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シゴタノ!ランチオン第1回〜nomicoさん

今日から毎週一回お届けする、シゴタノ!ランチオン。
大橋さんと佐々木が日頃からお話ししたいと思っている人と、ランチがてらインタビューさせていただき、そこでの話題をもとにこちらで記事としてお届けするという企画。

第一回は、works4Life season Vgihyo.jp実践!GTD〜一歩先の仕事管理で活躍中の、nomicoさんにお話を伺った。

ネットでお店選び、携帯で道案内

インタビューのお願いはメールでのやりとりだったが、今回は初めからnomicoさんペース。ランチオンのレストランは食べログ.comでスパッと探してもらった。静かで、話しやすく、味の評価も高いところ。値段もそれなりで。さすがに手慣れたもの。

待ち合わせ場所に着くや、移動を開始。近くまで来たら、携帯を取りだして、地図を確認。このあたりもいかにもIT慣れしている。ただ、ピンポイントまで近づいた頃に、迷い始める。ツールへの信頼度(依存度?)が極めて高い人と行動をともにすると、ときに遭遇する事態。頭から迷っているわけではないので、取り立てて心配はない。

nomicoさんとはどういう人?

イライラ vs. 快適

無事お店について話し始めて、早速思い出したのが、最初にお会いしたときからnomicoさんという人は、どうにも「とらえどころがない」と感じていたところ。実際、私は初対面ではない。セミナーにも来ていただいた。お話も何度かしている。そのたびに、大変魅力的だと感じるとともに、「なんだかよくわからない」という印象も持っていた。

したがって、この日のランチオンでは、色々ためになる話を伺う目的もさることながら、少しはこの「なんだかよくわからない」印象を解き明かす気持ちで、個人的には挑む。

話が進むうちにまずわかってきたのは、いわゆる「ライフハック好き」な人同様、nomicoさんもまた「イライラする」という事態を放置したり我慢したりは苦手だということ。具体的には、フリーソフトや便利ツールを使う場合でも、「日付を必ず入れさせられる」とか「日時設定はスルーできない」というツールには耐えられない。

だから、モバイラーのためのWindowsCEやPalmといったデバイスに手を出しても、結局それらは「中途半端」で、最後は小型・軽量のノートPCに行き着く。モバイラーには懐かしい東芝リブレットから、今ではパナソニックのレッツノートRを利用しているようだ。

「中途半端」というのはもちろん、「できるはずだ」と期待したことでも、「実際にはできない」とか「できても手続きが煩雑」という意味だろう。それらの試行錯誤の間中、nomicoさんは「イラつく」ことになるので、それらに自分を調節するというわけにはいかず、最終的には手放して、「快適!」と感じられるツールや方法を見つけ出さなくてはならないわけだ。

言うまでもなく、GTDはそんなnomicoさんを魅了した、限りなく「ゴール」に近いメソッドだったということになる。

ノイズはダメ

しかしこれだけなら、たいていの「ライフハッカー」にとって、なにも目新しい話ではない。「重い、遅い、無駄が多い、複雑」。そんなものを何とかせずにはいられない人たちが、「知的生産術」や「ライフハック」に執心するのだから、nomicoさんもそういうタイプの一人だと考えれば事足りる。

nomicoさんの独特の魅力と、若干のわかりにくさという私の印象は、インタビュー中には結局解けず、ランチ終了後の帰り道の途中で得られた。少なくとも個人的にはそうだった。

帰り道、名刺の整理が話題にのぼった。ここでもnomicoさんはやはり、名刺の整理のしにくさに「イライラ」してしまったようだ。そこでScanSnap(スキャンスナップ)の導入を検討しているという。

大橋さんが、そこで「名刺整理ハック」をいくつか投げかけてみたのだが、どれもnomicoさんには響かなかった。というのもnomicoさんには名刺整理にも「美学的価値観」を満たす必要があって、その理想をノイズなく実現してくれる方法やツールでないと、ただ問題が解決されそうだというだけでは、十分ではないらしい。

私の見たところnomicoさんにとって現実世界とは、ノイズの可能性と、理想的に統御できる可能性とが、混在としている場所のようだ。nomicoさんとしては、コントロールの及ぶ限り、スマートに現実を「統御」したい。それを実現してくれるようなツールを見つけると、「これ必須!」と言って目を輝かせる。

逆に、期待したフィードバックがなかなか得られず、待たされたり、ノイジーなトラブルに引っかかると、たちまち「イライラ」する。誰でもある程度はそうだが、nomicoさんの場合、この知覚が敏感だ。ノイズには耐えられないし、耐える気も全然なさそうだ。

ゲームとしてのGTD

nomicoさんはゲームが好きでよく遊んでいたという。しかし、じきにゲームの予定調和性に飽き足らなくなってくる。どんなゲームであってもゲームで展開できるストーリーは、プログラムされたものであり、そのパターンは人間の脳が見破れるレベルにとどまる。

そういうわけで、自らプログラムを組む、ということになるわけだ。なぜなら、プログラムを創造するということは、「予定調和の世界を脱することができるから。」この発想は、いかにも独特だ。ゲームが退屈なら、ゲームから離れればいい。元に私は大学時代にそうなった。しかしnomicoさんはそうではなく、プログラムでコンピュータを制御しようとする。その制御欲が、決して予定調和にはなり得ない、「本当の世界」にも向けられる。

その「現実の世界」の統御をサポートしてくれるのが、おそらくGTDだったのだ。だからnomicoさんにとって、GTDを実現するためのツールが「使いにくいとイライラする」ことになるのは当然だった。しかしそうイライラしやすいとなれば、私も大橋さんも、やることなすこと膨大になって、すぐにあちこちに分散しそうな「GTDのリスト」をnomicoさんが何にしているかが気になった。

nomicoさんによれば、最初はルーズリーフ。それからFitzNOTEやTaskPrizeにも手を出し、MACのOmniFocusなども気になるようすだが、今では独自のフォーマット用紙を使ったりしているとのこと。

すなわちリストは何でもいい。仕事が多くなりすぎたり、整理すべきものが多すぎる事態に見舞われて、現実がノイズを感じさせたら、それをコントロールしたい欲求にかられる。制御できれば快感だが、制御するための手間やツールを使うプロセスから、新たなイライラ要素が生まれるかもしれない。そうしたらそちらもなんとかしなければならない。全てがうまくいったとき、冒険は成功物語として一話終わる。

ただ、コントロールの対象をむやみに拡げることはできない。自分がノイズを感じるからといって、勝手に整理したり、処分してしまうわけには行かない部分が当然あるからだ。「わたしはわたし、あなたはあなた、カモメはカモメ」というわけで、その辺に興味があれば、works4Life season V ? GTDあれこれを読んで欲しい。

まとめ

というわけで、実に2時間35分も話し込んだ、初回のシゴタノ!ランチオン。

連載やブログの文章と同じで、ステップをじっくり踏んで、着実に聞かれたことに答えていく説明の仕方が、とても印象的だった。よほど内省的に、日頃から自分の行動と心の動きをモニターしていないと、なかなかこれは難しい。

それでいてDavid Allen氏の来日講演に参加した日のことについては、内省も心のステップも全部すっ飛ばし、「生身を見られたのが何よりうれしい!」などとも言う。とらえどころのなさは依然として残ったままだが、GTD実践の詳細からモバイル遍歴まで、まさに「人に歴史あり」といったところを聞くことができ、とても有意義なランチオンだった。

nomicoさん、どうもありがとうございました!