※当サイトはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。

宅配ピザのストロベリーコーンズ社の歴史と今にインスパイアされた話



大橋悦夫最近、業界大手の宅配ピザチェーンでピザをネット注文したのですが、ちょっとしたトラブルがあり、キャンセルすることに。

すでに「ピザモード」になっており、ほかの食べ物を食べる気になれなかったので、代わりに別のピザチェーンに注文することにしました。「ナポリの窯」というチェーンだったのですが、何気なく調べてみたら運営会社のストロベリーコーンズ社の歴史と今に鼓舞されました。

ストロベリーコーンズとの出会い

「ナポリの窯」という名前は以前から何となく聞いたことはありました。また、「ストロベリーコーンズ」という名前もやはり聞いたことはありました。

ただ、「ナポリの窯」と「ストロベリーコーンズ」がいずれも同じ運営会社(株式会社ストロベリーコーンズ)のブランドであることは今回初めて知りました。

それはともかく、届いたピザはけっこう美味しく、注文から配達までのプロセスにおいても特に問題はありませんでした。

その時の僕は「初めて注文する宅配ピザチェーンだし、ほかのチェーンのようにテレビCMで見たことはないから」という、数歩引いた姿勢でいました。つまり、(失礼ながら)ほとんど期待していなかったのです。

それだけに、届いたピザが思いのほか美味しく感じたということはあったかもしれません。

↓ナスとベーコンのピッツァとマヨコーンのクリーミィ仕立てのハーフ&ハーフで、トッピングにポテトサラダとアスパラを追加しています。アスパラが甘くてシャキシャキとしていてピザの味を引き立てていました。


その後、もう一度「ナポリの窯」に注文する機会がありました。今度はピザではなくパスタでしたが、これまた美味でした。

↓メランツァーネ(イタリア語で茄子)。茄子とベーコンのパスタで、「隠し味としてアンチョビの旨味を加えた化学調味料未使用のガーリックトマトソース」とのこと。ソースと麺が別々の容器で届けられます。


「なんだ、美味しいじゃないか」と、「ナポリの窯」に対する印象がぐっと良くなりました。
がぜん興味がわいて運営会社のストロベリーコーンズについて調べ始めます。

経営者は元IBMのエンジニア

最初に「へぇ~」と思ったのは、ストロベリーコーンズ社の社長である宮下雅光さんは元IBMのエンジニアだったということ。

当然、「なぜエンジニアがピザチェーンを始めたのか?」が気になり、どんどん調べが進みます。

以下、時系列で要約。

  • 1950年、宮下雅光氏誕生(北海道富良野市で生まれ → 宮城県仙台市に移住)
  • 1970年、日本IBMに入社
  • 1975年、父親の事業が傾いたとの連絡を受け、退職して仙台に帰郷
  • 同年、喫茶店を開店し、繁盛する
  • 1976年、2店舗目を開店
  • 1978年、3店舗目を開店、するも振るわずに閉店、1億3000万円の借金を抱える

ここで宮下さんは自殺を決意します。「自分が死ねば2億円の生命保険が入る」と。

奇跡の“敗者復活”、得意を活かす

このあたりについては、以下の記事のくだりが実にドラマチックなので引用します。

» 宅配ピザに特化した情報システムの構築 / ストロベリーコーンズ | 起業事例

「自動車で仙台新港に突っ込もうと家を出たところ、ポケットに手を入れたら500円が残っていた。

これから死ぬ人間がお金を持っててもしょうがないので、使ってしまおうとパチンコ屋に入ったんですよ。そうしたらいきなり大当たり。あっという間に箱が積み上がって 5万円儲かったんです。

何だ、これはと。借金のために人生を捨てた途端に、500円が100倍になって返ってきた。銭儲けばかり考えていた自分を神さまが皮肉ったような気がして、そう思ったら気分が楽になって、結局、家に戻ったんです」

その 1週間後。閉鎖した店の新しい借り手が見つかり、保証金の3000万円が戻ってきて当面の苦境を脱することができたのである。まるでドラマのような話だが、まぎれもない事実だ。この一件で宮下は、ある種の運命論者になった。「自分はまだ生かされている、まだやるべきことがある」と。

こういうことってあるのですね。

以下、続きです。

  • 1986年、ピザ宅配事業を開始(仙台にストロベリーコーンズ1号店オープン)
  • 1987年、フランチャイズ展開スタート
  • 1992年、東京進出(白金)


