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『整理HACKS!』-進化したライフハック

本書は、2006年7月に発売されて大きな反響を呼んだ『IDEA HACKS!』の、2009年バージョンだと私は思いました。その辺りを意識してのことかどうかはわかりませんが、一貫して統一していた装丁も大きく変わっています。その意味では、3年ぶりの大幅改訂、という楽しみ方もあるでしょう。

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整理HACKS!―1分でスッキリする整理のコツと習慣
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とはいえ中身についてはこれまでのシリーズ同様の「ルール」に則って書かれています。89(ハック)のライフハックスが、いくつかの「ハックス」の下にサブカテゴリー化され、それらを束ねている「ハックス」は章タイトルになっているという形式です。ただし今回は、89のライフハックスに1足されて89+1。相当の思い入れがあったらしきその+1のハックは、このエントリの最後の方で紹介しましょう。

さらに他のシリーズと同様に、各章ごとにまとめられたライフハックスは、一つの基本的な「設計思想」に基づいて、考案されたものになっています。その基本となる設計思想は、各章の最後に述べられています。今回はこれらを紹介することにします。これをおさえておくことによって、著者の設計思想に沿った自分流のライフハックスを、自分で編み出すこともできるので便利でしょう。この辺りの考え方は、先日の大橋さんのエントリにおける「面倒感度を磨く」という発想にも通じています。さらに、小山さんの以下の書籍にも詳しく書かれています。

ライフハックのつくりかた ライフハックのつくりかた
小山 龍介

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第1章 データ収集とアクセス分散

野口悠紀雄教授が以前「ポケット1つ原則」と名付けたとおり、書類、タスクリスト、アドレス帳などは、1つのところに集約していた方が便利です。というより、1つのところに集約されていないと、不便だし不安がつきまといます。

ですから、これらのデータを1つに集中させよう、とは、ライフハックに類することを考える人であれば、必ず一度は求めるものです。しかし、現実には1つのところに集約できない制約があったり、1つのところに集約すると、かえって仕事が不便になったりする事態も発生します。

たとえば、家でも仕事をしなければならないのだけれど、データが会社から持ち出せないとか、データが多すぎてとても持ち歩けないけど、仕事の中心は外回りだといったときに、「ポケット1つ原則」は守りにくいものになります。この語句を作った野口教授自身、この語句を作った当時は、家と仕事場の二カ所に超整理法のファイルが分散してしまっている、と嘆いていたものです。

しかしここ最近になって急速に、データ自体は一カ所の集約し、しかもそのデータにどこからでもアクセスできるという、理想の1ポケットが実現しつつあります。そのために必要なツールとライフハックスが、『整理HACKS!』の第1章にまとめられているわけです。

第2章 環境の統一と洗練

どこからでも同一のデータにアクセスできるとなれば、次に望むのは、どこからでも同じような操作環境で、データを操作したいとうことでしょう。

たとえ「データにアクセスはできる」としても、手のつりそうなキーボードだったり、日本語がほとんど文字化けしてしまうというのでは、実際には使い物になりません。また、ブックマークやアプリケーションの環境が整っていないと、やはり「データにアクセスできる」としても時間がかかってしまいます。

どこでも「データにアクセスできる」だけでなく、どこでも操作性が変わらないという条件が整ってこそ、気持ちよく仕事をこなすことができるわけです。

第3章 時間軸管理と空間軸管理

今のようにIT環境が整ってくるまで、私たちの「整理方法」は、決まって「空間的に分類する」というやり方でした。あの辺に大きな本を置いて、この辺にはマンガをおく。ものの整理が中心の、たとえばキッチンなどでは、今でもこの方法で整理が行われているでしょう。

それを書類に限ってというものの、アナログ時代にも一変させたのが「超」整理法で、あの方法はそれだけ先進的だったわけですが、IT中心の環境で「時間軸」に沿って整理するというのは、めずらしくはありません。「空間」でものを仕分ける理由がなくなり、また量が多すぎて不可能になっている以上、時間軸に沿って分類していくというのは当然の方法なのです。

本書の第3章には、それを徹底するためのライフハックスが収録されています。あわせてGPSによる位置情報の付加という、新しいタイプの「空間軸による管理方法」も紹介されています。

第4章 ルーチンとサプライズ

これは、生活をシンプルにするために、悩みなく整理と消費のルーチン化を図っていこうという提案です。ただ、それだけでは味気なくなるので、ルーチン化によって生じやすくなるサプライズを味わうやり方まで、紹介されています。

以前私は、このテーマだけに絞った本を1冊書いたことがありました。生理心理学と認知心理学の側面から、習慣と新規性によるサプライズの心理を分析してみたのです。ご興味のある方は、次の本をお読みになってみてください。

夢中の法則 ~集中力がアップするしくみ~ (マイコミ新書) 夢中の法則 ~集中力がアップするしくみ~ (マイコミ新書)
佐々木 正悟

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第5章 情報の分割と統合

突き詰めて考えていくと、思考というのは情報をどのように分割し、また統合するのかということになります。
(p216)

この考えに基づいてまとめられているのが、第5章の「思考ハック!」です。ここまでくると、整理ハックス集の本というよりは、もう一歩進んだ「発想法の本」という趣になってきます。もちろん、これを全部「ライフハックス」でまかなおうとしても無理がありますが、可能な限り「情報の分割と統合」を可視的に、かつ操作的に行うツールと方法がまとめられているわけです。

89+1

最後に、冒頭で述べた「89+1」の最後のライフハックを紹介します。POKENという新しいタイプのデジタル名刺なのです。ライフハックは非常にしばしば「新しいツール」としてその発想を実現することがあるのですが、これは典型例でしょう。

どんなにうまい「名刺ハックス」があっても、そもそも存在自体に嫌気がさしている人も少なくないはずです。それがこのような形で「進化」を遂げたのであれば歓迎したいところです。そのライフハック精神に共感するところが大きかったからこそ、著者もわざわざ「89+1」で取り上げたのだと思います。

Poken Japan via kwout

 

▼編集後記:
佐々木正悟
イベントのご案内です。

7/13(月)に あすなろBLOGセミナー「勉強法 + 英語ハックス」開催します。

佐々木正悟、堀E正岳によるセッションです。

内容は堀さんのブログから引用します。

佐々木さんとは共著で「英語ハックス」を書きましたし、佐々木さんには「LIFE HACKS 勉強法」の著書があります。

この二冊、著者である自分がいうのもなんですが、このまま埋もれさせるには惜しい話題がたくさん入っていますし、過激すぎて本では扱えなかった言語習得法や勉強法全般の話題がまだまだありますので、このあたりをまるごとセミナーで聴衆のみなさんにぶつけてやろうという魂胆です。

詳細

主催:あすなろブロガー 佐々木正悟・堀E正岳
協力:あすなろBLOG(パソナテック)
開催日程 7月13日(月) 19:00-21:00【開場は18:30】
場所 銀座TSビル4F パソナ研修室4C(地図
定員 120名【定員になり次第、〆切とさせていただきます】
費用 3000円
※懇親会あり(会場・費用とも別になります)

お申し込み

お申し込みは、こちらのお問い合わせフォームから、お願いします。
※「勉強法 + 英語ハックスセミナー参加希望」とコメント欄に必ずご記入ください
※お申し込みは佐々木のサイトに遷移します。