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大橋悦夫『いまやろうと思ってたのに… かならず直る―そのグズな習慣』という本の中に、「漂流」という言葉が出てきます。

もちろん1つのメタファーなのですが、仕事をしていても、ふと気づくとあらぬ方向へ「漂流」していってしまうことはよくあることです。この「漂流」という言葉からは「意図せずして本来のコースから離れてしまっている」というニュアンスがビジュアルに伝わってくるため、印象に残っています。

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“偽善グズ”のなかには〈漂流〉する人びとがいます。舵のない船というより、目的地のない船と言ったほうがいいでしょう。朝や昼や晩を振り返ってみて、自分が何をしたのか、時間がどこへ流れ去ったのか、まったく見当もつかないことがありませんか? 漂流者のなかには、いくつかの仕事に手を着けてどれひとつ完了しない人もいれば、何もしないでぶらぶらしている人もいます。

漂流にはさまざまな状況が考えられます。気分がウツになったり、打ちひしがれたり、うわのそらだったり、興奮しているとき。あるいは、時間をどう過ごすか予定を立てていないとき。

(中略)

職業によっては特に時間管理のない人びともいます。たとえば、主婦、聖職者、不動産業や保険代理業。自宅で仕事をする人びとも、自由になる時間と闘わねばなりません。漂流しないようにたえず用心しなければならないでしょう。どんな職業にも時間が不規則になりやすい領域があるようです。

(中略)

時間の自由な業種では、目標とすべき締め切りや細かいプランニング、何をし、何を優先させるかという詳細なリスト作りが必要ですし、時間管理された仕事に比べてグズにおちいらない対策がもっと厳しく要求されます。

※“偽善グズ”については、「“復線”する力」を参照

手綱を握っているのは「本来進むべき進路」か?

そもそもの「漂流」の意味は、以下の通り。

(1)船などが海上をただよい流されること。
(2)あてもなくさすらうこと。

「大辞林 第二版」より

言外に「本来進むべき進路から外れてしまう」というニュアンスが感じられます。とは言え、海上を航行する船にとっての海路図にあたるスケジュールがきちんと立てられていても、それがあることと「漂流」をしないこととの間には因果関係はないでしょう。むしろスケジュールがかっちりと固まっているからこそ、「漂流」したい衝動に駆られる、ということもありえます。

そういう意味では、手綱を握っているのはスケジュールではなく、自分自身ということになるでしょう。

あえて“泳がす”

では、「漂流」を防ぐためには具体的にはどうすればよいでしょうか。

それは、「漂流」の余地がないくらいのスキのないスケジュールを立てるのではなく、初めから「漂流」を見込んだ“あそび”をスケジュールに盛り込んでおくことだと考えています。

つまり、「漂流」を防ぐのではなく、あえて「漂流」させるようにするのです。

その際の常套手段として、これまでも何度か書いてきましたが、スケジュールの中に「何もしない時間」を設ける、という方法があります。こうすることで、予定していたタスクが予定した時間通りに終わらなかった場合でも、この「何もしない時間」が“緩衝材”となって、遅れを吸収してくれます。

ただ、これでは確実な「漂流」は見込めません。本当は「漂流」したかったのだが、他のタスクが遅れたためにそこに吸収されて、結局できなくなってしまった、ということが起こりうるからです。

そこで、さらに一歩進めて、具体的にどのような「漂流」をしがちなのかを自分のこれまでの仕事を振り返って、リストアップしていきます。例えば、次のような「漂流」が考えられます。

  • メールチェック
  • ブログのアクセスログチェック
  • RSSリーダーチェック
  • SNSチェック

この中で、多少強引にでも「仕事の情報収集の一環として」といった大義名分が成り立つような「漂流」を選び、これを業務としてスケジュールに組み込むようにします。例えば、「RSSリーダーチェックに30分」といった具合です。

こうしておけば、仕事を進める中で、ふと「RSSリーダーのチェックがしたいなぁ」と思い立ったら、堂々とRSSリーダーを開きます。そのために30分が確保してあるわけですから、心おきなくできるはずです。

一通りチェックをして気が済めば「今日はまだチェックしていない」といったフラストレーションは解消できますし、予定通りの行動ですから、自分の行動に対して納得もいくでしょう(そういえば、『デジタル・ワークスタイル』の中で、著者の徳力さんも「RSSリーダーのチェックは毎朝30分と決めている」と書かれていました)。

「漂流」の流れ着く先に

このように今までは「予定外」のタスクとして、スキマ時間にこなしていたことを「公式な予定」としてこなすようになれば、必然的に他の仕事を予定通りの時間で終わらせようとする動機付けになるでしょう。

