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自分の内に秘めた「すごい可能性」を解き放ちたい人のための一冊

私たちはみな、自分が考える以上に、自分のなかにすごい可能性を持っている。

そして、誰にでも、自分のやりたいことを実現し、周りの人々を幸せにする潜在的な力がある。

だが、人間は「自分のやりたいことを閉じ込めてしまう檻」をつくってしまう。飛びたいところを飛びたい蝶をつかまえて、籠のなかに入れてしまうように。

そうしないと、自分の役割を果たせないとか、誰かに怒られるとか、大人じゃない…と考える癖が、私たちにはいつの間にかついてしまうようだ。

大橋悦夫そんな癖を克服し、「蝶」を飛びたいように飛ばしてやるための手法と技術を解説しているのが、今回ご紹介する『プロデュース能力 ビジョンを形にする問題解決の思考と行動』です。

本書は、次の2通りの読者を想定しています。

  1. 自分の内にいる「蝶」を見つけ出し世に放ちたいと思っている人
  2. 他人の内にいる「蝶」を見つけ出し世に放ちたいと思っている人

この、「蝶」を見つけ出して世に放つ行為を本書では「プロデュース」と呼んでいます。従って、想定読者は次のようにシンプルに言い換えることができます。

  1. 自らをプロデュースしたいと思っている人
  2. 他人をプロデュースしたいと思っている人
  3.  


プロデュースとは何か?

そもそもプロデュースとは何か? 何をしたらプロデュースをしたことになるのか? さらに、世の中にあふれる「プロデューサー」という肩書きを持つ人々は具体的に何をしているのか? こういった素朴な疑問から発して、著者の考える「プロデュース」のあり方とやり方が展開されます。

それを簡潔に言い表したのが以下の一文(「はじめに」より)。

起業・ビジネスプロデュース、変革プロデュースをはじめ、商品開発、営業開発、仕事のやり方、仕事そのもの、チーム、人間関係、人生、キャリアまで含めて、「新しい何か」を創りだすために、すべての人が使える方法論として、プロデュースの解明を試みたのが本書である。


読んで楽しい本ではない

いきなりで難ですが、本書はいわゆる読み物ではありません。どちらかというと教科書に近いです。

どこかの大学の経営学部か人間科学学部あたりで開講されている「プロデュース原論II」とかいう講義のテキストになっていてもおかしくない感じです(実際にそんな講義があるのかどうかは知りませんがー)。

そんなわけで、「よし、プロデュースするぞ!」と意気込んで読み始めるとやや期待はずれ感が漂います。僕自身がそうでした。

そこでおすすめしたいのが、本書の終盤に登場する事例「銀座を目指す宝石販売員」(p.277)から読み始めること。事例は6ページにわたり、その後3ページを費やして解説が付されています。

僕自身、ここまで読み進めたところでにわかにそれまでの霧が晴れ、「あ、そういうことか!」と腑に落ちたのです。もちろん、そこまでの間にも、「なるほど~」と思える説明や「ぐっ」と来る事例がちりばめられてはいるのですが、文字通りちりばめられているがゆえに、その根底にある何か一貫した、統合されたコンセプトのようなものが見えずにいたのです。

それが、この事例を読むことで、様々な伏線が一本に収束していくかのようでした。その後に前半に立ち戻って読み返してみると、急激に理解が深まります。そして、いてもたってもいられなくなるのです。

本書は、内容を読んで理解するための本ではなく、(自分の、あるいは他人の)可能性を知って解き放つための本なのです。

つまるところ、プロデュースとは何か?

まずは、何がプロデュースで、何がプロデュースでないのかを明確に線引きする必要があるのですが──そのためには本書を読むのがいちばんなのですが──、手っ取り早くその特徴をかいつまんでご紹介します。それである程度の輪郭は見えてくるでしょう。

