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タスクシュートでGTDを実践する



佐々木正悟 Getting Things Done(以下GTD)は米国発のもっとも有名な仕事術の1つ、といってもいいすぎではないでしょう。

その方法論の中でも有名なのは「気になることを書き出す」に始まるテクニックです。

その後に刊行された分厚い改訂版を読み通し、なんとか「GTDを実践して仕事を効率よくさばいてストレスフリーを実感したい」と心に秘めている方もいらっしゃるかと思います。

正直に言ってしまうと私は、GTDの本を読み通すだけでも苦労するクチです。

書かれていることそのものがどうもしっくりこない。

しかも、各節の途中で話が未解決のまま、放置されているような印象を受けるのです。

蛇足になりますが、一時非常にホットになった勝間和代さんの一部の著書にもそういう印象を受けました。

私は、たぶんそうは見えないかもしれませんが、実は勝間さんのひそかなファンの1人で、もっと強力な個性に任せたビジネス書をガンガン出してくれればいいのに、と思っていたりします。

そうである一方、私は性格的にやや粘着的でしつこいところがあるため、なんとなく話が未解決のまま「次にいきましょう」的なコンテンツ運びに共感できないのです。



けっきょく私の性格としては、GTDよりもタスクシュートがしっくり来ます。

が、家にGTDの本は置いてあるし、しかも分厚い仕事術の本には興味をそそられる。

いろんなことが書いてあるこの本を、どうにかもう少し活用したい。

そこで、GTDの、私からすれば「未解決のまま放置されている」ような部分を、タスクシュート的な切り口で徹底的に追求してみたら、面白いことが見えてくるかもしれない。

そんな思いから実験的に始めてみたことを、この連載で共有していきたいと思います。

「把握する」ために必要なこと

ではまず、かの有名な「気になることを洗い出す」から始めたいわけですが、実はこの項目からして、本の何カ所かに分散してしまって、しかも見出しに「把握する」と書かれていたりします。

「把握する」でももちろんかまわないのですが。

GTDによると「把握するためには気になることのすべてを集めることが必要」とあります。

タスクシュートユーザーとしてはここから早くもひっかかるでしょう。

「集めるといっても、いったいどこに集めるのか?」

「1カ所に集める」ことができれば理想的ですが、それはまったく現実的ではありません。

TaskChuteにせよ「たすくま」にせよ、そのリストに気になることのすべてを入れてしまったら、かなり扱いが面倒になります。

実際、GTDの本にも「把握するためのツール」がけっこうたくさん登場しているのです。

  • 書類受け
  • 手帳やノート
  • 電子機器のメモ帳・音声記録ツール
  • メール、テキストメッセージ

(p.62)

このすぐ後に「インボックスの数は最小限にとどめる」(p.65)とあります。

「一元化」と書いていないあたりが、好感度アップです。

一元化など、無理なのです。

現実問題として、「書類受け」に入ってくるのは封筒や小包ですし、音声記録ツールにはもしかすると1時間もの録音ファイル、その他にメールです。

これらを安易に「一元化しましょう」とか、あまつさえ「アナログノートだけにまとめましょう」といったりするのは、犯罪的です。

とはいえ、一元化は無理でも、一元化を志向する方向性を保持しなくてはなりません。

メール、テキストメッセージとありますが、これらは増える兆しがあります。

チャットワークやスラックなど、新しくサービスを提供してくれるサービス提供側は、代わりにGmailを滅ぼしてくれるわけではないのです。

ここまでだけでも、少なくともタスクシュート式でやり抜くためには、次のことを実行する必要があります。

  1. インボックスをいくつかに限定する
  2. インボックスを回遊して、そのなかから「処理するべきもの」と「保存するべきもの」と「捨てるべきもの」に分ける(デーリールーチン)
  3. 「捨てるべきものを捨てる」(デーリールーチン)
  4. 「処理するべきもの」を「今日の処理」「明日の処理」「その後の処理」に分ける(デーリールーチン)
  5. 「保存すべきもの」の保存方法を決め、保存する日時を決める(デーリールーチン)
  6. 「今日の処理」タスクを実行する(デーリールーチン)
  7. 「保存すべきもの」の保存日時が今日であれば保存方法に従って保存を実行する(デーリールーチン)


「インボックスの数は最小限にとどめる」ために

上のことは、現に私が連日行っていることですし、仕事をしている大半の人が何らかの形でやっていることですが、書いてみるとけっこうな時間をくいそうです。

時間をくうのはプロセスごとに「区別」「実行タイミングの決定」「実行」「実行後の整理」が含まれているからです。

それでも、タスクを拾い上げる対象である「インボックス」が把握できていて、そのインボックスを毎日でないにせよルーチンチェックできているなら(すなわち「回遊」できているなら)悪い状況ではありません。

「悪い状況」はインボックスの数が増えるほど悪化します。

とくに、「手帳やノート、電子機器のメモ帳・音声記録ツール」あたりは要注意で、これに付箋を付け加えれば、この種のインボックスはいくらでも増えうるのです。

しかも悪いことに、いわゆる「気になること」というのは、頭が勝手に気にしているだけとも言えるわけですから、メールの受信トレイに入っている問い合わせと、まったく同じことを「気にしてメモ書きしている」という「二重タスク」を生み出します。

つまり、私は強く思うのですが、「手帳やノート、電子機器のメモ帳・音声記録ツール」といった「頭からメモへ記憶を追い出す」部分でこそ「一元化」をはかるべきなのです。

この中で、最後に残るのはたぶん、手描きのメモとデジタルメモです。

本気で一元化するならば、どちらかを選ぶ必要があります。

となれば、今スマホを手放すことは現実的でないのですから、デジタルメモに一本化するべきでしょう。

ここで簡単に拒否反応から思考停止してしまう方が少なくないのですが、デジタル一本でのメモは容易です。

「デジタルメモでは思考が制約される。

自由でのびのびとした発想のためにも手描きが一番いい」というのは、結論が先にあるように思えて仕方ありません。

なんにせよ、インボックスが「2つ」と「1つ」とでは雲泥の差なので、デジタルへの一本化にトライしてみるのをオススメします。

▼編集後記:
佐々木正悟



以上から実践できることは、2つにまとめられます。

  1. 物理・デジタルすべてにおけるインボックスを把握し、ルーチンを君で処理する
  2. 頭からの出力はデジタルメモへ一元化する

これだけでも多少の時短になるでしょうし、「気になること」はずいぶん減るはずです。維持できれば、ストレスから解放される実感が得られるでしょう。

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