一見動機不純のように思えるかもしれませんが、結果として仕事が早く終われば、それはそれで望ましいことになるはずです。

「時間が空いたら○○しよう」と思っていても、そうそう時間は空かないものですし、空いたとしても「やりたいこと」が多すぎてどれをやったらよいかを迷っているうちにその時間が過ぎ去ってしまうというジレンマに苦しむことになります。

それゆえ、あらかじめ自分がやりそうな「漂流」をスケジュールに組み込んでおくことで、少なくともその「漂流」はもはや「漂流」ではなくなるわけです。

もちろん、「漂流」ではなくなってしまうということは、やっていることは同じでも、本当の意味での「漂流」の感覚は味わえなくなってしまいます。例えば、現実逃避のスリルや自滅感がこれにあたります。でも、そうなればその「漂流」の自分(の仕事)にとっての意義が明らかになり、初めて正面から向き合えるようになる、ということはあるでしょう。

これを繰り返していくと、今まで「漂流」扱いだったタスクが次々と「公式な予定」に昇格していきます。中には「漂流」のままで残しておきたいタスクもあるとは思いますが、それ以外の、今まで“アングラ”でしか行えなかったことが、堂々とできるようになる、という変化は、仕事のモチベーションを高めることになるはずです。

ここで思い出されるのが『シャドーワーク』にあった以下の一節です。

予測しないことが起こるのが未来であり、予定調和の世界は存在しえない。必要なのは、調和を超えて変化を自ら起こし続けることだ。未来は予測するものではなく、つくり上げるものである。予測できない世界で生き残る方法は、自ら変化を起こすことなのだ。

“目に見える世界”は、次々につくられては壊されていく。その“目に見える世界”の根底には、新しい世界が潜んでいる。この“目に見えない世界”が表に現れ、未来がつくられるのである。

そして、このプロセスが繰り返されていく。だからこそ、未来をいち早くつくり上げるためには、“目に見えない世界”での競争が重要になる。

図らずも日々繰り返してしまう「漂流」行為が、実は誰もが想像だにしなかった「未来」を紡ぐ行為になっているのかもしれない! というのは言い過ぎかもしれませんが…。

でも、『ビジョナリー・ピープル』に紹介されていた以下のような展開もあり得なくはないでしょう。

グーグルの首席科学者クリシュナ・バラットは、まさにこの方法でグーグル・ニュースを思いついた。バラットのメディアに対する個人的な興味と、祖国のインドで祖父と一緒にBBCを聞いていた思い出とが、911事件のときに刺激されたのだ。つまり、当日のさまざまな出来事を伝えるニュースを急いで探し出そうとして、はっきりとわかったことがひとつある。それはニュースを見つけ出して選別するのがいかに骨の折れる作業か、ということだった。CEOのエリック・シュミットがバラットのところに立ち寄り、親指を立ててOKのサインを出してくれ、創業者のラリー・ページとサージェイ・ブリンが承認してくれたとき、そのバラットの夢は、グーグルの正式な業務になった。

大事なことは、「漂流」してしまう自分から目を背けるのではなく、まっすぐに見据えて、これを受け入れる姿勢なのかもしれません。

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そこで、やはり「何もしない」が重要になってきます。食事を取る、という明確な目的のあるランチタイムと違って、「何もしない」は特定の目的がないプレーンなタスクですから、あらゆるタスクに振り替えることができます。疲れていれば休憩、眠ければ仮眠、遅れていれば補填、といった風にです。


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06月10日(土) 新しいプロジェクトをサッと始めて着実に進める方法

タスクカフェ
今回のテーマは、

新しいプロジェクトをサッと始めて着実に進める方法

です。

前回に引き続き、プロジェクト管理について掘り下げます。
前回の続きですが、今回初めて参加する方にも優しく解説します。

タスクカフェ講師の1人、佐々木正悟はこれまでに50冊以上の書籍を執筆していますが、一度たりとも原稿を落としたことがないと言います。つまり、締切に遅れることなく、1冊分の原稿を仕上げているのです。

これは、たとえて言うなら卒業論文を50回連続で期限までに提出しているようなものです。

書籍の執筆という仕事は、一冊ごとにそれぞれにテーマも背景も事情も異なる、言わば定型化しにくいプロジェクトです。もちろん、50回も繰り返していれば、その勘所は押さえられるがゆえに、初めて本を書くという人に比べて圧倒的に効率よくスピーディーに進められるということはあるでしょう。

それでも、佐々木にも1冊目の本の執筆という機会があったはずです。そこからいかにして「今」に至ったのか? これまでの経緯をひもときながら、新しいプロジェクトをサッと始めたうえで、これを着実に進めていく方法をお伝えします。

特に、見通しの立ちにくい仕事になかなか着手できずにお困りの方はぜひご参加ください。

好評いただいている個別相談の時間もご用意していますので、知識としては理解できているとは思うものの、なかなか実践に結びつけられず苦戦している、という方は、ぜひこの機会にブースターとしてご活用ください。


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