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トップ > シゴタノ! > 知的生産への姿勢 | Aliice pentagram




倉下忠憲

» 前回:表現制御の技術 | Aliice pentagram



これまで「知的生産の五芒星」として、知的生産の〈中身〉を以下の五つとして紹介してきました。

  • 情報摂取
  • 記録管理
  • 知的作用
  • 概念構築
  • 表現制御

これらは一つの工程であり、それを支えるのはある種のノウハウです。

もちろんノウハウは大切ではあるのですが、それだけでは足りません。「姿勢」が必要です。

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自明でない姿勢

たとえば、「知的生産の五芒星」をしっかりと習得した上で、それを政治的主張を行うために事実をねじ曲げたアウトプットを生み出すために使うこともできます。あるいは、まるっきり他人のコンテンツをコピーしてきて、その一部分を改変することによって「あたらしく」みえるように提出するために使うこともできます。

包丁を扱う技術は料理にも役立つが、他のことにも使えてしまう。つまりは、そういうことです。ノウハウだけでは、その力がどう使われるのかはまったくわかりません。だからこそ、「姿勢」が大切になります。

しかし、知的生産の話題では、そうしたことはあまり語られません。文章術の本で、「他人の著作権を侵害してコンテンツを生み出すのは止めましょう」と書かれることは稀です。おそらく、わざわざ書くまでもない自明なことだと思われているからでしょう。

それはそれで素晴らしいことではあるのですが、残念ながらそれは真の意味で自明なことではありません。ノウハウ(力)は、姿勢とは独立して存在しており、いかようにも使えてしまうという点は動かしがたい事実です。

新しい価値を生む

知的生産とは、「頭をはたらかせて、なにかあたらしいことがら──情報──を、ひとにわかるかたちで提出すること」でした。それは人が頭を働かせることによって、情報に新しい価値を添付すること意味します。そして、そうして生み出した新しい情報を人にわかる形に整え、提出することは、社会に新しい価値を付与することと同義です。

※価値をのせて社会にコンテンツを放流する

知的生産という行為の中には、純粋な知的好奇心もあるでしょうし、それによって利益を得ようとする欲求もあるでしょう。人間の行為は多数の(あるいは多義的な)情動によって支えられているのですから、それ自体はおかしなことではありません。しかし、それらの中に、「社会に新しい価値を付与すること」がまったく含まれていないとしたら問題です。端的に言って、それは知的生産ではありません。知的生産を装った別の何かです。

ただしこの「社会に新しい価値を付与すること」を、それほど大仰に捉える必要はありません。世紀の発明や斬新な意見でないと提出してはいけない、という話でもありません。他の人をクスッと笑わせる何かでも、へぇ〜と思ってもらえるテクニックでも、十分に「社会に新しい価値を付与すること」はできています。

しかし、検索結果にノイズを加えるような行為や、人を騙してまで儲けようとする行為には「社会に新しい価値を付与すること」は含まれていないでしょう。むしろ欠損している可能性すらあります。できるだけ、そのような行為は避けること。そして、新しい価値を付与することを目指すこと。それが知的生産において、もっとも基本的な姿勢となります。

さいごに

「社会に新しい価値を付与すること」などと書いて、これから知的生産に関わりたいと思っている人を及び腰にしたいわけではありませんが、かといって「なんでもいいじゃん」と野放図になるは避けたいところです。

冒頭にも書いた通り、ノウハウ(力)はいかようにでも利用できるものです。姿勢の話を欠いたノウハウ(力)の流通は、悪い結果をもたらすことがありえます。ノウハウは姿勢とセットになって、はじめてうまく機能するのです。その点、昔の知的生産系の本にはそのような姿勢の話がわんさか出ていましたし、師匠と呼べる存在が近くにいて、そこから姿勢やそれを支える規範を見よう見まねで学んでいけた時代もあったのかもしれません。

が、現代では断片化した情報網により、ダイレクトにノウハウだけが学べてしまいます。姿勢の話は置いてけぼりにされがちなのです。むしろ、そういう話をするのはトロい(モダンではない)雰囲気すら受けます。

しかし、まさにその姿勢こそがノウハウを最大限に「活かす」ために必要なものではないか、という話を書いてこの連載を終わりにしたいと思います。長い連載をお付き合いくださり、ありがとうございます。

▼今週の一冊:

