※当サイトはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。

お金で苦労したくない人のための一冊

大橋悦夫突然ですが、クイズです。

以下の文中で黒く塗りつぶした部分に書かれている言葉は何でしょう?

お金を稼ぐ力でもっとも大切なのが、意外かもしれないけれど、人間関係結んでいく力だよ。


塗りつぶした部分を選択して反転させれば答えがわかりますが、少し考えてみて下さい。

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

 
いかがでしょうか。「そんなの当たり前じゃないか」と思われた方もいるでしょうし、「確かに意外だ!」と感じられた方もいるでしょう。

いずれにしても、お金を稼ぐ力は必要不可欠なものですから、一度きちんと考えておきたいところです。

そこでご紹介したいのが『生きるためのお金のはなし』


冒頭の一文も本書から引いています。その続きにはこうあります。

「子ども向け」と侮るなかれ

↓下線部が冒頭で黒く塗りつぶした部分です。

お金を稼ぐ力でもっとも大切なのが、意外かもしれないけれど、人間関係結んでいく力だよ。

これはコミュニケーション能力ともいって、一見お金と関係ないように見えて、じつは大ありなんだ。(中略)ある自動車会社の営業マンとして働いているMくんは、すごく仕事ができる。そんな彼が心がけていることは、「まず、ぼくのことを気に入ってもらうことが先。そしてやっと、車の話を聞いてもらえる」と話してくれた。

お客さんは最終的に、「きみがそこまですすめてくれるなら、その車を買おう」って言うんだって。売る人が信頼できる人かどうか、それを見極めてからお客さんは商品を選ぶそうだ。


文体からわかるとおり、本書は子どもでも読めるように書かれています。実際、すべての漢字にルビが振られています。小学校高学年であれば、読めるでしょう。

子どもに向けて書かれているだけに、ところどころ説教じみた部分や道徳の授業を彷彿とさせる記述がありますが、同じぐらいの頻度でドキッとさせられる一文に出くわすはずです。

もしあなたがお子さんをお持ちの場合、本書で語られているところのお金のリテラシー(=その価値とリスクを理解したうえで活用する能力)をきちんと体系だてて教えることはできるでしょうか?

教えられる、というなら本書を読む必要はありません。でも、少しでも不安があるなら一読しておいて損はないでしょう。僕の場合、ルビが振られているために、「なんだ子ども向けか」とあなどって読み始めたところ、ついつい読みふけってしまいました。

読み終えて思ったことは、本書に書かれていることをすべて血肉化し、実践できている大人はほとんどいないのではないか、ということ。

富裕層と呼ばれている人たちの全人口に占める割合がいかほどかを考えてみればすぐにわかります。

もちろん、彼らのすべてがお金のリテラシーを身につけているとは限りません。でも、これを身につけることなしに富裕層であり続けることは難しいでしょう。

お金について語ることは、人間について語ることに等しい

本書には宝くじにまつわる次のような話が出てきます。

そんな状況を踏まえて、1000万以上の宝くじが当たった人にだけ、日本宝くじ協会から、『「その日」から読む本~突然の幸運に戸惑わないために~』という小冊子が配られるんだって。

その内容は、「知らせる優先順位を決める」「自分の性格やクセを見つめなおす」「一人にでも話せばうわさは広まると覚悟しよう」「借金やローンから支払おう」「当選しても自分そのものは変わらない」などの心得が書いてあるそうだ。

実際、宝くじが当たった人たちによれば、「急に親戚が増えた」「借金を頼まれる」「寄付を頼まれる」「銀行の人がたくさん来る」らしい。とにかく、お金目当ての人間が大勢寄ってくるそうだ。

僕自身、1000万円どころか数万円レベルの宝くじにさえ当たったことがありませんから──本書によれば、宝くじの1等が当たる確率は「5キログラムの米袋40袋分に相当するお米のなかから、たった1粒しかない色つきのお米を選ぶのと同じ」とのこと──、そんな小冊子が存在するのか、と興味がわくと同時に、人間の業の深さを思い知らされます。

ほとんどの人は、お金をもっと欲しいと思っている。もっと儲けたい。もっと手に入れたいというようにね。

それと同時に、お金のことで悩んでいる人もたくさんいる。そういう人たちは、もっとお金があれば悩みが解決するのに、と思っている。

だから、ラッキーで大金を手に入れた人に対して、「妬む」という特別な感情をもってしまうのかもしれない。

でも、妬みはけっしていい感情ではないよ。妬んだからといって、自分に幸せが訪れたり、お金が舞い込んでくるわけではないから。むしろその逆だと思うな。妬みの感情をもつことで、何かが逃げていってしまう。お金に対して、できるだけ平常心でいられるようになりたいものだね。

本書を読んで改めて痛感させられるのは、お金そのものは無色透明であり、これに色をつけたり意味を付与しているのは人間である、ということです。待っていてもお金が降ってくることはありませんが、だからといって強引に取りに行っても簡単には手に入らない、という真理。

このあたりについては、何度か紹介してきた以下のCDや書籍で語られていることと一致します。



一方、お金で悩んでいない人たち、すなわち「お金持ち」な人はどんな風に考えているのでしょうか。

お金持ちといわれる人たちって、意外にシンプルで簡素な生活をしている人が多いんだ。第一、本当にお金があるから、見栄を張る必要もないしね。

たくさんのお金を稼いでもどんどん浪費していたのでは、すぐになくなってしまう。次に生きるお金を考えながら使って、それに見合った暮らしをしてお金を残し増やしている。

もちろんお金持ちだから、欲しいと思えば1個500万円以上する時計だって、ポンと買っちゃう。ただし、自分にとって本当に価値のあるものだから買うんだ。よく吟味したものを買って、それを大切に使う。

つまり、自分の生活にポリシーがあって、自分にとって何が大事なのかを知っている。だから必要なものは買うけれど、必要ないものには1円たりともお金を出さない。何でもかんでも手に入れるのではなくて、自分にとって価値のあるものには、しっかりお金を使う。

ここからわかることは、お金に対するスタンスの違いです。「お金さえあれば何とかなる…」というお金に頼る姿勢か、「ポリシーを全うするのに必要だから使う」というお金を従える姿勢か──。

まだまだ先の話? すでに起きている話?

本書には「この話はきみたちにとっては、まだまだ先の話だと思う。でも、お金の問題で大切なことなのでぜひ伝えておきたい」といった書き出しが散見されます。

言うまでもなく「きみたち」とは子どもたちのことであって、大人である我々ではありません。

ということは、ここで言う「まだまだ先の話」とは、大人にとっては「すでに起きている話」かもしれません。子どもに読み聞かせる前に、まず大人が“予習”しておく必要がありそうです。

なお、著者はファイナンシャルプランナーや投資アドバイザーといった、いわゆるお金のプロフェッショナルではなく、一貫して子どもの教育に関わってきた人物であり、自身も2人の子どもを持つ母親でもあります。

それだけに、純粋に子どもに「お金の面で苦労させたくない」という思いがひしひしと伝わってきます。

絵にするとこんな感じです。とても基本的なことなのですが、ここをおろそかにしたまま年を重ねていくと後で大変な苦労を強いられることになります。逆にいえば、ここをきちんと固めておけば、安心して年を重ねていくことができるでしょう。



合わせて読みたい:

今月からスタートしたテレビドラマ「秘密」の原作。10年前に広末涼子主演で映画化もされています。この作品には、とある理由から数千万円のお金を手にした2つの家族が出てきます。

もともとはお金がテーマのストーリーではありませんが、お金の使い方ひとつで人間がわかり、そして人間がかわる。そんなメッセージも込められているような気がします。