『「伝説の社員」になれ!』という本を読みました。
著者は、元アマゾンのカリスマバイヤーであり、現在はビジネス書専門の出版コンサルタントおよび書評家として活躍している土井英司氏。ビジネス書を選ぶ際に参考にさせていただいているメルマガ「ビジネスブックマラソン」の発行者としても有名です。
今回は、「なるほど!」と思った部分をいくつかご紹介します。
●収入の一部は授業料としてとらえる
●自分と補完関係にある対象を探す
●9年間続ける
●可能性をせばめていく
収入の一部は授業料としてとらえる
「他人の年収が気になってしかたがない……」あなたは、そんな小さな自分に、イヤ気がさしているかもしれません。
転職サイトのスキル診断をやってみて、年収の高い企業の募集に心が動くこともあるでしょう。
かつての僕もそうでした。今は昔にくらべて転職先も多く、一見、環境が良くなったように思われますが、実際は、ここに悲劇があります。
年収アップだけに焦点をあてて動きまわっていると、気がつけば、根なし草になってしまうのです。
最初に入る会社を選ぶ基準はともかく、そこから2社目に転じる場合は、年収の多寡は重要なファクターになるでしょう。人材会社の多くが「年収査定」と呼ばれる無料サービスを提供しているのは、転職予備軍に対して「あなたのキャリアからするとこれぐらいの年収が妥当ですよ」などと具体的な金額を知らせることにより、「今の会社では安くコキ使われている…」といった危機感を与えることができるから、と考えられます。危機感は「行動」を喚起します(そういう意味では査定結果は高めの金額が出るようになっているかもしれません)。
これに対して、土井氏は収入に対して以下のようなスタンスを提示しています。
外資系でも日本企業でも、本物の成功を手にしたければ、まずは今いる会社で自分の価値を高めたほうが、将来的にはトクなのです。「会社にいながら自分の価値を高める」などというと、仕事が終わったあと技術を身につけるために専門学校に行く、あるいは通信教育を受けるといったことを考えがちです。
しかし今、就いている仕事があなたの望んだ職業なら、仕事の内容そのものを授業として考えることができます。
給料が安くても、それは授業料を払っているから、というわけです。
僕自身、毎日15時間働いて、12万円程度しか給料をもらっていない時期がありましたが、仕事そのものを授業と考えていたので、給料の安いことはまったく苦になりませんでした。
12万円は、本来の収入から授業料を支払った手取りと考えたのです。
すると、「授業料を払っているのだから、もっと学ばねばソンだ」という気持ちになり、仕事そのものに意欲がわいてくるから不思議です。
単純に、もらっている金額を働いた時間で割ると、「アルバイトの時給並み」の水準であることに気づいて愕然とすることがあります。でも、働いている時間のすべてが会社の売上に貢献しているわけではないことを考えると、ここは割り引いて考えた方がよいでしょう。
つまり、
「今日は残業も含めて10時間仕事をしたが、そのうち売上に貢献したのは7時間だ」
という実感があれば、残りの3時間は勉強時間ととらえるわけです。
この「時間仕訳」を毎日きちんと行い、月単位で集計することで、(純粋な仕事時間は少なくなりますから)時間当たりの単価は見かけ上アップするはずです。そうなると、残りの時間は勉強をしていたわけですから、無料で授業を受けることができた、ということにもなるでしょう。
自分と補完関係にある対象を探す
人生の早い段階で巨万の富を得、引退して贅沢三昧の生活に入る人がいます。ストレスから完全に解放されて、さぞや夢のような毎日だろうと想像されますが、実態は違うようです。
しかし、彼らのなかにはノイローゼになってカウンセラーの力を借りたり、無気力になり、自分はなぜ生きているのかわからないと自殺する人までいるそうです。
それゆえ、土井氏は「遊びは人生のメインにはなりません」と断じています。その上で、自分が情熱をもって取り組むことができるような面白い仕事を見つけて、これをやり続けた方が、よほど生き甲斐がある人生であろう、としています。
そのような面白い仕事を見つけるためにこそ、お金を使うべきであるというわけです。
では、具体的にはどうすればよいか。言い換えれば、自分が情熱を持って取り組むべき対象をいかに見つけるか、ということですが、これについて非常に腑に落ちる指摘があり、大いに頷かされました。
僕の大好きな本に、ミルトン・メイヤロフ氏の『ケアの本質』(ゆみる出版)があります。もともとは教育、医療などの現場を対象に書かれた「人をケアする人間の心構え」ですが、その教えは仕事でも使えます。ここで引用させていただきましょう。
「音楽家は音楽を演奏してはじめて音楽家たりうるように、私と補完関係にある対象は、私の不足を補ってくれ、私が完全になることを可能にしてくれる」
