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未来をつくる言葉の紡ぎ方

倉下忠憲

見たこともない風景には言葉が真っ先にたどり着く

思わず、ドキリとしました。

以下の本で紹介されている言葉です。


科学技術とSFの関係性を思い浮かべれば、頷ける言葉でしょう。

言葉が未来を描き、現実がその後に続いていく。それは企業活動においてもよく目にする風景です。

一瞬でその未来を思い描いてしまうような、そんな力を持った表現の実例が、本書ではいくつも紹介されています。さらに、そうした表現__ビジョナリーワード__を作るための方法も解説されています。

概要

本書の目次は以下の通り。

PART1 言葉は未来を発明する道具

PART2「時代」を発明した言葉
PART3「組織」を発明した言葉
PART4「商品・サービス」を発明した言葉

PART5 ビジョナリーワードをつくる4ステップ
PART6 未来への入り口を探す
PART7 言葉をつくる5つの技法
PART8 旅程表をつくるバックキャスティング

PART1は、理論編。PART2〜4は実例紹介。PART5〜PART8は実践法。と大きく3つに分けられます。

実例紹介では「すべてのデスクと、すべての家庭にコンピューターを」や「1000曲をポケットに」などお馴染みの言葉も出てきます。が、注目したいのはやはり「実践法」です。どれだけビジョナリーワードに詳しくなっても、自分でそれを紡げなければあまり意味がありません。

単なるキャッチコピーと、ビジョナリーワードはどう違うのでしょうか。

ビジョナリーワードたる条件

本書ではビジョナリ−ワードを、「未来からの絵ハガキ」にたとえて、その3つの条件を提示しています。

  1. 解像度
  2. 目的地までの距離
  3. 風景の魅力

「解像度」は、具体性と言い換えられるでしょう。イメージしにくいものは、ビジョンとは呼べません。聞いた人が、その言葉が示すものを身近なものとして想像してしまう言葉。それがビジョナリーワードの条件の一つ目です。

二つ目の「目的地までの距離」は達成可能性、三つ目の「風景の魅力」は、共感性と理解できます。

キャッチコピーは、対象を一言で表現した言葉と言えるでしょう。対してビジョナリーワードは、思い浮かべやすく、かつ現実味を帯びていて、指し示す未来に共感してもらえるものでなければいけません。絵ハガキと同じように、「よし、今度この場所に旅行に行ってみよう」と思ってもらえるような、人の心を動かす言葉がビジョナリーワードです。

ビジョナリーワードへ至る道

そう考えてみると、ビジョナリーワードを作ろうとする場合、たんに「うまいこと言う」だけでは十分でないことがわかります。その対象の本質に踏み込む必要があるのです。むしろ、言葉はそうした踏み込みの後に、浮かび上がってくるものと言えるかもしれません。

本書ではディズニーランドの従業員が「キャスト」(役者・演者という意味です)と呼ばれている事例が紹介されています。たしかに、この言葉は「単なる従業員ではない」というメッセージをそこで働く人に伝えています。

しかし、「従業員は単なる従業員だ」と経営者が考えている企業が、この「キャスト」という呼び方だけをマネしても、ディズニーランドと同じような効果が現れることはないでしょう。表面的に言葉だけを変えても、意味がないのです。

本書では、ビジョナリーワードを作るための4ステップを以下のように紹介されています。

  • STEP1 現状を疑う
  • STEP2 未来を探る
  • STEP3 言葉を作る
  • STEP4 計画を作る

各ステップの詳細は本書に譲りますが、紹介されている「ダウト・リスト」や「言葉を作る5つの技法」には、なるほどと頷けるものがあります。

さいごに

いま私は「知的生産」という言葉について考えています。この言葉を現代において再構築できないか、と思いを巡らせているのです。

「知的生産」という言葉が、あまりにもアカデミック寄りに理解されすぎているのではないか。そして、現代では多くの人に必要なのにもかかわらず、それが十分に普及していないのではないか。そういう懸念を持っているのです。

普及のためには、適切な言葉を探すのが一番、とずっと試行錯誤していたのですが、いまだに「うまい言葉」を見つけられていません。しかし、先に言葉だけを探しても、なかなか捕まえられないのでしょう。

私も、上で紹介したステップを、「知的生産の再構築」において行ってみようと思います。


▼編集後記:
倉下忠憲



実際、さまざまな角度から考えてみても「知的生産」という言葉は、これ以外無い、と言い切ってしまいたくなるぐらいその対象にぴったりフィットした言葉です。しかし、この言葉だけでは、ビジョナリー感が不足していることもまた確か。じっくりステップを踏んでみます。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。