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意外なほど知られていない夢を叶えるための手引き書『アイデアの99%』

squirrel99

アイデアの99% ―― 「1%のひらめき」を形にする3つの力
アイデアの99% ―― 「1%のひらめき」を形にする3つの力 スコット ベルスキ Scott Belsky 関 美和

英治出版 2011-10-25
売り上げランキング : 75899

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タイトルに問題があります。ひねりすぎてしまったというか。

『アイデアの99%』

本書のタイトルの意味は「アイデアの99%は、すぐに死んでしまう」という意味なのです。

そして本書の内容はといえば「少しでも生きながらえられるたった1%のアイデアを、守り、プロジェクトとして育てる、実用的な方法を説いたもの」なのです。

つまり本書は、アイデアをプロジェクトにして、ゴール達成に導くための実用書、それもタスク管理の本なのです。

それを「アイデアの99%」と言われても、意味がわかりにくいでしょう。でもそうなってしまっているわけです。

アイデア発想の本ではない

本書にははっきり書いてあります。アイデア発想のための本ではない。アイデア発想術は必要ないと言っているのです。

アイデアは発想できる。少なくとも発想できる人には、できる。本書はそう言いたげです。ただ、アイデアを実現しようとして何らかの行動を起こす人はとても少ない。そもそもアイデアはすぐ忘れ去られてしまう。

大相撲中継でも見ながら「インターネットで欲しい本がすぐ買えたら便利だろうな」とふと思う。それくらい考えつく人ならたくさんいます。これがアイデアです。

でも次の瞬間には大関稀勢の里が横綱を破った光景に目を奪われてしまって、何もかも忘れる。こうしてアイデアは即死する。だから「アイデアの99%は即死する」のです。

あるいはアイデアを他人に口にする勇気があったとしても「えー? ネットで本なんて買わないわよ」と奥さんやお子さんに言われる。やっぱりそうかなと思う。だからアイデアは即死する。やっぱり「アイデアの99%」は1時間も生き延びられません。

アイデア実現のマニュアル

それはやはりもったいないことだと本書は指摘し、非常に簡易なアイデア救済法を提案します。書き留めておくことです。おそらくこう書かれてみると読者は拍子抜けするでしょうが、本書を読んでいれば拍子抜けはしません。本書はあくまでも実用書であり、啓発書ではないからです。やって当然のこと、できて当然のことだけが書かれているのです。

まずアイデアを書き留める。当然のことです。ただしそれだけではダメなのです。

そうやってアイデアをどんどん書き留めていく人は、今度はノートやEvernoteが大混乱に陥り始めます。これを整理できる人でなければアイデアを実現させることはできません。アイデア実現には整理力が必要であり、その整理の過程で「プロジェクト」というものが立ち上がっていくのです。ちなみにこの種の本にしては珍しく、Evernoteもちゃんと登場します。

「アイデア」と言えばカラーバスとかアンテナとか、とらえどころのないマインドセットに関する話が多く、とてもしょんぼりさせられることが多いものです。その文脈で出てくるのは意識の使い方です。世にはEvernoteがあるというのに、Evernoteはもっぱら領収書の整理に使い、アイデアはカラーバスとマンダラートに任せるというのは、私にはとうてい納得のできない話でした。

これに対して『アイデアの99%』はタイトルこそ良くありませんが、夢のあるライフハック本です。人生をことさら楽観的に見みたり、メモが発酵するのをじっと待ったりしなくても、私たちはアイデアをポンポン思いついているのです。問題はそのポンポン思いついているアイデアをぼんぼん殺してしまうことなく、慎重に手を入れて着実に育てていく、実用的な方法が説かれてこなかった点にあります。

『アイデアの99%』は、それを解説した貴重な本です。

アイデアの99% ―― 「1%のひらめき」を形にする3つの力
アイデアの99% ―― 「1%のひらめき」を形にする3つの力 スコット ベルスキ Scott Belsky 関 美和

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▼編集後記:
佐々木正悟

新年度最初に開催するセミナーでは、「変わること」をテーマとしながら、可能な限りギリギリまで、自己啓発的な内容を避けたいと思っています。

私は最近自分がやりたいことがわかってきました。私自身、自己啓発的な「やるのとやらないのの違い」を得たい人間です。学期末テストの時なんかに思ったんです。「今回はあきらめよう」と思ったときと「なんとか粘ろう」と思ったときとでは、総勉強時間量にはけっこうな差が出ると思ったことがあります。

でも、精神主義的な話はどうしても好きになれない。

「あなたの人生、それでいいのですか?」といわれるのもいやなのです。そういわれるととっさに「私はこれで、いいんです!」と言い返したくなる。

性根が腐っている?(そもそもそれはどういう意味なのか?) じゃあ性根が腐ったままでも、性根が腐った自分でも、できる方法を見つけるべきなんじゃないのか? 「誰にでもできる」というのは、そうでなければありがちなキャッチコピーに過ぎないでしょう。

「私にもできたんだから、あなたにだってできます!」といっている人の「私」はだいたいかなりがんばれる人ばかりです。

私は「私のがんばり」にではなくツールに頼りたい。でもツールが問題を解決してくれないのなら、ツールの活用に、それも無理ならせめて「方法」にかけたいと思うのです。

4月6日 第13回タスクセラピー 3週間で変わるためのタスク管理(東京都)