「私と補完関係にある対象が成長して、私を深く包み、私の生を実りあるものにととのえてくれるように、その対象の成長を援助する過程の中で、私自身も変容を遂げるのである」
つまり、今のあなたにとって必要なのは、出世したり、高い給料を追い求めることではないのです。一生を通じて自分がケアし、それによって自分も成長できる、そんな対象を見つけることなのです。
自分の初期の状態を「不足のある状態」とみなしたうえで、何が補われれば自分が理想とする「完全な状態」になれるのか、というベクトルを持つ、というわけです。単に理想や目標を持つだけでなく、「今の自分」に目を向け、「何が不足しているのか」という現状を把握するという点が新しく感じられました。
言われてみればその通りですが、それだけに非常にしっくりと来ます。
9年間続ける
土井氏が自身の体験と周囲の観察を通して発見したのが「どんなことでも9年続ければ成功する」という法則(あるいは傾向)。
僕には音楽や絵画といった方面の才能はありません。営業が得意なわけでもない、サービス精神が非常に旺盛というわけでもない。ちょっとアクが強いものの、いわゆる普通の新卒にすぎませんでした。
その僕でさえ、自分を生かせる仕事は見つかったのです。ビジネス書というニッチな分野ではありますが、『ケアの本質』がいうところの自分と補完関係にある対象を見つけ、世間にもそれなりに認められるようになりました。
9年という歳月がかかりましたが、小さなことでも9年続けてきたからこそ、ビジネスになり得たのです。
「マンションを買った」
「課長になった」
「ストックオプションで何億円も儲けた」友人や知りあいのこんな話を聞いても動揺することなく、自分だけの道を探し、歩みつづけましょう。
彼らだって、必ずや9年前から、それぞれが何かを捨てて精進してきたのですから。
「何が不足しているのか」がわかったら、それと「補完関係にある対象」を見つけることに集中する。そのためには、それ以外のことは捨てる必要があります。
つまり、単に9年間続ければよいというわけではなく、続ける過程で、「これじゃない」「今じゃない」「私じゃない」と感じられるものはどんどん捨てていき、ひたすら「補完関係にある対象」に焦点を絞っていくわけです。
可能性をせばめていく
僕は一流の人に数多く会っていますから、絶対に彼らの真似をしようとは思いません。真似すらできないものを、彼らはもっているのです。ジャンルを変えさえしたら、その一流の人たちに勝てるかもしれません。けれど残念なことに、変えた分野にはまた一流の人がいる。そこで、この分野でも自分は敵わない。ではどうしたらいいかと考えてみる…。
そんなふうに「可能性をせばめて」いくと、最後は「土井英司にしかできないことはなんだろう」と考えるしかなくなります。
お金もプライベートの時間も忘れて没頭できること。
やらずにはいられないほど情熱があふれてきて継続できること。
なぜか自然にできてしまって、他者からほめられたり感謝されたりすること。自分にしかできないことを探し、磨くことで、オンリーワンになる道を探すことができます。
実践を繰り返しながら焦点を絞り込んでいった結果、最後には「自分にしかできないこと」が残る。これは、「初めに目標ありき」のアプローチとは一線を画す考え方と言えます。
本書の中で、特に印象的だったのが、土井氏の“下積み時代”における数々のエピソード。ほとんど毎日徹夜に近い状態で、取材に出かけたり、記事を書いたりしながら「自分と補完関係にある対象」を模索し、「可能性をせばめ」ていく過程が描かれており、読みながら「自分だったらどうするだろうか? ここまでできるだろうか?」といった自問が繰り返されました。言わば、土井氏の“下積み時代”を擬似体験することができるわけです。
いま自分が取り組んでいることに対して「いまいちしっくり来ていない」と感じている方におすすめの1冊です。
<関連>
・『「伝説の社員」になれ!』
・メルマガ「ビジネスブックマラソン」
・エリエス・ブック・コンサルティング(土井英司氏)
・実践を通して初めて見えてくるもの
「ここに私の秘密、とても簡単な秘密がある。人は心でしか物事を正しく見ることができない。本質的なことは目に見えない。『本質的なことは目に見えない』。小さな王子様は絶対に忘れないように繰り返す」
組織に働く私たちにとって、本当の意味で重要な仕事、そして本当の意味で私たちに満足を与えてくれる仕事は、スペースの外縁付近にあることが多いのだ。(中略)
自分の目の前にはスペースが広がっていること。そこでは、自らの意志と判断で行動できること。そして、コアを超えて、自分でなければ実現できないことを実現していくことが、周囲から期待されていることでもあり、まさに自分にとっても、深い充足感をもたらしてくれること。このことをあらためて認識することが何より必要なのだ。














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