カモ釣りの話です。人間の不合理生と市場の競争原理によって、あくどいことをするプレイヤーが市場には必ず現れることになり、その存在を含んだ均衡が成立してしまう、ということが語られています。悪しき意図を持ったものが必ず紛れ込むからこそ、ルール制度や倫理といったものが大切になってきますね。姿勢の話もたぶんそれに呼応すると思います。

» 不道徳な見えざる手[Kindle版]


▼編集後記:
倉下忠憲



原稿書きも佳境に入ってきました。本当はもうこの当たりで脱稿していて、文章チェックやら表紙作りに入っている心づもりだったのですが、ぜんぜんその段階には達していません。でも、なんとか今月中には新刊は完成しそうです。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。



▼「R25世代の知的生産」の新着エントリー

» 「R25世代の知的生産」の記事一覧

07月08日(土) プロジェクトを進めるための“記録”の活かし方

タスクカフェ
今回のテーマは、

プロジェクトを進めるための“記録”の活かし方

です。

前回に引き続き、プロジェクト管理について掘り下げます。
前回の続きですが、今回初めて参加する方にも優しく解説します。

タスクカフェ講師の1人、佐々木正悟はこれまでに50冊以上の書籍を執筆していますが、一度たりとも原稿を落としたことがないと言います。つまり、締切に遅れることなく、1冊分の原稿を仕上げているのです。

これは、たとえて言うなら卒業論文を50回連続で期限までに提出しているようなものです。

書籍の執筆という仕事は、一冊ごとにそれぞれにテーマも背景も事情も異なる、言わば定型化しにくいプロジェクトです。もちろん、50回も繰り返していれば、その勘所は押さえられるがゆえに、初めて本を書くという人に比べて圧倒的に効率よくスピーディーに進められるということはあるでしょう。

前回は、実例をまじえながらこの勘所についてお伝えしましたが、今回はその中でさらりと触れられるにとどまった「記録」の活かし方について掘り下げます。

プロジェクトを進める中においては、「次にするべきこと(ネクスト・アクション)」や「気になっていること」、「ある期日までは忘れていても良いこと」など、さまざまな情報が断続的に発生します。これに加えて、「今日はどこまでやったのか」といった作業記録も絡んできます。

これらの情報をどのように整理し、どの程度のレベルで記録に残していけばいいか。そして、残した記録をどう活用すればいいか。具体的な実例をまじえて詳しく解説します。

特に、見通しの立ちにくい仕事になかなか着手できずにお困りの方はぜひご参加ください。

好評いただいている個別相談の時間もご用意していますので、知識としては理解できているとは思うものの、なかなか実践に結びつけられず苦戦している、という方は、ぜひこの機会にブースターとしてご活用ください。


本日時点で、残り1席ですので、ご検討中の方はお早めに。

» 仕事を予定どおりに終わらせたい人のための「タスクカフェ」@渋谷


「タスク管理トレーニングセンター」のご案内


タスクカフェは東京(渋谷)でのみ開催しているため、地理的にご参加が難しいという方、あるいは日程的に厳しいという方もいらっしゃるかと思います。

そこで、オンラインコミュニティ「タスク管理トレーニングセンター」を開設しました。


▼タスク管理トレーニングセンターとは?

「タスク管理トレーニングセンター」は、タスク管理にまつわる以下のような課題に取り組みます。
  • いろいろな本を読んだりセミナーを受けたが自分なりの方法が確立できていない
  • こちらの業務環境や状況に合わせて客観的なアドバイスをして欲しい
  • 誰に質問していいのか分からない
  • どのツールが自分に合うのかが分からない
  • TaskChute2で「こういうこと」をしたいが方法が分からない
  • たすくまで「こういうこと」をしたいが方法が分からない
  • TaskChute Cloudで「こういうこと」をしたいが方法が分からない
  • この使い方で合っているか不安
  • もっといいやり方があれば教えて欲しい
  • 他の方とタスク管理に関する課題を共有したい
これらの課題の解決のために以下のようなメニューをご用意しています。
  • タスク管理アプリの開発者とタスク管理のエキスパートがあなたのご質問にお答えします
  • 一般非公開のコミュニティで他の参加者の方と課題を共有できます
  • タスク管理の考え方・やり方の理解を深めるためのレクチャー動画をご覧いただけます

ご質問にお答えするのは、TaskChute開発者の大橋悦夫、たすくま開発者の富さやか、TaskChute Cloud開発者の松崎純一、そして、タスクシュート歴10年の佐々木正悟の4名です。

また、毎月のタスクカフェのレクチャー内容を動画で公開しています。

これまでにお答えしているご質問や現在公開中のレクチャー動画については、以下のページにて詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。

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