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コンテンツの枠組みとしての概念構築 | Aliice pentagram

倉下忠憲

» 前回:概念構築について | Aliice pentagram



前回は、「概念構築」のさわりについて書きました。これまでの知的作用によって膨らませたものに、一定の「まとまり」を与えるのが概念構築です。

今回は引き続き、この「概念構築」について考えてみます。

概念≒コンセプト

おそらくですが、「概念構築」と聞くと、なにやら仰々しいものをイメージしてしまうかもしれません。「〜〜とは何か?」という難しい議論を必要とするもの、という印象です。

しかし、ここで言う「概念」は〈情報の意味的なまとまり〉程度の意味しかありません。英語で「コンセプト」と読んだ方が、しっくりくる人も多いでしょう。

その「コンセプト」は、何かしらをアウトプットし、それを「ひとにわかるかたち」にするために必要となります。

たとえば、この連載の前回の記事は、「概念構築についての導入」がコンセプトでしたし、今回のこの記事は「概念構築の理解をさらに広げる」というコンセプトを持っています。そうしたものがまったくなければ、情報は乱雑に配置され、読む人にとって理解しがたいものとなるでしょう。

ひとまとまりの「言いたいこと」を作ること、あるいは「言いたいこと」をひとまとまりにまとめていくこと。それが、コンセプト・メイキングであり、そうして作られたコンセプトは、コンテンツの枠組みとして機能してくれます。

もちろん世の中には、「コンセプトがない」というコンセプトを持ったアウトプットもありますが、あくまでそれは例外的な存在であり、「ひとにわかるかたち」にまとめるためにはコンセプトが必要です。

コンセプトの階層性

そのコンセプトは階層性を持ちます。

一冊の本は、(少なくとも)一つのコンセプトを持っています。

その本に収録されるそれぞれの章一つひとつもまた、コンセプトを持っています。同じように、節も段落も一つの文章もコンセプトを持ち得ます。〈情報の意味的なまとまり〉を有するのです。

逆の言い方をすれば、大きなコンセプトは深い階層性を持ち、その一つひとつのコンセプトを制御していくことで、はじめて表現できるものである、と言えるかもしれません。一見大がかりに見える「概念構築」ですが、一つの文章で何を言うか、という文章レベルの話は欠かせないのです。というか、それは相似的に同じと言ってよいでしょう。

この点において、「概念構築」と知的生産の五芒星の最後である「表現制御」が接続することになります。文章の制御は、概念の制御とも重なるのです。表現のための概念の構築は、それ自体が表現制御と密接に関わっていると言ってよいでしょう。

コンセプトメイキングの応用性

たった140字のつぶやきですら、言いたいことがまとまっているもの(≒コンセプトを持っているもの)と、そうでないものがあり、読んだときの印象がぜんぜん違っていることを考えれば、概念構築があらゆるアウトプットにおいて役立つのは自明です。

140字で何かを伝えるには、「この文で私が言いたいのは何か」を考え、それに合わせて文を調整することが必要です。不要な言葉は削除し、説明が必要な言葉は書き足す。そのようにして、一つのつぶやきに宿るコンセプトが形成されていきます。でもって、それは程度と複雑さは違えど、一冊の本を作るときでも同じです。

この原稿ですら、今この部分に明日の天気予報だとか、宝くじの当たりやすい買い方などが書かれていたら、その情報がどれだけ有用であっても、読み手にとっての「わかりやすさ」には貢献しないでしょう。むしろ、阻害の方が大きそうです。

あるいは私はさらに「概念構築をいかにして行うか」という話についても書こうとしていますが、今この原稿にその内容を入れるのは、コンセプトをdisturbするだけで終わりそうです。

何を盛り込んで、何を削るのかを決定付けるもの。それがコンセプトです。

さいごに

とは言え、やはり「概念構築をいかにして行うか」についても書いておきたいので、それは次回のコンセプトとさせていただきます。

▼今週の一冊:

抜群に面白いですね。創作についての考え方や実際的な話が紹介されています。小説家と小説家の対談ということで、思わぬ井戸が空いてしまっている印象。春樹さん好きならば間違いないと思います。

» みみずくは黄昏に飛びたつ―川上未映子訊く/村上春樹語る―[Kindle版]


▼編集後記:
倉下忠憲



いろいろ状況が落ち着いて来たので、次の電子書籍作りも進めています。次は実用書・タスク管理系の本になりそうです。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。


» ズボラな僕がEvernoteで情報の片付け達人になった理由