とビジネスをバランスさせることに苦心している方が多いのではないでしょうか?

そんな人におすすめなのが、『やるべきことが見えてくる研究者の仕事術』です。副題が「プロフェッショナル根性論」となっているのが注目のこの一冊は、通常の研究者のための仕事本ではありません。

自分の才能や技術に自信をもてない人が、いかにして核となる専門性を築いていくか、専門性の高い仕事と事務作業をバランスさせるか、どのようにしてキャリアを伸ばすかといった熱いテーマがたたみかけるように書いてあります。

GTD や「7つの習慣」などにも言及のある研究者のための本など、ほかにないのではないでしょうか? 研究者のための、という部分で読者は限定されるかもしれませんが、今後こうした本がプログラマーのための、セールスマンのための、という形で登場してもよいのかもしれません。


▼編集後記:
堀 E. 正岳
 この原稿はほぼ一年ぶりに国際会議のためにやってきたサンフランシスコで、時差のかなたから書いています。

ときとしてこのように海外にきて、一流の研究者の発表を聞きながら自分の仕事を見つめ直すのは自分の仕事のチューニングになって実に刺激的です。

ただ、ワインとアメリカンフードの食べ過ぎに気を付けないと、来た時よりもシャツの下に新たな荷物を抱え込むことになりそうで要注意です。


▼堀 E. 正岳:
Evernoteエバンジェリスト。「Evernoteハンドブック」の執筆や「Evernote日本語掲示板」のモデレータを通して、愛してやまないEvernoteの育て方を伝道中。Lifehacking.jp主宰。