ここで注目すべきは、さすがは元エンジニアというべきか、1988年当時、同業者に先がけて顧客管理や経営管理にコンピュータを導入していたこと。

自社専用のもので、しかも、素人でも使いこなせるシステムを自社開発しており、このシステムが同社の躍進に拍車を掛けたと考えられます。

ここで、会社員時代の得意を活かすことができた格好です。

ストロベリーコーンズの名前の由来

以前から「ピザ宅配なのになぜストロベリーコーンズという社名なのか?」という疑問がありましたが、以下のインタビュー記事でそのユニークな由来が明かされていました。

宮下さんが苺狩りに行った折、家に帰ってから子どもたちに苺を食べさせたいということでポケット一杯に詰め込んで持って帰ったところ、家に着いたときには苺は潰れてぐちゃぐちゃになっていたと言います。

» 「ストロベリーコーンズ編」一期一会の精神で幸運を運ぶ ~ストロベリーコーンズの“不変”の哲学を知る~|外食ドットビズ

この時、「はっ」としましたね。それまでは自らベンチャーの旗手だとか言って、お金儲けの事しか考えていなかったのですよね。「水商売」だから飲食業は大嫌いだと思っていた。

でも潰れた苺を見ていると、お客様の心と重なって見えてきたのですね。苺ってハートの形をしているでしょ。しかも、苺は傷みやすく、大事に取り扱わなければすぐに駄目になってしまう。だから、お客様に対するホスピタリティを大切にしていかなければいけない。それをする事によって幸せが来るのだ。これからは一期一会の精神でお客様に接して行こうと。

この時からですね、飲食業に真剣に取組もうと考えたのは。

要するにダジャレだったわけですが、それはイチゴだけにとどまりません。

» 「ストロベリーコーンズ編」一期一会の精神で幸運を運ぶ ~ストロベリーコーンズの“不変”の哲学を知る~|外食ドットビズ

そして、コーンは「こぅん」、幸運なのです(笑)。我々は、お客様に幸運、それも“ズ”だから、沢山の幸運を運びたいという意味を込めています。

ストロベリーコーンズとは、「一期一会・幸運」というわけです。

目標は持たない

そして僕が何よりもハッとさせられたのは、宮下さんの以下のひと言です。「ストロベリーコーンズの今後についてどう考えられているかお教えください」という質問に対する返答です。

» 「ストロベリーコーンズ編」一期一会の精神で幸運を運ぶ ~ストロベリーコーンズの“不変”の哲学を知る~|外食ドットビズ

あまり考えていないんですよ(笑)。あまり目標を持たないんです。要するに発生時点管理主義ということですね(笑)。

外食の経営者は良く言うじゃないですか、「何年後に何店舗持ちたい」と。そういうことも考えたことが無いのですね。もちろん個人的に夢や目標はありますよ。壮大な夢が(笑)。

でもストロベリーコーンズに対しては、今ご注文を頂いたお客様が、美味しいと言って下さる、それだけかな。一期一会というものはそういうことでしょ。う~ん、何も無い。日々精進で・・・。何も無いです(笑)。

これはまさに、ジャパネットたかた元社長の高田明さんの考えに通じます。以下の記事で高田明さんの著書『伝えることから始めよう』を引用しています。

» 12年越しの「長期計画を立てない生き方」 | シゴタノ!

ジャパネットたかたの経営を振り返ってみると、「長期的なビジョンを持たない積み上げ経営」だったと思います。「長期計画のない経営」「目標を持たない経営」というテーマで講演したこともあります。計画性はほとんどなかったんです。

私は5年先、10年先の自分や会社の姿を思い描いたり、目標を立てたりして、それを達成するために今なすべきことを考えるという方法はとりません。そもそも5年先に何をしたいか、どうなっていたいか、ということすらあまり考えません。半年先、1年先のことも考えないんです。

軸足を置いていたのは、とにかく「今」です。今できることに最善を尽くす。そこから、次のステップが見えてくる。最善を尽くす中で次のステップが見えてきたら、スモールステップで次に進む。その繰り返しで成長を続けてきました。目標と呼べるようなものがあったとしたら、それは、とにかく昨日よりも今日、今日よりも明日、今年よりも来年と売上を伸ばし、成長していくという強い想いでした。(p.231)

高田明さんにしても、今回の宮下雅光さんにしても、とにかく「今」なのですね。このあたりは上記の記事にも載せましたが、ブックライターの上阪徹さんの以下の言葉がやはり本質を突いているのだと改めて思わされます。

