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イヤな出来事に前向きになれない時には…

By: TechCrunchCC BY 2.0


佐々木正悟 ビジネスパーソン向けの本といえば、昨今、ビジネス書という定式が整いつつありますが、言うまでもなくそれには功罪両面があります。

だいたい、人が真剣に何かを必要としたとき、自分向けとされるコーナーに必要なものがないのは、よくあることなのです。私自身、真剣に悩み出してしまったら、児童書コーナーに足を運んではいられないと、小学2年の時に思いましたし、こんなに真剣に悩んでいるのに、どうして思春期向けの本というのはこうなんだろうと、中学生のころには怒りを覚えました。

思春期というのは怒りっぽくなるものです。

こういう本が一時話題になりました。

» 憂鬱でなければ、仕事じゃない (講談社+α文庫)[Kindle版]


確かに言わんとすることは分かりましたし、「ビジネスパーソン向けのビジネス書コーナー」にこうしたタイトルが並ぶというのは、どちらかと言えば歓迎すべきことかもしれません。

とは言えこのブログ「シゴタノ!」は「仕事を楽しくする研究日誌」です。上記のようなベストセラーのタイトルが「仕事についての結論」であれば、このブログの存在意義がゆらぎかねません。

…と、少し前に、私は少し悩んだのです。

そういう私がビジネス書コーナーへ足を運んでも、ブロガー向けの書籍を眺めても、いまひとつこれと言った本に巡り会える可能性は低い。そんなときには「ふと」、行動が変わるものです。私は妻の書棚を漁っているうちに、福祉関連の名著を思い出しました。

» 「ゆらぐ」ことのできる力―ゆらぎと社会福祉実践


「うまくいくやり方」ではすまないとき

何事かがうまくいかないとき、私たちはまず、うまくいくやり方を検討します。これは当然です。

福祉の世界でも、カウンセリングを目指す人でも、やはり教科書やマニュアルは読みます。というよりも、そういうものをたくさん読みます。そこには「うまくいく方法」が当然、書かれています。わざわざ「うまくいかない方法」を書く理由は何もありません。

しかし当然ながら、そういう方法を実行するだけで、うまくいくはずがありません。

そもそも、非常に難しい問題がそこにあるからこそ、それになんとしてでも対応するための職業があるわけで、誰でも簡単にできそうな方法ですんなり解決するなら、そんな教科書自体が存在しなかったはずです。

だから「ゆらぐ」のです。揺らぐというのは、危険なことです。でも揺らぐことがないなら、それでは仕事をしていることにならないような、仕事である。こういう問題に正面から切り込んでいる本は、決まってよい本なのです。

「障害をもつ私など、生きる価値のない人間です。もう放っておいてください」
「困難に負けないよう、懸命にがんばりました。でも、もう疲れ果てたのです」

たとえばクライアントにこのように言われたカウンセラーの答えとして

  1. 「そんなこと言わずに、いっしょにがんばりましょう」と励ます。
  2. 「私はあなたが充分生きる価値のある人だと思います」と伝える。
  3. 「どうして、そんな気持ちになるのですか」と尋ねる。
  4. 「生きる価値がないと思うくらいつらいのですね」と共感を伝えようとする。
  5. 「あなたは今、自分を生きる価値のない人間だと感じているのですね」と返す。
  6. 何も言葉を返さず、しばらく沈黙を共有する。

 これらが頭に浮かぶ。しかし、ここでも、どの言葉や態度を伝えるかを決めることは難しい。どの方法にも一長一短があるからである。

 たとえば「(1)がんばりましょう」「(2)あなたには価値がある」と励ます方法もある。しかし、これらの言葉には援助者の無理や嘘がどこかにひそんでいると感じられることもある。「放っておいてほしい」に対して「がんばりましょう」と伝えるのは、クライエントの重大な発信から「身をよけてかわしている」ようにも思えるからである。

 (略)

 こうして、援助者は葛藤しつづける。「(1)という関わり方もあれば、(2)という援助の方向も誤りとはいえないし、(3)という伝達方法も思いつく」、あるいは「なかなか適切な関わり方を絞り込むことができない」などと迷う。ときには、判断することのできない自分にうろたえたり、焦りや無力さを感じることもある。これらが援助者に生じる「ゆらぎ」である。

「まえがき」からもうこうなのです。

ただ、こうした「大変な世界の話」を読んで、「大変だな」と思うのは自然ですが、だからといって過度に深刻に読むことが必要だとは思いません。ビジネスパーソンだって、大変さの毛色は違いますが、けっこう大変です。出版業界も大変ですし、そこに生きるのもやっぱり大変です。

しかし私たちはべつに、自分の大変さを切々と訴えて、そういう大変さを他人にも思い知ってもらいたいとは、そんなには思わないでしょう。

少なくとも「それだけ」ということはないはずです。まして一冊の本を通じて「ただこの世界の大変さを知ってもらいたい」だけということはない。

どんなに大変な世界でも、人間は、いろんな知見を駆使して問題解決能力を発揮するものだということを、面白い本はリアルに伝えてくれるものです。

そういう本が、私は「いいビジネス書」だと思うわけですが、いいビジネス書は、意外なところでみつけられるものです。

すくなくとも、「ゆらぐことのない著者による、ゆらぐことのない法則」ばかり読んでいては、自分のことは無視されている感じがして、孤独感が募りはじめます。そうなったときには、違った畑で「いい本」を探してみるのもひとつの方法です。

» 憂鬱でなければ、仕事じゃない (講談社+α文庫)[Kindle版]


» 憂鬱でなければ、仕事じゃない (講談社+α文庫)


» 「ゆらぐ」ことのできる力―ゆらぎと社会福祉実践


▼編集後記:
佐々木正悟



ライフハック@マインド 2016年7月23日 – こくちーずプロ(告知’sプロ)

久しぶりに「心理ハックセミナー」開催します。テーマは「大事なことを先送りしつづけないために」です。

もちろん私達は皆忙しいので、大事であっても、大事でなくても、いろんなことを先送りしなければならないのですが、「何もかもを先送る」のはやめにして、「これというものだけでも先送りしなくなる」方法を考えます。

ゲストにF太さんをお招きします。パネルディスカッションを通じて、実際にF太さんが大事なことの先送りをどうやって防ぐことができたのかを、伺います。