※当サイトはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。

2010年に読んだベスト10冊

例年、12月になるとちょっと浮かれ調子で「ランキング」してみたりするこのコーナーですが、「2位」か「4位」かというのはあまりにも場当たり的な気がしていましたから、今年は、「読んだ中から10冊選ぶ」に留めさせていただきます。

ついでに選別に当たって、簡単な基準をもっているということも今年はお断りしておきます。

  • 面白かった本
  • 「シゴタノ!」的に役立つと思える本(フィクションは原則として控える)
  • 自分が著者ではない本
  • 読むのにそれなりの時間がかかる本(でなければ、書評は要らず、本を読んでいただければいいかと思います)



『ケチャップの謎』

マルコム・グラッドウェル THE NEW YORKER 傑作選1 ケチャップの謎 世界を変えた“ちょっとした発想” (マルコム・グラッドウェルTHE NEW YORKER傑作選)
マルコム・グラッドウェル THE NEW YORKER 傑作選1 ケチャップの謎 世界を変えた“ちょっとした発想” (マルコム・グラッドウェルTHE NEW YORKER傑作選) マルコム・グラッドウェル 勝間 和代

講談社 2010-07-07
売り上げランキング : 26190

Amazonで詳しく見る by G-Tools

自分の好奇心は無限大で、何にでもすぐ興味を持つことができ、人の話に真剣に耳を傾ける、と自称する人はたくさんいます。しかしそれらの人々は、たいていの場合ウソをついています。シャンプーやケチャップについて魅力的な物語を見つけ出せるグラッドウェルにすら、それらに真剣な注意を払うのは難しいのです。
シゴタノ! —    ライターになりたい人のための1冊

私はこのグラッドウェルの本について、以前このように書きました。「最近の本はつまらない」「最近、本がつまらなくなった」としたがる心理機能と、私たちは日々闘っていかなければなりません。それも、書店や出版社や著者に対するギリの気持ちからではなく、本当に面白い本を見つけるためにです。

「いっぱしの目」を持つようになれば、世の中が不毛な砂漠地帯のように見えてくるのは当然です。問われるのはそこからです。

『ほら、あの「アレ」は・・・なんだっけ?』

ほら、あの「アレ」は・・・なんだっけ?  私の記憶はどこ行った?
ほら、あの「アレ」は・・・なんだっけ?  私の記憶はどこ行った? マーサ.ワインマン・リア 藤井 留美

講談社 2010-04-13
売り上げランキング : 290151

Amazonで詳しく見る by G-Tools

最近は記憶の補助ツールがどんどん進歩しましたから、昔ほど物識りや暗記能力は重宝がられなくなりました。

しかし、「こんにちは、ところでどなたでしたっけ?」などと言うのは依然として難しいわけですから、「記憶」というテーマを気にする人が多いのも無理はありません。それにどれほど機械機器の能力が上がっても、その機械を買ったことも忘れてしまうほど、忘却が進む可能性もあります。

本書はかなりいい本です。それなりに詳しい科学的知識を知らせてくれる上に、明るいのです。このテーマはともすると、とても暗くなりがちなテーマです。それはそれで味わいがありますが、明るくて知識も明るくなるなら、読むに値するでしょう。

『小さなチーム、大きな仕事』

小さなチーム、大きな仕事―37シグナルズ成功の法則 (ハヤカワ新書juice)
小さなチーム、大きな仕事―37シグナルズ成功の法則 (ハヤカワ新書juice) ジェイソン フリード デイヴィッド・ハイネマイヤー ハンソン 黒沢 健二

早川書房 2010-02-25
売り上げランキング : 3874

Amazonで詳しく見る by G-Tools

本書にはいろいろな内容が隠れていますが、「元気が出なかったらとりあえず読んでみる」といい本です。元気が出ないのは、「現実がおいしくない」せいですが、本書を読むと「現実は案外おいしいかもしれない」という気持ちにさせてくれます。

この本を一読して、私はW・グラッサーの「現実療法(リアリティ・セラピー)」を思い出しました。現実療法の中心概念は、

人間関係を円滑にするコミュニケーションスキルや、今何をしているか、したいのかを自己分析すること、社会的責任を果たせるような行動計画、自分の行動評価、頓挫せずにチャレンジする目的志向

などです。

シゴタノ! —    小さなチーム、大きな仕事

「現実」=酸っぱい、と限ったものではありません。元気がなくなると私たちはとかく「空想」に走りたくなります。それも元気を取り戻す1つのやり方ですが、この本を読むというのも1つのやり方です。

『その科学が成功を決める』

その科学が成功を決める
その科学が成功を決める リチャード・ワイズマン 木村 博江

文藝春秋 2010-01-26
売り上げランキング : 7503

Amazonで詳しく見る by G-Tools

本書の書評エントリのところでも書いたことですが、邦題は何とも困りものです。意味がよくわかりません。「その科学」とはどの科学? 「成功を決める」とはいいことなの、悪いことなの? :59っていったいなに?

