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仕事の生産性を高めるための2つの整理



大橋悦夫以下は『思考の整理学』の「整理」という稿からの一節です。ここで使われている「工場」と「倉庫」いうメタファーは、いずれも今日のワークプレイスにおいて健在です。

思考の整理学 (ちくま文庫)人間の頭はこれからも、一部は倉庫の役をはたし続けなくてはならないだろうが、それだけではいけない。新しいことを考え出す工場でなくてはならない。倉庫なら、入れたものを紛失しないようにしておけばいいが、ものを作り出すには、そういう保存保管の能力だけではしかたがない。

人間でいえば、「工場」は短期記憶であり、「倉庫」は長期記憶。コンピュータでいえば、「工場」はメモリであり、「倉庫」はハードディスク。料理の世界なら、まな板と冷蔵庫。お金の話に置き換えれば、手元の財布と銀行口座。洋服なら、着ている服とクローゼット。

挙げていくとキリがないのでこのあたりにとどめ、引き続き同書より引きます。

「工場」の整理と「倉庫」の整理の違い

だいいち、工場にやたらなものが入っていては作業効率が悪い。よけいなものは処分して広々としたスペースをとる必要がある。それかと言って、すべてのものをすててしまっては仕事にならない。整理が大事になる。

工場はクリアーに短期記憶はクリアーに、メモリはこまめに解放し、まな板は常に清潔に、財布には必要最小限の現金を、ファッションはシンプルに──。

ということで、「整理」の話に入っていきます。いろいろ書いてありますが、ポイントは次の2つ。

  1. 工場の整理:作業のじゃまになるものを取り除く(いま見つけやすいように)
  2. 倉庫の整理:順序よく並べる(後で探しやすいように)


工場で大切なことは「今すぐ」であり、倉庫で大切なことは「後ですぐ」です。いずれも「すぐに」という早さ(クイックネス)が求められるのは同じですが、質が違います。

「今すぐ」は文字通り、すべてに優先して(ほかを差し置いて)実行することであり、「後ですぐ」は、そのときになってまごまごせずに済むように準備しておくことを、それぞれ指します。

つまり、実行と準備です。

実行とは小回りの良さであり、準備とは手回しの良さである、と言い換えることもできるでしょう。

いずれにしても普段から油を差してなめらかに回るようにしておくことが整理の本質といえそうです。

「工場」の整理に役立つのか、「倉庫」の整理に役立つのか

この2つの視点をもって本を読むようにすると、学びが変わります。読みながら「お、これはいいな」と思える箇所があれば、それは工場の整理に役立つのか、倉庫の整理に役立つのか、どちらなのかを考えるようにします。

たとえば、今回引用した箇所は、情報をどのように整理すれば後ですぐに使えるようになるかを知るうえで役に立ちました。

つまり、このエントリーを書く際に、迷わず書き始めることができたのです。これは倉庫の整理です。

僕にとっての倉庫はEvernoteですが、ここは工場ではありませんから「後で探しやすいように」整理しておくのはもちろん、「今すぐ」に必要なものは基本的には入れないようにしています。入れたとしても、すぐに工場であるToodledoに移管します。

逆に、工場であるToodledoに今回のような引用文を入れておいてもじゃまになるだけです。

知的生産のための場所を4つに分ける

このように場所を分ける効用については、『知的生産の技術』でも言及されています。

知的生産のために必要な部分空間は四種類となる。仕事場と、事務所と、資料庫と、材料おき場である。


4つをまとめると以下のようになります。

  1. 仕事場:原稿を書いたり手紙を書くなど文字通り仕事(生産)をする場所
  2. 事務所:手紙に封をしたり、切手を貼ったりといった事務作業をする場所
  3. 資料庫:資料を置いておく場所(本棚やキャビネット)
  4. 材料おき場:文房具やファイルなど仕事や事務に必要な材料が置いておく場所


必ずしも4つでなくても、たとえば仕事場と事務所は兼用でもいいでしょうし、資料庫と材料置き場も一緒という場合もあるでしょう。前者は「工場」であり、後者は「倉庫」に当たりますね。

参考文献

» 思考の整理学 (ちくま文庫)[Kindle版]


» 知的生産の技術 (岩波新書)[Kindle版]


合わせて読みたい:

今回ご紹介した2つの視点を活かしてぜひ読んでいただきたいのが以下の一冊。ノートは「工場」であり、「倉庫」でもあることを実感できると思います。逆に言えば、2つをごっちゃにしてしまうと、思うように成果を出すことができません。

「工場」や「倉庫」という言葉は使われていませんが、この2つをどう使い分けるかについても実例をまじえて解説されています。

» 「結果を出す人」はノートに何を書いているのか (Nanaブックス)[Kindle版]


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