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「発想力」を補助する3つのポイント

倉下忠憲
シゴタノ!の佐々木正悟さんの新著。運営されているブログと同じタイトルの本です。その名の通り「心理学」に関する本ですが学術書ではなく、ビジネスマンにとって役立つ心理学的なアプローチを解説した本です。


今回は、この本から「考える力」すなわち発想力をブーストさせるための簡単な方法を抽出してみたいと思います。ポイントは以下の3つ。

  • ゲーム化する
  • 空白を作る
  • 「面倒」を嫌う

それぞれ見ていきましょう。


ゲーム化する

第1章の中心的なテーマは「ほどよい緊張感を持って仕事をする」です。この「ほどよい緊張感」は人間の集中力を最大限に高めてくれるようです。だとすれば、後はどうすれば「ほどよい緊張感」をキープできるかが問題になります。

そこで出てくるのが「ゲーム化」するという事です。単純なゲームでも人は驚くほど集中力を見せることがあります。発想や仕事に関してそういった状況に持ち込むことができればしめたものです。

突き詰めて考えてみると「ゲーム」=「ルール」です。ルールの有り無しがゲームかそうでないかを分けるといっても過言ではないでしょう。

であれば、何かをするときには「ルール」を設定するというのがよさそうです。例えば発想。

何かについて新しいアイデアが必要だとします。その時「なんか考えないとなぁ」ではいつまで経ってもアイデアが閃くことはないでしょう。時間を設けて集中的に考えてみることが必要です。その際15分だけ考える、という「試合時間」を設定するのがゲーム化の一つのポイントです。

これだけでもゲーム化できていますが、さらに「10個のアイデア案を作る」というルールを加えます。

「15分間で10個のアイデア案を作る」

これで「考える」という作業が、一つのアイデアゲームになりました。実際の時間設定や目標数などは適当に設定すればよいでしょう。ただし、あまりにも簡単な数や逆に物理的に不可能な数はゲームとしては「つまらなく」なってしまうのでやめたほうがよいでしょう。

要点としては、「時間を区切って目標を決めてアイデア発想に当たれ!」となります。

空白を作る

続いて、「空白」です。こちらは第3章のp101より。

この「少し考えさせる」というやり方は、いろいろなケースにおいて分け隔てなく大切だ。

これは私もまったくもって同感です。これは真理の一つと言ってもいいかもしれません。人に何かを教える時でも使えますし、あるいはプレゼンなどでも使えます。こういう他人向けではなく、自分に向けても使えるのがポイントです。

自分に「少し考えさせる」にはどうすればよいでしょうか。一番簡単なのが「空白」を作っておくことです。人は空白のスペースがあると埋めたくなりがちです。「マンダラート」と呼ばれる発想法はその性質をうまく利用しています。

例えば、ふと疑問に思ったことを手帳に書き付けてその下にスペースをあけておく。あるいはノートを取る際も、一つの情報ごとに大きなスペースを取ってく。そうしておくと、見返した際に、そのスペースが発想を引っ張り出すトリガーのような機能を果たします。

要点としては、「考えを広げたいものはスペースを有効活用せよ!」です。

「面倒」を嫌う

最後のポイントは、第5章のp169より。

面倒くささは人に思考を促すのだ。

これはちょっと周りを見渡せばすぐに実感できると思います。ライフハッカーと呼ばれる人はたいてい「面倒くさがり」です。先日シゴタノ!に参加された五藤隆介さんもまさにそういう「傾向」をお持ちの方です。
*連載も「メンドウ無用のデジタルライフ」と非常に分かりやすい方向性ですね。

極言してしまえば「面倒に感じる」というのは、現状の否定です。

「やらなければいけないけども、手間がかかる事」に対して「どうにかして手間を減らせないだろうか」あるいは「これって本当にやる必要があるのか」という疑問を持つのがライフハッカー的なアプローチの一つだと思います。

どれくらい非効率に仕事をしていても、その状況を「面倒」と認識しなければ改善のアイデアを考えようとはしないでしょう。つまり「当たり前」と感じていることの中からは新しい発想は出てこない、ということです。

ですから、「面倒くさがり」の視点を持って日常の風景を眺めてみることです。すると状況を変えるような疑問__「なんでそんな事してるんだろう?」「それをしないためにはどうすればいいだろうか?」「それを少しでも効率的にするにはどうすればいいか?」__を持つことができます。こういう疑問がすべてイノベーションにつながるわけではありませんが、疑問を一つも持つことなく新しいものを生み出すことはできません。

要点としては、「面倒くさがりの意見は重要!」です。

さいごに

今回は、『ライフハック心理学』から知的生産に関係しそうな要素を抜き出して簡単に紹介しました。「考える」とか「発想」というのは意識だけでどうにかできるものではなく、無意識の影響から逃れることはできません。そういう意味で、無意識の力を活かす方法を知る事は、単純に「発想力」をアップさせる効果的な方法と言えるのではないでしょうか。

本書にはビジネスシーンでも一般的な生活でも応用できる要素が他にもたくさんあります。

例えば、誰もが大きく勘違いしている「人に好かれるための方法」なんていうのもその一例です。気になる方はちょっとチェックしてみてください。


▼今週の一冊:

今週読んだ本は『現場主義の知的生産法』。新刊ではないですが、ちょっと目についたので読んでみました。なかなか堅苦しいタイトルですが、内容はエッセイ風です。

とことん「現場」にこだわるその姿勢はデスクで情報を整理しているだけの「知的生産」とは一線を画しています。今回の記事の内容とも重なる部分があるのですが、「現場」には「緊張感」が満ち溢れている、という部分には共感を覚えます。

調査旅行への旅の手荷物の「減らし方」とか、情報を整理しないでやっていく方法などは興味深いものがあります。

一番印象に残ったのは

『論文』や『書籍』は社会に対するラブレターであり、自分の伝えたいことを『思い』を込めて、一気に書き進めることが一番ではないかと思う。

という部分。「思い」があるからこそ、表現や構成にこだわったりする意欲が湧いてくるというわけです。そういう「思い」の無い本というのは多分書いている人も、作っている人も、販売している人も、読んでいる人もあんまりハッピーではないような気がします。


▼編集後記:
倉下忠憲
先週少し書きましたが、いろいろ迷ったあげく、新型MacBookAirを購入しました。

とりあえず購入した第一感としては「非常に良い」です。本体重量も軽いし、動作周りも快適。さすがにメインPCとしては若干厳しいものがありますが、外出先で使うには文句ないパソコンだと思います。なんだかんだで家でも結構使っている毎日です。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。