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説明とは何か? 説明のための4つの方法

大橋悦夫わかりやすい説明が常に求められています。では「わかりやすい」の「わかる」とは何か? そもそも「説明」とは何か? この2つが明確になれば、世の中から誤解や停滞が減るであろうに、と思っています。

この2つについて明快に説明してくれているのが『プロSEが教える! 自分のアタマの中を伝える技術』という本です。

結論から紹介すると、以下の通り。

説明とは

  • 1.「わかる」とは、複雑な現実の中から、あるパターンを見出すこと。
  • 2.「説明」の目的は、自分が見出したパターンを、他人にも見つけ出してもらうこと。
  • 3.人間は、いったんパターンが見えてしまうと、もはやそのようにしか見えなくなる。それが「ものの見方」。
  • 4.説明は、文章だけでなく、図や式のほうがわかりやすいこともある。

(p.88)

「説明」とは発見のシェア

まず、「わかる」については「あるパターンを見出すこと」とされています。これは「発見」と呼ぶことができるでしょう。

この時、頭の中で何が起こっているか? 人によるかもしれませんが(※)、僕自身にとっては何か複雑な迷路の通り抜け方が「見えた」ときが「わかった!」であり、従って「発見」とはこの「迷路の通り抜け方」がビジュアルイメージとして頭の中に思い浮かぶことを指します。

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photo credit: FutUndBeidl via photopin cc

※こうしたビジュアルイメージがいっさい思い浮かばず、あらゆる発想が言葉を介してやってくるという人もあるようなので…。

一度「発見」が得られさえすれば、あとはこのイメージを人に見せるだけです。イメージそのものを見せることができなくても、その描き方を伝えることで、同じイメージを相手の頭の中に再現してもらうことができます。

とはいえ、同じイメージを見せても、異なる解釈をされれば別の「わかる」に辿りついてしまうかもしれません。「誤解」と呼ばれるものです。

この「誤解」を防ぐにはどうすれば良いか?

「言葉の説明」と「意味の説明」

本書では、説明を大きく2つに分けています。「言葉の説明」と「意味の説明」です。

» 「言葉の説明」とは?

言葉の説明とは、相手も対象を知っているが、それをどういう言葉で表現すればいいかわからない時にすることです。この場合は、対象のすべてを説明する必要はなく、相手が何を言っているのかを推測できる特徴的な事柄だけを述べればいいので比較的簡単です。たとえば「雪」という言葉を説明するには、「冬に空から降ってくる白いもの」と言うだけで、雪を知っている人ならばわかってもらえます。(p.98)

» 「意味の説明」とは?

では、雪を見たことのない人に「雪」を説明するには、どうすればいいのでしょうか。これについては後で述べますが、重要なのは、「冬に空から降ってくる白いもの」というのが「雪」の説明のすべてではないということです。一文程度で言えるようなことは、意味の説明にはなっていません。意味を説明するということは、もっと難しいことなのです。(p.98)


「意味の説明」のための4つの方法

「誤解」が生じるのは、「言葉の説明」ではなく「意味の説明」においてです。この「意味の説明」をする方法が4つ紹介されています。

  • 1.例を挙げる・実物を見せる
  • 2.イメージを伝える
  • 3.意味の境界を定義する
  • 4.目的や機能を述べる

どの方法も一長一短があり、1つだけでは十分というわけにはいきません。この4つの方法をバランスよく組み合わせて、言葉を説明することが必要です。(p.101)

ということで、詳細は割愛しますが、それぞれの長所と短所を挙げながら「誤解」を防ぐための説明の手順が、まるで詰め将棋のように鮮やかかつ理路整然と「説明」されています。

このように優れた「説明の書」である本書ですが、8年前の2008年に刊行された本で、発売された年に読んで以来、折に触れて読み返している一冊です。すでにAmazonに在庫はなく、カスタマレビューの投稿数もいまだにゼロ(本記事投稿時点)なのですが、もっと多くの人に読んでいただきたいと思って、取り上げました。

特に、「意味の説明」を仕事にしている人には必読です。


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