本書のあちこちからその片鱗を集めてみました。

  • 一つのビジョンのもとに、人々の力を借りて「新しい何か」を創りだし、現状を変えること。それがプロデュースである。(p.16)
  • プロデュースにはエンタテイメントの要素があり、プロデュースのプロセスで周囲の人を巻き込んで進んでいく特性がある。人を、「自分も、そのプロデュースに一役買いたい、参加したい」という気持ちにさせるのである。(p.18)
  • プロデュースは、「自分は何をやりたいのか」「それは、なぜか」というメッセージを周囲に発信することからはじまる。(p.18)
  • プロデュースは、自分のやりたいことを、自分だけでなく協力者にとっても実現したい共通の夢にして、その夢を実現するための思考と行動のプログラムである。その「共通の夢」がビジョンだ。(p.21)
  • プロデュースは、ビジョン実現に向けてのプロセスで、社会と自分、そして、プロデュースに関わる人々が響きあう行為である。(p.22)
  • プロデュースには目的があり、価値を提供したい相手、いわば「受けをとりたいお客さま」を想定してスタートする。しかし、同時にプロデュースする人自身、さらにプロデュースに関わる人々の間に、想定していない付加価値的な何らかの成果をもたらすことが多い(p.35)
  • プロデュースは、自分で考え抜いて、自分で動いてみて、人と出会って化学反応を起こしてはじめて、実現できるものなのである。(p.53)
  • やってみなければどうなるか、はっきりわからない部分を残したままスタートするのがプロデュースであるから、リスクがあるのは当然なのだ。(p.57)
  • プロデュースを構想することは、そのアイディアを生かし、自分自身を生かし、協力者を生かし、チーム力を高めてプロデュースを進める仕組みを考えることである。(p.83)
  • プロデュースは、すべてを自分一人でやる必要はない。自分一人でできないことは、できる人と組めばいい。あるいは、できる体制をつくればいい。(p.83)
  • 「自分の思いに従って自分ができるプロデュースをやり、自分の所属する会社やお客さまや社会に役立つように着地させていけばいい。だから、まずは一歩を踏み出そう」と考えるのが、プロデュース思考である。自分の「個人的なこだわり」や「偏った部分」、精神的なトラウマが背景にあるような「屈折した部分」さえ、否定する必要はない。(p.95)
  • プロデュースはチームを統括する一人のリーダーだけのものではない。チームに参加するメンバーたち一人ひとりが、それぞれにプロデュース能力を発揮することによって、プロデュースは「すごいプロデュース」に発展していく。(p.103)
  • プロデュースは、まず、自分(発案者自身)がやる意味を強く感じることでなくてはいけない。そして、自分が好きなこと、好きなやり方を最大限に取り入れて進めていこうとする姿勢が非常に重要になる。(p.118)
  • プロデュースは、論理だけでは説明できない問題解決の方法である。(p.291)
  • プロデュースは、自分のなかにある自由で遊び好きな子供の要素を大事にして、大人社会で新しいものを創造したり、大人社会のおかしなところを変革したりすることを企てる作業だということもできる。(p.304)


プロデュースのロジックを組み立てるための7つの質問

プロデュースに協力しようという人は、なぜ、このプロデュースが実現可能なのか、そこにしっかりとした裏づけがあると感じるから支援するのである。関係者たちを説得できるロジックがあるかないか。それはプロデュースにとって非常に重要である。

ということで、プロデュースのロジックを組み立てるための7つの質問が挙げられています。項目だけ転載し、詳細は本文に譲ります。

  1. ビジョンは何か(自分は何をやりたいのか)
  2. なぜ、そのビジョンなのか(なぜ、それをやりたいのか)
  3. コアテーマは何か(突破口を開く鍵となるアイディアは何か)
  4. 自分に何ができるか(自分の果たす役割は何か)
  5. 誰に何をやってもらうか(誰にどんな役割を担ってもらうか)
  6. 大義名分は何か(なぜ、このプロデュースが必要か)
  7. 付加価値は何か(どのような波及効果が生まれるか)

これらの質問すべてに明確に答えることができたとき、支援者が殺到するのでしょう。

以上、

  • 会社の中でリーダーシップを発揮していきたいと考えている人
  • これから起業・独立を考えている人
  • チーム運営にまつわる悩みを抱えている人
  • 自分が好きで好きで仕方がないマニアックな趣味や習慣をキャッシュに換えたいと考えている人
  • とにかく仲間が欲しい人

などなど、一見バラバラなプロファイルですが、ここに挙げたすべての人に役に立つ一冊です。



合わせて読みたい:

以下の記事でご紹介した本ですが、『プロデュース能力』とは異なる切り口ながら、その根底には共通するコンセプトが垣間見られます。それでも、こちらはどちらかというと個人で仕事をしている人に向けて書かれています。

自分も成功し、同時に周りの人にも成功してもらいたいと思っている人のための一冊



2001年に公開された映画です。今回の文脈に沿って言えば、二人の主人公がお互いにプロデュース能力を発揮して、最後にお互いが内に秘めていた可能性を解き放ちます。

どちらかというと穏やかで大人しいプロデュースですが、そこには確かにビジョンがあり、役割があり、大義名分があります。

そして、二人にとって想定外の“成果”をもたらすのです。

本作については、4年前にコラムを書いていました。シゴタノ!を始める直前(数週間前)に書いたもので、今読み返すと、当時の自分もまたプロデュースに取り組んでいたことに気づかされます。

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