» 正社員から無職、アルバイト、そしてフリーランスへ……ブックライター、上阪徹さんに聞く「仕事がないときの仕事の作り方」

成功者には、自分の未来をプランニングしていたという人は、意外にもあまりいませんでした。とにかく目の前のことを懸命にやっていた人が多い。

それは僕自身もそうでした。将来のことなど考えず、今やるべきことを必死でやる。それこそ不確実性を楽しみ、自分を信じて目の前のことをやることで、その時々のベストな場所に連れていってもらえると思っていました。

むしろ先に未来のイメージを固定してしまうと、意識に制限がかかってしまい、そのイメージまでしか到達できない。だから、未来は描かない方がいい、と。実際、びっくりする未来が待っていたんですよね。


まとめ

以下の記事で「ギャップを乗り越えてきた人に注目する」という視点をご紹介しました。

» 「こうすれば成功する」は本当か? むしろ・・・ | シゴタノ!

「こうすれば成功する」という“ノウハウ”より「こうすると失敗する」という“事例”のほうがやはり入ってくるものがあります。

「誰でも簡単に儲かる方法」より「簡単には儲からなかった誰かの方法」を知ったほうが役に立つ、と思うのです。

余談:キャンセルの経緯

本題から外れるので余談としますが、気になっている方もいるかも知れないので、最初に注文しようとしたピザチェーンのトラブルについて経緯を書いておきます。

業界最大手の某ピザチェーンで、それまでも時々注文していました。

せっかくなので「このチェーンで話題になっているのおすすめのピザが食べたい!」ということで、いろいろ調べて「これかな」とピックアップしたピザを注文していました。

ただ、注文したタイミングが注文受付前で、「予約注文」という形で配達時刻を指定していました。

ところが、ほどなくして配達店舗から電話がかかってきて、「注文したピザは取り扱いを終了しているので、別のピザを注文して欲しい」と言われます。

注文受付前だったせいか、販売サイト上の商品の入れ替えが完了していなかったらしく、注文を受けられない商品がまだ注文できる状態だったようです。

「このピザを食べたい!」という、自分としてはけっこう高めのテンションで臨んでいたこともあり、それが注文できないと知って精神的なダメージも大きく、また「注文の修正という操作ができないので、もう一度最初から注文手続きを行って欲しい」と畳みかけられます。

  • 注文を受けられないなら注文できないようにしておいて欲しかった…
  • もう一度同じような注文操作を繰り返すのは釈然としない…

といったモヤモヤが収まらず、キャンセルさせてもらうことに。

電話を切りながら、「あぁ、自分でも誰かをこういう残念な気持ちにさせてしまうことって、あるよな」と心が痛くなりました。

奇しくも、宮下雅光さんは次のようなことを述べています。

» 「ストロベリーコーンズ編」一期一会の精神で幸運を運ぶ ~ストロベリーコーンズの“不変”の哲学を知る~|外食ドットビズ

加盟店希望のオーナーさんから最初に良く聞かれるのが、「いくら儲かりますか?」と言うことです。それに対して、私は「儲かるなんて言えないですよ」と答えています。いや本当に儲からないと言う訳ではないですよ(笑)。

まず、このビジネスをやる上で何が一番大切な事なのかをわかって頂きたいのです。それは、儲けることよりも、お客様に喜んでいただくことなのです。それが、当社の理念ですし、それにご賛同して頂けないと一緒にやっていくことが難しいと考えています。それに儲けるのは自分たちの努力ですからね(笑)。

でも、当社の理念にご賛同いただける方には、「損をしない方法は伝授します」と言っています。良い見本がここにいるじゃないですか(笑)。自己破産目前で、天国も目前だった経験がある(笑)。

それと、損をさせないことが我々の責任ですから、そのために地図情報とかカメラ連動とかITテクノロジーを駆使してシステムを開発しているのです。

この「損をさせないことが我々の責任」というひと言がずしんと胸に響きました。

参考記事・文献

» 株式会社ストロベリーコーンズ(公式サイト)
» 宅配ピザに特化した情報システムの構築 / ストロベリーコーンズ | 起業事例 | 起業・開業・独立・会社設立ならドリームゲート – ベンチャー・起業家支援サイト
» 「ストロベリーコーンズ編」一期一会の精神で幸運を運ぶ ~ストロベリーコーンズの“不変”の哲学を知る~|外食ドットビズ
» 12年越しの「長期計画を立てない生き方」 | シゴタノ!
» 「こうすれば成功する」は本当か? むしろ・・・ | シゴタノ!

» 伝えることから始めよう[Kindle版]