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「新しい本」との出会い方

By: Joshu∆ ByrdCC BY 2.0


倉下忠憲「本を買うときに、絶対に失敗しないためには?」

と聞かれたら、「本を買わないことです」と答えるしかありません。

程度の差はあれ、本を買うことには一種の博打的な要素があります。残念ながら、絶対に失敗しない方法はありません。

しかし、失敗する確率をある程度減らすことはできますし、成功する(アタリの本を買える)可能性を上げることも不可能ではありません。

本の買い方を点検してみる

自分の「本の買い方」を分類してみると、次の3種類が出てきます。

  • 定点購入
  • 分野探索
  • 新規開拓


定点購入

「この作家の新作は絶対に買う」

というような本の買い方です。(財布の中身以外は)購入に関して判断が入る余地はありません。ハズレ本に遭遇する確率も低いと考えてよいでしょう。

必要なのは、その新刊の情報を見逃さないことです。

書店に行くたびに新刊やその作家の棚をチェックしてもいいですが、以下のサービスを活用することで新刊情報を漏れなく受け取ることもできます。

新刊.net – 書籍やCD、DVD、ゲームの新刊発売日を自動チェック


分野探索

「この分野に興味がある」

というときの本の買い方です。仕事で必要な知識を得るためや、知的好奇心を満たすためなど、理由はいくつか考えられますが、どちらにせよ好きな作家の本を買う場合とは違ったアプローチが必要です。

キーワードによる検索で本を「サルベージ」し、レビューや軽めのチェックでそれらを「トリアージ」し、読んだ本から関連書籍を「バラージ」していきます。

すでに「この分野ならこの本を読め」というリストがあるのならば話は簡単です。あるいは、その分野の専門家にアドバイスをもらえれば、ハズレな本と出会う確率をぐっと下げされます。

新規開拓

「・・・・・・」

という言葉にできない本の買い方です。新しい分野に興味の根を拡げるため、あるいはセレンディピティを求めて、と何かしら理由を付けることはできますが、実体とは少し異なっているでしょう。「何だか気になったから」という理由で買う本です。

ジャケ買い(カバー買い)、タイトル買い、他人のオススメ買い、ランキング買い、・・・・

こうした本の買い方は、博打的要素が多分にあります。言い換えれば、アタリハズレの幅が大きいわけです。とんでもなくツマラナイ本を買ってしまうこともあれば、想像もしなかった面白い本(あるいは新規分野)と出会えることもあります。

本の購入における成功率を上げたければ(あるいは失敗率を下げたければ)、この買い方の「精度」を高めるのが一番です。

「他人」を選択する

しかしながら、「精度」を高めるといっても、一体どうすればよいのでしょうか。

ジャケ買いやタイトル買いは、「センス」の問題であり、失敗と成功を積み重ねていくのが一番の近道です。また、ランキング買い(あるいはセールだから買い)は、個人的経験からいって失敗の確率が高いので、そもそも避けるのが賢明かもしれません。

では、「他人のオススメ買い」はどうでしょうか。

この買い方の成功率は「他人」の選択に大きな影響を受けます。そこで登場するのがソーシャルメディアです。

これまでの「他人」は、知人か著名人に限られていました。しかしソーシャルメディアでは、それが「共通の趣味を持つ人」にまで広がります。そして、そういう人のオススメ本を知ることができます。

難しい統計データを持ち出さなくても、「自分が面白いと思った本を面白いと思った人が面白いと思う別の本は面白い可能性が高い」ということは言えるでしょう。

実際、私が最近買った『マッチ箱の脳(AI)』『タテ社会の人間関係』という二冊の本は、ソーシャルメディアでその存在を知ったのですが、予想以上に面白い本でした。こうした「新しい本」は、自分のパターンにはまり込んでいるだけでは、なかなか出会うことができません。おそらく、ソーシャルメディアで見かけていなければ、買うこともなかったでしょう。

もちろん、「他人のオススメ」でも、絶対に面白いという保証は得られません。しかし「他人」をうまく選べば、オッズの低い賭けにはなりそうです。

さいごに

これから電子書籍、とくにセルフパブリッシングで作成された本が多数発売されるようになると、書き手として「いかに本の存在を知ってもらうか」を考えるのが重要になってきます。

同時に読み手にとっても「いかに面白い本の存在を知るのか」が課題になるでしょう。

自分の好きな本、自分にとって必要な本、自分を未知の領域に連れて行ってくれる本。

それぞれの役割に合わせた本の探し方を知っておくとよいかもしれません。

▼今週の一冊:

というわけで、上で紹介した二冊のうちの一冊です。佐々木正悟さんがFacebookで名前を出されていたので、気になって購入しました。ちなみに、Kindle版です。

「人工知能」のわかりやすい(&読みやすい)解説書、と言ってしまえばそれまでなんですが、本書を読んでいて改めて「人間の脳ってすごいな~」と感心させられました。あと、ゲームの中でいかに人工知能が使われているかという面白いお話もあります。

とりあえず言えることは、脳でも人工知能でも、何かを学ぶには時間と手間がかかる、ということですね。


▼編集後記:
倉下忠憲



いろいろな行事が終わり、ようやく落ち着いて原稿作業に戻れそうです。一度乗ってくると、どんどん筆が進むようになってくるので、ここからが正念場というところでしょうか。蒸気機関みたいですね・・・。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。