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Evernoteを「使える」ようになるには



倉下忠憲はじめてEvernoteに触れて、ぱっと使えるようになる人と、そうならない人がいます。

で、その差ってどこにあるのかなと考えてみると、一つ思いつくことがありました。

それは、知性の差とかそういうことではなく、単にEvernote以前に記録を日常的に使っていたかどうか、というシンプルな要素です。

Evernoteを「使う」ために必要なもの

Evernoteは、簡単に言えば「記録を扱うツール」です。言い換えれば、記録を作り、記録を使うためのツールです。

たとえば、Webクリップで考えてみましょう。どこかのページをクリップすると自分用のノートが(つまり記録が)作られます。そして、後で必要なタイミングでそのノート(記録)を引っ張り出し、何かしらに使うわけです。小さい規模ではありますが、「記録」が作られ、使われています。

だからEvernoteを「使う」ためには、二つの要素を持たなくてはいけません。

EvernoteTech.001

すでにノートや手帳、あるいは情報カードを用いて日常的に記録を使っている人は、二階の部分は把握しています。あとは、それをEvernoteに置き換えれば済むので、スムーズにEvernoteを使い始められます。さらに、Evernoteの操作方法や機能についても、自分が使う分だけを把握していれば十分で「すべての機能をマスターする」という意気込みは必要ありません。

しかし、日常的に記録を使っていない人がEvernoteを使おうとすると、この二つともに取り組まなければなりません。しかもたいていは、操作方法や機能から学ぶので、自分が使わないような知識まで吸収してしまい、お腹いっぱいになる可能性があります。結果として、

「で、これで何をするんだ?」

という状態になってしまうわけです。

ベースとなる感覚

実はあらゆるライフハックの基礎は、この「記録を使うこと」にあります。たとえば、身近なタスクリストを作ることだって、立派な記録の利用方法です。リマインダーやアラームの利用、ノート術や手帳の使い方も、すべては記録の力が鍵を握っています。

でも、そんなに大げさに考える必要はありません。

「記録して残しておけば、後の自分がちょっと便利になるかもしれない」

と感じたものを、適切な形で保存しておき、それを後から利用するだけのことです。

たとえば、「カレンダーに予定を書き込む」ことは多くの人が実践されているでしょうが、一番わかりやすい記録の使い方かもしれません。人によってはその対象が、予定だけでなく、アイデア・レシピ・チェクリスト・タスクリストと広がっていきますが、根本的な感覚は同じです。

「記録して残しておけば、後の自分がちょっと便利になるかもしれない」

とりあえず、で

となると、「じゃあ、記録を日常的に使ってこなかった人が、Evernoteを使い始めるときにはどうすればいいのか?」という疑問が当然発生します。

まっすぐに考えれば「記録の使い方から身につける」がその答えとなるでしょう。で、どうやったらそれを身につけられるかと言えば、逆説的なようですが、実際に使ってみるしかありません。

「記録して残しておけば、後の自分がちょっと便利になるかもしれない」

は知識ではなく感覚です。だから、体験することでしか得られません。よってどのような用途であれ、とりあえずEvenroteで「記録を扱って」みることがスタートラインとなります。それを繰り返していけば、「なるほど、記録を残しておけばこういう役に立つのだな」という感覚が染みこんできます。

ただし、注意することがあります。それは記録して残すものは「使う情報」にすることです。

先ほど「記録の扱い」を、記録を作ることと、使うことの二つに分けましたが、高機能なEvernoteは記録を作ることは簡単にできます。ときにワンクリック、ときに自動処理で記録を作れるのです。でも、そうして残した記録も、後で使わないものであれば、「情報を扱う」ことはできません。

使わない情報をどれだけ記録し続けていっても、「記録を扱う」感覚は身につけられないでしょう。

だから、最初は日常的な使い方から始めてみるのが良いでしょう。いきなり「すごいこと」をやろうとしても、記録を扱えるようにはなりません。むしろ、ごく当たり前のような、それでいて自分が必要とする情報(たとえばウェブクリップ、たとえばアイデアメモ、たとえば時刻表や地図の保存、たとえば料理のレシピ)からスタートする方が「記録を扱う感覚」は身につけられそうです。

さいごに

Evernoteを使えている人とそうでない人の差は、Evernoteに関する知識量ではありません。日常的に記録と付き合っている感覚の違いです。

もちろん、日常的に記録を使っている人でもEvernoteは使わないという選択はあるでしょう。ただ、Evernoteとの距離を縮めるためにはその感覚は不可欠なのかもしれません。

▼参考文献:

以上のような観点から「Evernoteを使えるようになる」ために書かれた本です。書かれた、というか私が書いたんですが。

ストーリーパートでは、主人公がことごとく「よくある失敗」を体験してくれるので、Evernoteにあまり馴染めていない方に役立つ内容になっています。

» ズボラな僕がEvernoteで情報の片付け達人になった理由


▼今週の一冊:

世の中には「知能を上げる」と謳われるものがありますが、その大半は科学的な効果が実証されていません。だったら、そんなことは夢物語なのか? ということに著者自らがチャレンジしているのが次の一冊。

単純な脳トレ本ではなく、「脳をトレーニングするとはどういうことなのか?」についていささか難しい話も展開されています。そもそも「知能をどのように測定するのか」「何が上がれば知能が上がったと言えるのか」すら難しい問題です。そのあたりの科学的な議論も紹介しながら、著者はさまざまな「脳トレ」を吟味し、自らのトレーニングへと組み込んでいきます。

さて、著者の知能は上がったのでしょうか……。

» 知能はもっと上げられる : 脳力アップ、なにが本当に効く方法か


▼編集後記:
倉下忠憲



合同の電子書籍マガジンを作ろうと思っているのですが、それ以前に「月くら」計画が二冊ほど遅れているので、そっちに注力します。電子書籍マガジンの方はぼちぼち進めていく予定です。あと、「Honkure」という冗談みたいな名前の、書籍総合サイトを始めました。こちらもよろしく。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。

» ズボラな僕がEvernoteで情報の片付け達人になった理由