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自分にとってしっくりくる「一番」になるための5つの指針

By: andrechinnCC BY 2.0


人が面倒くさがる仕事がいちばんやりがいがあって、楽しく、報酬もでかい。得られる信用も絶大である。僕は社員に、ことあるごとにそういって、人が面倒くさがる仕事に挑戦することを奨励しています。

なぜなら、僕自身、面倒だなあと思っていた仕事に挑戦して、結果的にそれが大きな飛躍につながった経験があったからです。(p.116)

大橋悦夫その「大きな飛躍」とは、「モーニング娘。」の成功を指します。つまり、上記の「僕」とは、つんく♂さんのことです。

今回ご紹介する『一番になる人』には、「どうせ芸能界の話でしょ」という思い込みが次々と覆される、著者の仕事に対する直向きな考え方が紹介されています。

特に印象に残ったのは、年長者に対する敬意が随所に見受けられること。特に子供時代の「じいちゃん」から受けた教えが人生に大いに影響を与えたようです。

本書はタイトルにある通り「一番」にこだわっているのですが、読み進めるうちにそれは「ナンバーワン」というより「オンリーワン」であることに気づきます。自他共に納得のいく「一番」になるためにはどうすればいいか。

僕なりに5つの指針が読み取れましたので、ご紹介します。

  • 1.「一番」までのプロセスを細かく分解する
  • 2.自分にとっての「一番」を探求し続ける
  • 3.今のままでは「一番」になれないことを受け入れる
  • 4.偽物の「一番」に注意する
  • 5.「一番」は自分で見つける

1.「一番」までのプロセスを細かく分解する

一番になる人

1ヵ月後に100人ということは、メンバーが5人だから、1人20人のノルマ。それを1ヶ月でこなすには1日1人、自分のファンを増やせば大丈夫という計算になります。つまり、1日1人、お客さんを増やせば、一年後に1100人以上のお客さんの前でコンサートができるということです。(p.17)

バンド「シャ乱Q」としてデビューする前の話。「大阪厚生年金会館中ホール(現・同芸術ホール)でライブする」という妄想を現実にするために、同ホールの定員である1100人のお客さんを集める、というゴールを立て、そこから逆算して今日何をしなければいけないかを作業レベルにまで落とし込むわけです。

もしいま何の行動を起こせないとしたら、目指すべき「一番」が明確になっていないか、プロセスの分解ができていないかのどちらかでしょう。

2.自分にとっての「一番」を探求し続ける

ヒットの兆しといったものに気づくのは、少数派です。へたすると、無視してしまえるくらいの数です。でも、そこを切ってしまっては、あとのヒットにつながっていきません。その細い糸を切らないよう、彼らがより興味をもつような情報を発信していく方法を考えるのです。

これは僕らの業界の例です。ほかの業界では、ヒットの兆しがどこに芽生えるかは違うかもしれません。しかし、どの業界にあっても「一番になる人」は、ヒットの匂いをかぎつける感性に優れているとともに、どこに発信すべきかを心得ているのです。(p.92)

「僕らの業界」の場合、「おしゃれな中学2年生の女の子」のハートをつかまえられるかどうかがカギだと書かれています。彼女たちが騒ぎ始めることで、そこから徐々に高校生・大学生・OLに広がっていく、と。

つまり、「おしゃれな中学2年生の女の子」がイノベータというわけです。

では、自分の業界における「おしゃれな中学2年生の女の子」を見つけるにはどうすればいいでしょうか。ヒントは「匂いをかぎつける感性」という言葉です。すなわち、自分の嗅覚を磨くこと。

では、嗅覚を磨くにはどうするか? 直接の答えは書かれていませんでしたが、個人的には以下がその問いに答えているように思えます。

自分はこうだという枠を決めない。
アメーバのように変幻自在に生きる。

タレントでいうと、SMAPは、お笑いでもなんでもやろうとする心意気がある。彼らが長く人気を保っている理由の1つは、それではないでしょうか。

逆に僕がプロデュースしたタレントで、頭がかたくて、「私は、私たちは、こういうスタイルじゃなきゃダメです」と、自分のスタイルを頑固に守る人もいます。

でも、昨日褒められた髪型が、今日の洋服や場所にとってベストだとは限りません。「え?」と思う意見でも、とりあえずは一回やってみる。そのうえでうまくいったらそちらの方向に進み、失敗だなと思ったらやめればいいのです。(p.114)

