※当サイトはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。

続・マーベル映画に学ぶ、「短期集中志向」より「長期継続志向」を選ぶ理由



大橋悦夫以下の記事の続き。

» マーベル映画に学ぶ、「短期集中志向」より「長期継続志向」を選ぶ理由

マーベル映画は「短期集中志向」ではなく「長期継続志向」の戦略を採用しているわけです。

とはいえ、「長期継続志向」にも良いことばかりではなく課題ももちろんあります。

まず、「長期継続志向」の良いことを改めて整理すると以下のようになります。

  • 同じ世界観で同じキャストが継続的に出演することで、観客にとって「なじみ深さ」が醸成されやすい
  • 同じ世界観で同じ配役で出演することで、俳優にとって演技に習熟しやすい
  • 同じスタッフ(制作チーム)で制作を継続することで、一体感が生まれやすい

観る側にとっても、演じる側にとっても、そして制作する側にとっても、安定感が増すというメリットが得られることがわかります。

では、課題とは何か?

「長期継続志向」の課題

まっさきに思い浮かぶ課題は、「長期継続」であるがゆえの「マンネリ化」です。

人の心は変わりゆくものですから、夢中の対象はときとともに移り変わっていきます。

同じスタッフ・キャストによるドリームチームで継続的な仕事が実現していたとしても、「もっと他のことにもチャレンジしたい」と考える人も当然出てくるでしょう。

これは、

  • 観る側にとっては「新しいジャンルの映画も観てみたい」
  • 演じる側にとっては「新境地を開拓したい」
  • 制作する側にとっては「別のチームでも、あるいは別の俳優とも仕事をしてみたい」

といったものです。

実際、マーベル映画においても、一部のキャストが入れ替わっています。

たとえば、マーベル・シネマティック・ユニバースのシリーズ第1作となる「アイアンマン」(2008年)において、主人公の相棒役ともいえるローディ中佐役はテレンス・ハワードが演じましたが、第3作の「アイアンマン2」(2010年)ではドン・チードルに替わりました。

» テレンス・ハワードが『アイアンマン』降板について明かす! – リアルライブ

また、シリーズ第2作の「インクレディブル・ハルク」では、主人公のブルース・バナー(=ハルク)役はエドワード・ノートンが演じましたが、それ以降の作品ではマーク・ラファロに替わっています。

さすがに主人公が替わるのはショッキングですが、以下のインタビュー記事にもあるとおり、まさに「人の心は変わりゆくもの」です。

» ハルク役エドワード・ノートン、「『アベンジャーズ』のような映画に出たいと思わない」 – シネマトゥデイ

 このことについてエドワードは、「さまざまな理由で出演することができなかったんだ。ハルクを演じるのはとても楽しかったよ。ただ横柄だと思わないでほしいんだけど、僕はああいった種類の映画に出演することに時間を費やしたいとは思わないんだ。ほかにたくさんやりたいことがあるからね」とコメント。

 また、「スタジオは中規模の予算で、大人向けの思慮深い作品を作りたがらないんだ。そういった映画を作るのはとても難しいんだよ」とも語っており、近年リメイクや超大作ばかりとなった映画界を憂いているようだ。


引き受けたら貫き通す?

これとは対照的に、「男はつらいよ」(いわゆるフーテンの寅さん)シリーズで有名な渥美清さんは、寅さん役を貫き通すために、ほかの役のオファーを断っていたといいます。

» 渥美清 – Wikipedia

1979年(昭和54年)4月14日にNHKで放映されたテレビドラマ『幾山河は越えたれど~昭和のこころ 古賀政男~』では作曲家、古賀政男の生涯を鮮烈に演じ高い評価を得るが、新たな役柄の幅を広げるには至らなかった。

また、この時期、今村昌平監督が『復讐するは我にあり』の主役にオファーしたが、「寅さんのイメージを裏切りたくない」との理由で断っている。

1980年代以降になると、当時の松竹の思惑や渥美自身も他作品への出演に消極的になっていたこともあって、『男はつらいよ』シリーズ以外の主演は無くなっていく。

1988年(昭和63年)、紫綬褒章受章。その後は、主演以外での参加も次第に減っていき、1993年に公開された映画『学校』が『男はつらいよ』シリーズ以外の作品への最後の出演作品となった、遺作は亡くなる直前まで出演した48作目「男はつらいよ 寅次郎紅の花」。

ここまで貫き通す必要が果たしてあるのか、と胸が苦しくなる想いですが、正解はないですね。

だいぶスケールは違いますが、フリーランスで仕事をするときにも、この種の悩みは尽きません。

「ほかのフリーランスは、どうしているんだろう?」と、つい脇目が気になるものですが、自分のあり方、スタイルを信じて追求するしていくほかないでしょう。