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Mac 上で Windows を動かすのは本当に便利?

By: Robert HawkesCC BY 2.0


堀 E. 正岳「そろそろ Mac を使ってみたい。でも Windows も使いたい」そんな人もきっと大勢いるのではないでしょうか?

Mac を買うかどうか悩んでいる Windows ユーザーがまず検討するのが、BootCamp を利用したデュアルブート、あるいは VMWare や Parallels Desktop といったWindows を Mac 上で動かす仮想環境だと思います。でも正直な話、仮想環境ってどれだけ便利に使えるのでしょうか?

私は以前から VMWare Fusion 2 と Parallels Desktop 4 を比較しながら利用していましたが、ちょうどここ2週間で VMWare Fusion 3 と、Parallels Desktop 5 の発表がありましたので、その新機能の紹介とあわせて、「ここだけの話、仮想環境ってどうなの?」という疑問にお答えしたいと思います。

 

VMWare Fusion3 と Parallels Desktop 5

よく聞かれるのが、VMWare FusionParallels Desktop のどちらがよいか? という質問です。実際に仕事で利用する場合に重要なのは:

  1. Office などの Windows のアプリケーションが Mac 上で便利に動くか?
  2. Mac / Windows 間のデータのやりとりが簡単か?

という2点だと思いますが、この両方の点について VMWare Fusion と Parallels Desktop も、後述する制限内においてほとんど同等の機能を提供してくれているといっていいと思います。VMWare Fusion では「ユニティモード」、Parallels Desktop では「コヒーレンスモード」と呼ばれる機能によって両者ともまるで Windows アプリが Mac 上で動いているかのように動作しますし、通常仕事で利用されるような Office アプリ、ブラウザといったものならば問題なく利用できます。私は Mac 版の Chrome のベータ版がリリースされていなかったころは、Parallels Desktop 上で Chrome を利用していたほどです。

今回の新しいリリースで、VMWare Fusion と Parallels Desktop の両者が Windows 7 対応、Snow Leopard の 64bit 対応、Aero エフェクト対応を果たすと同時に、さらなる高速化を実現しています。また両方とも OpenGL 2.1、DirectX 9.0c に対応して、グラフィックスが要求されるアプリの今まで以上に動作するようになりました。

さわってみて面白かったのは Parallels Desktop の Crystal モードで、Windows のアプリケーションが Mac のデスクトップ上にシームレスに表示されるだけでなく、Dock にもアプリが表示されていますので、使用感も含めて Mac テイストになるという機能です。

crystal.jpg

また、フルスクリーンモードで Windows のデスクトップの左上にいくと日めくりカレンダーをめくるようなアニメーションで Mac 側に移行できるのもみていて小気味よかったです。

機能も性能も拮抗している2製品ですが、こちらのレビュー記事でも、実際にさわってみた印象でも、僅差で Parallels Desktop の方が若干速度と機能が充実しているのではないかという気がしています。

もっと細かい比較をしてから決断してみたいという方は、こちらのページに非常に詳しい比較がされていますので、自分の好みもあわせて検討してみてください。

 

じゃあ、実際仕事で使うにはどうなの?

ここからが、普通の IT 記事では読めない私流のレビューになるのですが、では実際に VMWare や Parallels Desktop を利用して Mac と Windows の境目を意識しなくて良いほどに仕事ができるようになるのか? というと、それなりの準備をしないかぎり答えは No だと私は思っています。

メモリは 4GB では足りない

VMWare や Parallels Desktop のような仮想環境を使う場合、現時点で CPU のスピードは MacBook Pro のようなノートブックでも十分になりつつあります。問題なのはメモリで、多くのユーザーが搭載している 2-4 GB ではあっというまにメモリがなくなり、スワップアウトが常に起こるために HDD が常に読み書きされ、全体の動作がもっさりとしてきます。

たとえば我が家の iMac の場合、Windows Vista を起動するのに平均的に4分、ログインするのに3分という時間がかかり、疲れているときなどはログイン前にうたた寝をしてしまったことさえあります。大きなアプリを起動した場合にの待ち時間も秒単位というよりは分に達することが多く、貴重な時間が少しずつ、少しずつ失われていきます。

これらすべてがメモリ不足が主な原因で、404 Blog Not Found で小飼弾氏も触れられていますが、仮想環境をストレスなく乗りこなすには 8GB のメモリは必須なのではないかというのが私の経験です。