ソフィーは表情を曇らせ、心理学的な根拠のある自己啓発の方法は作れないのと尋ねた。私は幸福感について込み入った専門的な説明をはじめた。だが、十五分ほど経ったところでソフィーがさえぎった。とても興味深いお話だけど、もっと手っとり早い方法はないのかしら。「手っとり早いって、時間にすると?」私が訊いた。彼女は腕の時計に目をやり、にっこりして答えた。「そうね、一分くらい?」

これならわかります。1分で自己啓発をしろといわれた心理学者の答えが詰まった本なのです。

いささか「微妙な」話もありますが、心理実験はちゃんとしたものですし、この種の自己啓発によくあるような、ものすごく微妙な話はありません。

『究極の文房具ハック』

究極の文房具ハック—身近な道具とデジタルツールで仕事力を上げる
究極の文房具ハック---身近な道具とデジタルツールで仕事力を上げる 高畑 正幸

河出書房新社 2010-09-16
売り上げランキング : 3796

Amazonで詳しく見る by G-Tools

ライフハックが好きな人は、たいてい文具も好きですが、私は文具があまり好きではありません。手先が器用でないのでうまく使えないことが理由の一つで、もう一つはたくさんありすぎて買い物に失敗することが多いからです。

こういうことは以前にも書きました。そんな私にとっては、文具王・高畑さんによる「文房具ハック」はとてもありがたい本です。

シゴタノ! —    文具で迷う人は必読。文具王の文具ハック

と私はエントリに書きましたが、今でもこの思いは変わりません。手元に置いて、文具を買う際には必ず参考にしております。

というわけで、そうしたものの欲しい人は、必読というよりマストバイです。

『人は、なぜ約束の時間に遅れるのか』

人は、,なぜ約束の時間に遅れるのか 素朴な疑問から考える「行動の原因」 (光文社新書)
人は、,なぜ約束の時間に遅れるのか 素朴な疑問から考える「行動の原因」 (光文社新書) 島宗 理

光文社 2010-08-17
売り上げランキング : 11088

Amazonで詳しく見る by G-Tools

この本にあることを1つでもきっちりと実行すれば、私たちは「行動を」変えることができます。その結果他の人はあなたの「性格が」変わったと考えるでしょう。

これは、自分の行動の原因と、他人の行動の原因を見る見方が違ってしまうせいで起きるのですが、私の考えでは、このやり方こそ「生まれ変わる」(心を入れ替える)のに、最も有効な方法だと考えています。

外見からは、そんなことが書いてある本には思えないでしょうが、極論すれば

環境=行動=性格

という等式に沿って、他人に対するインパクトを変えることが出来るということをこんなに明快に示してくれる本はありません。

もし訳あって他人に対する印象を全面的に改めたいという人があれば(たとえば異性にもてたいと切望しているなど)ぜひ『影響力の武器』とあわせてお読みください。

『スイッチ!』

スイッチ!
スイッチ! チップ・ハース ダン・ハース 千葉敏生

早川書房 2010-08-06
売り上げランキング : 2886

Amazonで詳しく見る by G-Tools

『人は、なぜ約束の時間に遅れるのか』とおなじくらい、「継続する」のに役立つ本ですが、こちらの方が面白く読めます。こちらの方が厚い本ですが、同時に読み出せばまず、こちらが先に読み終わるでしょう。

シゴタノ! —    「意志の弱い人」がしている3つの誤解で私は本書を取り上げました。本書には「ゾウ」(無意識)と「ゾウ使い」(自意識)というなかなか巧みな比喩が使われています。なぜ私たちは「ゾウ」の力がそんなに強いと考えてしまうのか。そこに「継続」の秘訣が隠れているように思います。

そんなことを考えながらお読みいただくと、読後に新しい視点が得られます。

『モレスキン 「伝説のノート」活用術』

モレスキン 「伝説のノート」活用術~記録・発想・個性を刺激する75の使い方
モレスキン 「伝説のノート」活用術~記録・発想・個性を刺激する75の使い方 堀 正岳 中牟田 洋子

