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ラテタイムを取り戻せ

By: kkmaraisCC BY 2.0


倉下忠憲

先日の佐々木さんの記事で取り上げてもらっていたので、関連したことを。

シゴタノ!にも連載されている倉下さんのブログからの引用です。スキマ時間があってもその長さがあいまいにしかわかっていないと、仕事ではなくゲームをしてしまうというわけです。

この部分だけをみると、かなり残念な人の印象を受けますが、実際そう珍しい話ではないでしょう。ちょっとした隙間時間にゲームをプレイしてしまう。いや、むしろこうしたゲームはそういう時間にプレイできるようにうまく設計されています。

そうすると、ラテライムがバリバリ吸収されていくのです。


ラテタイムとは?

ラテタイムとは、ラテマネーのモジりです。

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で、そのラテマネーとは、スターバックスなどで毎日何気なく使っているお金を意味します。このラテマネーをラテに使わず、貯蓄に回したら、数年後には大きな金額になるよ、という一種の教訓的な使われ方をします。

言うまでもないことですが、この場合、それがコーヒーを飲むために使われたお金であるかどうかは本質的な事柄ではありません。そうではなく「毎日」「何気なく」使っている、という部分が重要です。

ようは「いつのまにかなくなっているお金」。それがラテマネーです。

つまり、ラテタイム__この場合、パズドラタイムとでも呼んだ方がよいかもしれませんが__とは「いつのまにかなくなっている時間」です。

メモ帳の「減り」が教えてくれたこと

私がその存在に気がついたのは、メモ帳でした。

いつも胸ポケットにミニノートを忍ばせ、それをメモ帳代わりに使っているのですが、ここ最近の「減り」が遅かったのです。つまり、あまり書き込めていない。

原因は二つ考えられました。

一つは、iPhoneからのメモが増えたこと。一行程度のメモならばメモ帳を開くまでもありません。FastEverなりEverGearなりを立ち上げて送信すれば、十分こと足ります。しかし、iPhoneを使い始めたのは、ずいぶん前のことです。ここ最近の減少を説明する理由としては不十分です。

もう一つ考えられるのが、パズドラの存在。

バス停でバスを待つ時間、妻の仕事を終わりを待つ時間など、「特に何もすることがないような時間」については、これまでTwitterのタイムラインをチェックするか、あるいはメモ帳を開いて過去の書き込みを見直していました。しかし、隙間時間に簡単にプレイできるゲームが日常生活に侵入してきたことにより、その回数は激減してしまったのではないか。

実際、意識的に自分の行動を観察してみると、否定しようもありません。メモ帳を開いていないのです。

257日(原稿執筆時点)前から毎日ログインしているので、仮に毎日10分ゲームプレイに時間を使っているとすると、トータルで2570分。時間に直せば42.83時間。Wowと、叫びたくなる時間量です。

意図的か否か、それが問題だ

ここでの問題は、ゲームに時間を「浪費」してしまったこと、ではありません。だいたいパズドラ以外にも私は結構ゲームをするので、トータルで考えればゲームに使っている時間はもっと多くなり、パズドラに使われている量は「たいしたことない」ものになるでしょう。

そうではなく、私が知らない間にその時間を使っていた、ことが問題なのです。つまり、

「いつのまにかなくなっていた時間」

の痕跡をメモ帳から発見したというわけです。

ビフォーパズドラの世界では、おおよそ42時間が何かを考えることに使われていました。その生産性は明らかではありませんが、「42時間、何かを考えることに使っていた自分」とそうでない自分をまったく同じと考えることはできません。

計測していませんが、たぶん読書時間も減っていることでしょう。もし読書時間が維持されているなら、睡眠時間が被害を被っている可能性もあります。

ついついの、3つのポイント

隙間時間についついプレイしてしまうゲーム。それを敵視し、「絶対にやらない」と決意することもできるでしょう。しかし、なぜ「ついついプレイしてしまうのか」の原理を考えて、セルフマネジメントに応用する方が建設的です。

シンプルに考えてみると、おそらく次の3つの要素がポイントになるのではないかと思います。

  • すぐに始められる
  • わかりやすい目標が設定されている
  • いつでも終了させられる

すぐに始められる

本当に「瞬時」ではありませんが、仕事のように資料を広げたりする必要はありません。瞬時に「以前にゲームを終了した」状態から始められます。つまり準備の必要がない。これはたいへん脳の負荷が小さいものです。

それがわかるのが、ダンジョンに挑むために新規パーティーを編成しなければならない場合。隙間時間にこういうパーティーを編成する気持ちにはなりません。ダンジョンの性質を理解し、適切なメンバーをセレクトしていく必要があります。それはある部分では「仕事」と同じ気分になります。

わかりやすい目標が設定されている

というか、そもそも目的自体がそれほどたくさんありません。ダンジョンの攻略か、レベルアップ(ないし仲間集め)の二択ぐらいです。

ダンジョンの攻略では、一番最後に攻略したダンジョンが一目で分かるようになっていますし(進捗管理)、レベルアップは効率性を求めなければどのダンジョンにチャレンジでも問題ありません。プレイし始めたら、即座に何をすべきなのかがはっきりとわかるのです。

いつでも終了させられる

上に挙げたことと関係しますが、直前のデータが完全に残されるうえ、「進捗」もきっちり表示されるので、止めたくなったら気楽に終わらせることができます。

もしパスワードを書き写したり、あるいは「どのダンジョンまで進んだのか」がわからなくなるようならば、終了させる気楽さはずいぶんと低下することでしょう。

さいごに

まとめてみると、

「気楽に始められて、気楽に終われる」
「自分が前のプレイでどこまで進んだのかが、一瞬で再現される」

という要素がトリガーになっているようです。この要素を意識すれば、ラテタイムを取り戻せるかもしれません。

残念ながら、現状のタスク管理ツールで「直前まで、自分は何をしようとしていたのか」までを自動で記録してくれるツールはありません。現状、そこは手入力の必要があります。

しかし、それを丁寧に入力しておけば、これまでよりはずいぶんと仕事に「取りかかりやすく」なるのではないでしょうか。

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▼今週の一冊:

ダン・ハース、チップ・ハース兄弟の共著。『アイデアのちから』『スイッチ!』など、興味深い本を送り出してくれる作者ですが、今回も私のセンサーにきっちりひっかりました。

ある意味で『ファスト&スロー』をベースとして、「じゃあ、どうするの?」を考えた本と言えるかもしれません。タイトルが示すとおり、決定に関する本です。どのような決定が優れたものなのか、ではなく、いかに優れた決定を行うのかというプロセスを提示した本です。

人々の習慣を変えることに焦点を置いた『スイッチ!』を面白く読めた人ならば、きっと本書でも似たような体験が得られるでしょう。


▼編集後記:
倉下忠憲



ちなみに、今回は「ゲームの面白さ」については考慮しませんでした。私に関して言えば、文章を書くことも「面白い」と感じる対象なので、意味ある比較にはならないからです。実はもう少し、パズドラから学ぶセルフマネジメント術があるんですが、それはまた別の機会に譲ることにします。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。