やらずに答えだけを知ろうとしても結果は得られない、ということでしょう。

3.今のままでは「一番」になれないことを受け入れる

自己満足は、自分一人の世界でやるべきことで、少なくともビジネスの場でやるべきではない、と僕は思います。

自分の満足は大衆の満足ではありません。

そこを勘違いしたためにどれだけ多くの優秀な人たちが自滅していったことでしょう。時間だけかけて、結局、締め切りを守れない。暇な人間ほど納期を守れないのではないかと思えるほどです。チャンスを逃すだけではなく、自分のアクが出すぎて、多くの人の心をつかみそこねてしまう。(p.124)

これは耳が痛い、と思われる方が少なくないのではないでしょうか。

今の自分が「一番」でないとしたら、どこかで現状に満足してしまっている、あるいは「自分はこんなものだ」と位置づけてしまっているかのどちらかだと考えられます。認めたくはありませんが…。

4.偽物の「一番」に注意する

「一番になる人」は例外なく、「好き」をとことんきわめた人といえます。
「好き」という感情を自分の人生において最大限に引き出すことができるかどうか、それはとても大事なことです。「好き」というエネルギーには、みずからを動かし、そしてまわりさえも巻き込み、奇跡を起こす力が秘められているのです。(p.66)

これに先だって、「好き」と「得意」を区別すべきことが書かれています。さらに、別の個所では次のような言葉も。

その仕事が「好き」なら、プロセスを大事にするはずです。ものをつくり上げるプロセスが楽しくて楽しくてしかたがないはずです。真心を込めて商品をつくるのは当たり前であって、もし流れ作業になってしまっているとしたら、僕にいわせれば、それは「天職」ではない。いっそのこと、転職したほうがいいくらいです。(p.110)

「流れ作業」という言葉にドキッとさせられます。自分の仕事において効率を追求することは大切ですが、それによって「好き」とか「楽しさ」が削ぎ落とされてしまうとしたら本末転倒です。それは、ダイエットしすぎて健康を害するようなものでしょう。

5.「一番」は自分で見つける

極限状況に追い込まれて、自分のもっている力を振り絞る。振り絞っている最中に、「こうやったら絶対におもしろくなる」というアイデアがどんどん生まれてくる。それでも「締め切りだけは絶対に守る」ことを心に誓う。時間が限られているからこそ、人間の能力が最大限に引き出されていくのです。

あの経験を経てから、締め切りとは、人間の力を目一杯に引き出す装置だと思うようになりました。だから絶対に締め切りは守る。凡人は締め切りを守ることを繰り返すことで、能力が鍛えられていくのです。そしてその能力がやがては天才を凌駕することもあるかもしれない。(p.128)

本書全体に貫かれているのは、次の2つの姿勢です。

 1.凡人であるところの現実を受け入れること
 2.今を乗り切るための“ショートカット”を外に求めないこと

「自分には才能があるから」「これは自分の天職だから」といった“勘違い”に気づき、与えられた環境の中で試行錯誤を積み重ねていくしかない、という厳しい現実認識は、一見するとストイックに映りますが、むしろポジティブ思考の裏返しとも受け取れます。

さまざまな制約のなかで、速く、短く、人を感動させるにはと研究し、試行錯誤をしているうちに、これら「ヒットの法則」を自分なりに編み出したのです。誰かに教えてもらったわけではありません。先に述べた日常の法則を発展させることで、難題を解くための公式にたどり着いたのです。(p.82)

誰かに教えてもらわずとも、必ず自分で見つけることができる、という確信があるからこそ、そのプロセスがいかに険しくとも楽しむことができるのでしょう。

同じことが逆からもいえます。プロセスを楽しめるからこそ、確信が持てるのです。

まとめ

実のところ、今回のエントリーでは本書の内容をうまくまとめられた気がしていません。

紹介しきれなかった「いい言葉」がまだまだたくさんあります。

 ・作詞家だけに、どんな言葉が人の心に届くのかを知り尽くしている!

などと読みながら、そして読み返しながら感嘆していました。

おそらくどの世界においても、「一番になる人」は世の中にプラスのエネルギーを、人間としての徳が上がるようなエネルギーを発信しているのではないか。そんなふうに思えてなりません。

自分という人間を生かしているエネルギーに思いをいたすことも、また、大切なことです。

いま、この時代に、生をうけたということは、いったい何を意味しているのか。

僕という人間を生み出したエネルギーは、僕に何を求めているのか。

この世に生まれてきたのは試練を経るためであると、いつのころからか、考えるようになりました。(p.96)

「一番になる」とは一人ひとりに課された役割を見つけ、これを全うしていくことにほかならないわけです。

今の自分にいまいちしっくり来ていない、と感じている人におすすめしたい一冊です。

» (文庫)一番になる人 (サンマーク文庫)


▼次にすること:
・『一番になる人』を読んで、自分にとってしっくりくる「一番」になるためのヒントを読み取る

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