仮想環境ならではのトラブル

こうしたときのために、BootCamp を利用して Mac で Windows をブートできるようにしておけば、快適な Windows 環境を楽しむことができます(ゲームなどもほぼ問題ありません)し、BootCamp パーティションを VMWare/Parallels Desktop 側からブートするようにすることで使い分けが可能です。

しかしこうしたインストールをした場合、BootCamp あるいは VMWare/Parallels の環境を立ち上げたとたんに Windows の再アクティベーションを求められるなど、仮想環境ならではの壁にぶつかることがよくあります。

こうした再アクティベーションは Microsoft のサポートセンターに電話をするなど、特殊な解決方法が求められることですので、私のようなギークは楽しみつつトライしますが、トラブル解決に慣れていない人には頭が痛いかもしれません。

もう一つ注意しなくてはいけないのは、仮想環境とはいえ Windows がインストールされているということは、これまで Mac OS X を利用していて想定していなかったウィルスやマルウェアに対する対処をおこなわなくてはいけないという点です。一つのコンピュータに2つの環境が共存しているからといって、管理は一台分ではすまない、というのが仮想環境の「隠れたコスト」です。

 

Mac 初心者には何がおすすめ?

仮想環境は「安心のための投資」などとよく言われます。Windows 環境から Mac OS X にいきなり飛び込んだときに、それまで使っていたアプリケーションが急に使えなくなっては困る、そんなときのための保険として利用する人が多いことのあらわれかもしれません。

しかし Mac 上で真剣に Windows との連携を行いたいと思っているなら、初期投資としてメモリを最大限搭載することを躊躇してはいけないといえそうです。たしかに数万円分高価になってしまいますが、Mac 環境と Windows 環境の両方の動作がもっさりとすることで失われる時間と積み上がるストレスをなくすることができるなら、十分見合う出費です。

幸い、最新の iMac は CPU スピードもさるものながら、8GB へのメモリアップグレードもこれまでに比べて格段に安くなりました。年末に Windows からスイッチしてみようと考えている方は、ぜひこうした「仮想環境」の使用感も検討項目に加えて、楽しく悩んでみてください。
 

 
 
▼最近気になっている一冊:

最近訳者の方からクリス・アンダーソンの「フリー」を献本いただいたのですが、実は私はすでにこの本を Audible.com から英語の原本で手に入れていました。しかもフリー(無料)で。

なぜ無料でオーディオブックを配るのか? なんでそれでビジネスになるのか? と普通の商売をしている人には不思議に思われるかもしれません。しかし提供するプロダクトの対価としてキャッシュフローを作るのではなく、その二つを戦略的に「ずらす」ことで、無料がビジネスになり得るということを示した本書にふさわしい提供方法だったといえそうです。

いまあなたが読んでいるシゴタノ!も一種の「フリー」なコンテンツです。私のブログもすべての文章がフリーで、しかもコピーと配布が可能なライセンスで提供されています。なぜフリーが合理的なビジネスになるのか、ネットに足を踏み入れている人なら誰でも興味をもつのではないでしょうか?

本書はページ数も多いハードカバーの本ですが、いま世界に起こっている変化の大舞台へ一気に読者を引き込んでくれますので、きっと気づかないうちに読み進んでいることでしょう。

読み終えたら、二度と「0」という値札を同じ気持ちで見つめることはできなくなる一冊としておすすめです。

フリー~〈無料〉からお金を生み出す新戦略
クリス・アンダーソン
日本放送出版協会 ( 2009-11-21 )
ISBN: 9784140814048

 

▼編集後記:
堀 E. 正岳
ついに先日、親切な Twitter のフォロワーの方に Google Wave に招待いただき、佐々木正吾さんとともに二人で Wave 上で対談原稿を執筆するなど、活用方法を模索しています。

Google Wave は参加者が同時に書き込めるマルチメディア・チャットのようなもので、二人で Skype で声を掛け合いつつ同時に一つの文章を作り上げてゆくのはなんだか不思議な感覚です。私だけの言葉ではなく、佐々木さんの言葉だけでもなく、まるで二人が合体したような雰囲気が文章から出てきて、なるほど、これは文章作成を「会話化」してしまうツールなのだと納得しました。

シゴタノ!メンバーも Wave に招待しましたので、いずれ Wave 上でバトルロイアル状態で記事を書いても面白いかも? 最後に立っているのは誰だ!?

佐々木正悟 堀 E. 正岳 新井ユウコ 大橋悦夫

 

▼堀 E. 正岳:
「これからMacを始めたい人」を徹底ガイド。Lifehacking.jp主宰。