ダイヤモンド社 2010-09-10
売り上げランキング : 1070

Amazonで詳しく見る by G-Tools

本書は次の人たちにとっては必読書。

  • 中身の真っ白なモレスキンが家のどこかにある
  • いつもモレスキン手帳の周りをうろうろしてしまう
  • 手帳(ノート)をかっこよく使いたいというワケのわからぬ願望に苦悩している


本書のキーワードは「ユビキタス・キャプチャー」です。それについては、モレスキン「伝説のノート」活用術・出版記念イベントに参加します – ライフハック心理学をお読みいただければと思いますが、どうしてもそれができないという人は、「未来にやることならデジタルへ。そうでなければモレスキンに」というルールに沿ってみましょう。

すると、タスクと予定をのぞいた情報を、モレスキンに集めることになるはずです。「いつかやりたいこと」がグレーゾーンですが、これも「いつ頃か」さえはっきりしないなら、モレスキンに入れておきましょう。

そうすればモレスキンに隔日に記録が溜まっていきますし、それらの記録は、「気が向いたら読み返せばいい」と思うことができます。

『iPhone×iPad クリエイティブ仕事術』

iPhone×iPad クリエイティブ仕事術 本当に知りたかった厳選アプリ&クラウド連携テクニック
iPhone×iPad クリエイティブ仕事術  本当に知りたかった厳選アプリ&クラウド連携テクニック 倉園佳三

インプレスジャパン 2010-08-23
売り上げランキング : 344

Amazonで詳しく見る by G-Tools

本書に関してはなんと言っても、このブログの中に大橋悦夫さんのエントリがありますから、そちらをお読みいただきたいのですが、その中の一文が推薦する理由のすべてになります。

本書はアプリの解説書というより、アプリを活かした仕事のやり方の解説書、なのです。
シゴタノ! —    iPhone/iPadアプリ探しに時間を取られてアプリを活用し切れていない人のための一冊

当然読者はこうした本を求めていると思います。こうした本5冊につき、アプリ紹介本1冊あれば十分なのですが、実際には、こうした本1冊につき、アプリ解説本10冊以上という案配になってしまっています。もちろんアプリ紹介本の方が簡単に書けるからなのです。

本書は仕事術の本です。しかし、iPadは断然仕事向きのガジェットというわけではなく、リビングでのネットサーフィンや、電子書籍リーダー、あるいは旅先での「歩き方」に変わってくれるツールです。ですから

アプリの解説書というより、アプリを活かした新しい生活スタイルの解説書

も欲しいところです。

『不合理だからすべてはうまくいく』

不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」
不合理だからすべてがうまくいく―行動経済学で「人を動かす」 ダン アリエリー Dan Ariely 櫻井 祐子

早川書房 2010-11-25
売り上げランキング : 186

Amazonで詳しく見る by G-Tools

1.わたしたちには、不合理な傾向がたくさんある。
2.わたしたちは、こうした不合理性が自分におよぼす影響を、自覚していないことが多い。つまり、自分が何に駆られて行動しているのか、よくわかっていない。
(p378)

他の書籍のタイトルがそうであるとおり、本書のタイトルもかなりの誇張があります。「不合理だからすべてがうまくいく」というよりは「不合理にも一理ある」といったところが本書の内容だからです。どうひいき目に見ても「すべてが」うまくいっているとは読めません。

この本は、きわめて多くの人の人生に影を落としている、ごくごく些末な問題に、はっきりと焦点をあてているきわめて珍しい本です。私たちは生活や人生に問題が溜まってくると、つい、本を100冊読むとか、家中のものを処分するとか、極端に早起きするなど、「苦行の旅」に出てしまいがちです。

しかしそれらは、苦しみを実感できる現実逃避に過ぎません。日常の問題は、手に届くところからやって来ていて、解決するには常識的な行動と、その行動を支える健全なモチベーションがあれば事足ります。

しかし、その常識的な行動を起こすのは、そうたやすいことではないのです。本書が活躍しているのは、まさにその小さな困難さのところなのです。

たとえばガラクタの処分。限度額を超えてしまったクレジット。ダイエット中のチョコレート。それからインターネット上の出会い系サイト。きわめて大事な問題なのに、直接取り組むことはタブーであるような課題。

直接取り組むことができないから、もっと見栄えよく、だから自分も他人も納得させやすく、「おつりが来るほど苦しい苦行」で問題の解決を図るのです。氷点下の中で滝に打たれていれば、白馬にまたがった王子様が迎えに来てくれるというわけです。

そんな考えはもちろん不合理ですが、なぜそんなふうに考えてしまうかは、「不合理だからすべてがうまくいく」を読むとわかります。