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思考の飛躍力って、たぶん「その時代」では評価しきれないものだと思います。
特にその跳躍が高いほど、つまりより遠い年代まで影響を与えるものほど、「その時代」が過去になってみないと本当のところはわからないでしょう。
というわけで、今こそ梅棹忠夫さんの著作を読み返すタイミングかもしれません。
今回は4冊の本を紹介します。「情報」についての著作です。
『梅棹忠夫のことば』
導入としては、本書がよいかもしれません。梅棹さんの言葉を集めた一冊です。それぞれの言葉には、編者のコメントも付けられています。
もし本書を読んで、一つも心がきらめかないのなら、続く本を読んでも芳しい結果は得られないでしょう。逆に引っかかるものがあるなら、次の一冊をどうぞ。
『知的生産の技術』
本連載のタイトルにもついている「知的生産」という言葉が生まれた一冊。
紹介されているノウハウではなく、「情報」とは何なのか、それをどのように扱えばよいのか、に注目してください。得るところは多いはずです。
本書を読めば、「知的生産」が高水準な知識労働を行っている人だけのものではないことがわかるでしょう。知的とはあくまで物的に対応させた言葉であり、「情報」とほとんど変わらない意味しかありません。つまり、知的生産の技術は、メディアの技術でもあるわけです。
ここで分岐が生まれます。
一つは、情報の産業的な影響へ。もう一つは、情報の生活的な影響へ。
『情報の文明学』
情報の産業的な影響が気になったのなら、本書に収められている「情報産業論」「情報の文明学——人類史における価値の変換」をぜひ一読ください。二読、三読してもらっても構いません。
びっくりするぐらい「現代」な話と、現代からみてもまだ「未来」な話が書かれています。
最近始まった「note」というサービスを見てもわかりますが、現代においても「情報の経済学」はまだまだ見定まっていないと感じます。
» 『情報の文明学』
『情報の家政学』
情報の生活的な影響が気になった方は、こちらをどうぞ。
ソーシャルメディアがあたりまえに使われるようになった現代では、一般の人が「情報の収集と創造」を日常的に行っていると言えます。生活の中に情報発信が入り込んでいるのです。
が、それだけではありません。もともと家庭は情報処理を行うシステムなのです。住所録、家計簿、写真アルバム……etc. 情報を管理、操作する事柄はたくさんあります。
人間の生活規模が小さいうちは、そんなことを気にしなくてもよいのでしょう。生涯で撮影した写真が50枚しかないなら、その管理法に頭を悩ます必要はありません。しかし、万を超える写真が残せるようになってしまったとき、何かしらの方法論が必要になってきます。
現代では人の活動領域は広がり、趣味・関心の対象は大きくなり、仕事を含めた生き方は多様化しつつあります。家庭の中の「情報」をいかに扱うのかもまた、真剣に考える必要があるでしょう。
» 『情報の家政学』
さいごに
現代は、高度情報化社会です。
識字率が高いだけでなく、それぞれの個人が発信できるメディアを持ちうる時代なのです。
そんな時代において、「情報」について何も知らないというのは少し危うい気もします。「情報」について知らなくても、取り残されることはないでしょうが、何かの機会を失ってしまうことはありそうです。
メディアに関する技術を学ぶことも大切ですが、土台として、
私たちにとって「情報」とはどのような意味を持つのか。
を知っておくことも大切でしょう。
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そんな情報の未来を見据えていた、梅棹忠夫さんについてのシンポジウムに参加することになりました。参加、というか登壇します。5月6日の火曜日で、会場は大阪の「グランフロント大阪 北館」。参加料は無料です。
梅棹忠夫と21世紀の「知的生産の技術」シンポジウム | Peatix
メンバーがすごいので、もしかしたら金魚のように口をパクパクさせているだけになるかもしれませんが、何か面白いことを話せたらと思います。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。