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整理を始める前に考えたいこと ~汝自身を知る~

倉下忠憲
国内文房具大手メーカーのコクヨのウェブサイトに「コクヨのヨコク」という面白いページがあります。その中にある「「整理」と「整頓」の違いを考えることから掃除は始まる」というページから少し引用してみます。

「整理」とは理をもって整えること。理とは、論理、体系のことです。仕事を体系化して、必要な位置に必要なものが配置されていれば、手と頭が連動して最短距離を動き、無駄なものを触ることもありません。散らかる率はぐっと下がるはず。

(中略)

優れた料理人は必要なものを最適な位置にスタンバイさせていて、使ったらそこに戻す。てきぱきと作業は進み、キッチンが散らかる間もなく、美味しく見た目も美しい料理が仕上がっていきます。料理にはどんな順序で何が必要になるか、シェフの頭に体系が叩き込まれているからです。

今回は「整理」について考えていきたいと思います。

そもそも整理とは

整理整頓という言葉はよく使われます。同列に扱われていますが、二つが意味するところは同じではありません。「情報整理」や「人員整理」とは言いますが、「情報整頓」や「人員整頓」とは言いません。

さて、整理とはいったいどのような意味なのでしょうか。

ウェブのgoo辞書で意味を引いてみると以下の3つの意味が出てきます。

整理
(1)乱れているものをそろえ、ととのえること。
「引き出しを―する」
「論点を―する」

(2)不必要なものを取り除くこと。
「小枝を―してから生ける」
      「人員―」

(3)会社が支払い不能・債務超過に陥るおそれや疑いがある場合、裁判所の監督下に会社の再建を図る目的で行われる手続き。商法で規定されている。

(1)は整頓とほぼ同じ意味合いを含んでいます。例として上がっている文章も、多少苦しくはありますが「整頓」に置き換えることもできます。

(3)に関しては商法上の特別な用語なので除外します。

整理と整頓を線引きしているのはどうやら(2)の意味のようです。

「不必要なものを取り除くこと」

これが、整理の重要なポイントとなりそうです。

 

機能するルール

例えば10枚の書類があったとします。各々の書類は重要度や期限やサイズが異なるものとして下さい。

仮にその書類群が机の上に散らばっていたとして、それらを書類受けに直すのが「整頓」です。

それを例えば重要度の順番で縦に積む、というのが「整理」です。あるいは期限が近い順番に右から左に並べるのも「整理」です。

これらは「重要度順」「期限順」というルールに基づいて並べられています。このルールが「整理」の理という言葉にあたるわけです。つまりルールがなけれ「整理」とは呼べません。ではルールがあればそれだけで充分でしょうか。

先ほどの書類群を書類のサイズ順に並べた場合ならばどうでしょうか。それも「整理」と呼べるでしょうか。単に言葉の定義からすると「整理」に分類しても問題なさそうですが、この「整理」が機能するかどうかは不明です。

書類をその大きさを手がかりにして探すことは可能でしょうか。A4サイズ9枚、B5サイズ1枚という組み合わせにおいて、B5の書類を探し出すのは容易ですが、A4の書類の中から必要な一枚を見つけ出す場合には、大きさはまったく「手がかり」にはなりません。

そのような状態を「整理」と呼ぶことには少々ためらいがあります。整理するというのは、後から探せる状態──つまり必要な時に使える状態にする、という事も重要なポイントになってきそうです。

 

整理を始めるための2つのポイント

上に挙げた「コクヨのヨコク」の中の文章からもう一度引用します。

優れた料理人は必要なものを最適な位置にスタンバイさせていて、使ったらそこに戻す。

このような状況はまさに「整理されている状況」と呼べるでしょう。ビジネスパーソンのデスクもこのような状況を目指したいものです。ではどうすればこのような環境を作ることができるでしょうか。

ポイントは二つあります。

・「必要なもの」が何であるかを知っている
・「最適な位置」が何処であるかを知っている

当たり前かも知れませんが、上の二つについて分かっていないと「整理」された環境を作ることはできません。しかし、整理について躓きやすいのがこのポイントなのです。

料理人の例えでいうと、

  • レシピが分かっていないから必要な調味料がわからない。
  • 手順が分からないからキッチンスペースの有効な利用方法がわからない。
  • できあがりの形がイメージできないから適切な大きさのお皿を事前に準備できない。

となります。逆にこれがイメージできていれば、キッチンを理想的な状態に整えておくことができます。

必要なものが何であるかを知るためには、不必要なものを取り除かなけれなりません。
最適な場所を知るためには、それをいつ・どのように使うのかを知る必要があります。

この二つについての理解が、整理をスタートさせる基本になるでしょう。

 

まとめ

整理については、物でも情報でも同様の考え方が通じます。整理の基本的な考え方は

「必要なもの」を「最適な場所」に置く。

です。

そのためには、自分にとっての必要なもの、自分にとって使いやすい状態ということを知っておくことが必要です。自分の仕事を進めるスタイルにおいて、必要な情報はどれか。書類は重要度でならべたらいいのか、それとも期限ごとに並べた方がよいのか。それを理解できればルールができます。

これが「理を持って整える」という事の意味です。これを把握しないまま「整理」を始めようとすると破綻します。他の誰かがやっている整理法が自分の場合だと機能しないのもこのためです。人によって必要なもの、最適な状態が違うのだから当然です。

まずは、汝自身を知れ、から始めてみて下さい。

 
今回は概論めいた話になったので、次回はもう少し具体的な整理法について考えてみたいと思います。

▼参考エントリー:

・「整理」と「整頓」の違いを考えることから掃除は始まる 掃除の達人 | コクヨのヨコク | コクヨ
せいり【整理】の意味 国語辞典 – goo辞書

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▼倉下忠憲:
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