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タスク前タスクを準備する

By: JD HancockCC BY 2.0


大きな作業をいくつかの小さな作業に分解する――というライフハックは有名です。シゴタノ!にも、タスクを分割するタスク分割のコツなどのエントリがあります。

しかし、小さくしてもなお「取りかかれない」というような、どうしても気持ちが分厚い雲に覆われてしまっている日もあります。そんな時私は、「タスク前タスクを用意する」という方法を使っています。

タスク前タスクを用意する

やり始めればたいしたことなく終わるのに、なぜか取りかかりたくならない、という作業はあるでしょう。すでに述べたとおり気分的な理由から、なぜか取りかかりたくない、という日もあります。

タスクが問題であれ、環境が問題であれ、はたまた気分が問題であれ、そのまま「取りかかる直前で逡巡し続ける」のはいい方法ではありません。精神的にも好ましくないし、時間のムダにもなります。

そこで、本来の作業に取りかかる前に、ネット・サーフィンで時間をつぶしたり、どうでもいいような資料を読みふけったり、緊急性のないメールを読み返してしまう自分に気づいたら、それを「作業前作業」として、予定表にムリヤリ組み込んでしまうのです。

具体的にはたとえば、ネット・サーフィンを本来の作業前に「脱線して」やっているのであれば、ほんのわずかでもいいから「本来の作業」に役立つように、ネット・サーフィンします。「事前調査」というような位置づけで。

そして、その事前調査の時間を短く切ります。30秒でもいいのです。もともとやらなくてもよい作業なのですから。作業記録やタスク管理をしているなら、タスクの中に「事前調査30秒」などと書き込んでしまいます。そうすれば、脱線していたとしても、すでに仕事を始めていること、としてしまうことができます。

「乗り越えられないギャップ」を作らない

ここで大事なことは、脱線行為と「本来の作業」の間の、心理的なギャップを感じないようにすることです。よけいなプレッシャーや急に身構えてしまうから、脱線行為なら「気楽に」やれるのに、「本来の作業」には取りかかれなくなってしまうからです。

生きている限り、と言って言い過ぎなら起きている限り、私たちの人生は「行為の連続」と考えられます。だから「やる」か「やらない」かだというのは、厳密な言い方ではありません。人は常に何かを「やり続けて」います。

ですから、「何もやっていない状態」から「何かを始める状態」へと移行するために精神力が必要、という言い方もまた、厳密ではありません。むしろ、A的な行為からB的な作業へと、活動のタイプをスイッチするポイントで、「精神力」めいたものが必要になると言うべきでしょう。

このように考えると、脱線という形であれすでに何か作業めいたことを始めているのであれば、これを活用しない手はありません。これを短時間の「作業前作業」ととらえ、そのまま本作業へと進むべきです。これがうまくいけば、「取りかかれない」という問題に精神論で立ち向かわずに済みます。

この問題を真っ向から取り上げている物語があります。私たちが子供の頃には、アニメで放映までされていたマーク・トゥエインの『トム・ソーヤの冒険』です。

冒頭で、トムが、怖いおばさんに言いつけられた壁のペンキ塗りを、友達に押しつけてしまうというエピソードがあります。

トムはペンキ塗りをやりたくありません。そこでトリックを考えます。彼は楽しそうにペンキ塗りをやるのです。そこへ友達が通りかかり、トムがあまり楽しそうなので、ペンキ塗りをかわってくれと頼みます。

しかしトムはわざとかわってやるのをいやがるふりをして、恩着せがましく友達をじらします。最後には友達は、壁塗りをさせてもらうためにトムにおもちゃを差し出すところまで行くのです。

著者のマーク・トゥエインは、こういう不思議な人間心理について次のような説明を施しています。

「仕事とは、人がやらなければならないものであり、遊びとは、人がやらなくてもかまわないものだ」


» トム・ソーヤーの冒険 (新潮文庫)


私たちが簡単に本来の作業から「脱線」しがちであるのは、ネット・サーフィンやミクシィは「やらなくてもいいもの」だという認識があり、仕事は「やらなければならないものだ」という意識が強すぎるからです。事実その通りですが、そのギャップがあまり大きくなると、仕事に向かうプレッシャーが強くなりすぎてしまい、「脱線」から逃れられなくなるのです。