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「発見の手帳」としてのブログ

倉下忠憲

発想をメモするくらいなら、ブログを書いた方が効率的なのだ。だから今もこうして書いている。これがメモと言えばメモなのだ。

これは『ライフハック心理学』の「ブログメモ」というエントリーからの引用です。

私は「発想をメモする」派ではありますが、ここで書かれている内容にも頷けます。

「ブログがメモといえば、メモ」

そういう感覚は確かにあるのです。


「お題帳」

R-styleというブログを毎日更新しています。便利情報の提供ではなく、私的思考の備忘録といった体裁のブログです。

そんなブログでも一応の「ネタ帳」があります。ようするにネタをメモしておくツールですね。

しかし、

「ブログがメモといえば、メモ」

という視点に立つと、それは「ネタ帳」でないような気もしてきます。むしろそれは、「お題帳」と呼ぶ方が適切かもしれません。

なぜならば、私はネタ帳からネタを拾い出し、それについて考えながら文章を書くからです。とりあえず「ネタ」と呼んでいても、書き出しやら本文やら締めの言葉などは一切そこには含まれていません。いわば考えるための「きっかけ」がそこにあるだけです。

そのきっかけを使い、発想しながら、文章を書く。そういう記事がR-styleの更新の9割を占めています。

だから書き出しの瞬間は、文章の展開や結末がほとんどわかっていません。ブログを書く時間は、文章を書く時間でもあり、何かを考えるための時間でもあるわけです。
※ちなみにメルマガも同じスタイルです。

考えたことを書き留めているのですから、そういう記事群もメモと言えばメモになるでしょう。それが「短いフレーズ」ではなく、「ひとまとまりの文章」になっているだけの話です。

「発見の手帳」について

そういう考え方に立つと、ブログは「発見の手帳」としても捉えられます。

『知的生産の技術』の中で、梅棹忠夫氏は「発見の手帳」について以下のように書いています。

わたしたちが「手帳」にかいたのは、「発見」である。まいにちの経験のなかで、なにかの意味で、これはおもしろいとおもった現象を記述するのである。あるいは、自分の着想を記録するのである。それも、心おぼえのために、みじかい単語やフレーズをかいておくというのではなく、ちゃんとした文章でかくのである。

みじかい単語やフレーズではなく、ちゃんとした文章で書かれた「ちいさな論文」となりうるような性質を持ったもの。それが「発見の手帳」に記されていくものです。

「発見」は、できることなら即刻その場でかく。もし、できない場合には、その文章の「みだし」だけでも、その場でかく。あとで時間をみつけて、その内容を肉づけして、文章を完成する。みだしだけかいて、何日もおいておくと、「発見」は色あせて、しおれてしまうものである。

「できることなら即刻その場でかく」。現代ならば、情報カードではなく、ブログで運用することができるでしょう。私のように、きっかけだけをメモしておいて、そこから「発見」を発展させていったり、強化していくようなこともできます。

たまってみると、それは、わたしの日常生活における知的活動の記録というようなものになっていった。

なるほど、確かに自分のブログを読み返してみると、そのような記録になっています。

さいごに

日頃からメモをつける習慣は、観察する力を底上げしてくれます。目が鋭くなるわけです。

観察し、何かを発見する。それはなかなか楽しいことです。それに、発見しただけならば、楽でもあります。が、それを単語ではなく、ちゃんとした文章で綴ろうとすると、とたんに精神的な努力が必要になってきます。わりと面倒くさいのです。

しかしながら、その行為の継続は、支払った代価に見合うだけの価値があります。

単語のメモに慣れてきたら、今度はそれをきちんと文章化する習慣にチャレンジしてみるとよいでしょう。ノートでも、ブログでもツールはなんでもかまいませんので。

▼参考文献:

なにはともあれこの一冊から。


▼今週の一冊:

思いっきり宣伝ですが、わりと嬉しいのでここで紹介させていただきます。

とうとう拙著がKindleストアに並びました。私と北さんの共著です。

6月に手帳の本を紹介するのもちょっとどうかという気がしないではありませんが、4月に新しい手帳を使い始めて「う〜ん」となっている方もいらっしゃるかもしれません。

基本的には「ほぼ日手帳」の使い方なんですが、その他の手帳の運用にも役立つ考え方・手法が紹介されています。Kindle版が発売されるのを待っていた、という方はぜひチェックしてください。


▼編集後記:
倉下忠憲



大阪でこぢんまりとした集まりでも開催しようか、と考えている今日この頃です。まあ、先に原稿を完成させてから、なんですけれども。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。