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『チームハックス』序章(1)「仕事の進捗」を共有できるか?
2007/07/22 Sun 18:42 by 大橋 悦夫 このエントリをはてなブックマークに追加 このエントリを含むはてなブックマーク

タグ:共同作業をうまく進める方法 / 書籍紹介 / 『チームハックス』

“人がさみしいのは、自分の周りに橋の代わりに壁を建ててしまうからだ。
──W・E・チャニング”

自分だけの「城」に閉じこもって、そこで「完璧な」仕事を成し遂げようとすることは、さみしさに加えて余計な手間をも、生み出しかねません。


個人ワークのスピードアップをテーマにした『スピードハックス』に続く形で、対象をチームに広げ、チームワークのパフォーマンス向上について、その考え方と具体的な方法についてまとめた『チームハックス』が、7/26(木)に発売になります。

前作同様、佐々木正悟さんとの共著作なのですが、今回は特に、文字通り2人の「チームハックス」を駆使して書き上げた一冊となりました。

なぜなら、あらかじめ2人の頭の中にあった方法論に加えて、実際に原稿を書き進める中で、「思いついて、やってみて、うまくいって、心理学的にも説明のつく、チームで仕事をする上で役に立つちょっとしたコツやアイデア」も可能な限り盛り込んだからです。

本書の内容については──言うまでもなく読んでいただくのが一番なのですが──、佐々木さんが担当された序章にコンパクトにまとまっていますので、今回と次回の2回に分けて、その全文をご紹介したいと思います。


●序章 チームはすべて「共有」から始まる

01 「仕事の進捗」を共有できるか?


「こんなふうに共同作業するくらいなら、自分一人で仕事をしたほうが、早い…」

そんなやりきれない憤懣(ふんまん)を、一度や二度感じたことはあるでしょう。あるいは、「組織やチームなんて、人間が集まっているだけで、何の役にも立ちはしない」などと、あきらめきっているかもしれません。

しかし、うまく機能すれば、一人では達成できないことを成し遂げてしまうのが「チーム」です。それに、そもそも会社勤めに限らず仕事をしている以上、一人きりで完結する仕事などあり得ないことも事実です。

一人きりで仕事をこなすわけではないということは、仕事の工夫も個人でできることには限界があることを意味します。流行の「ライフハック」にしても、個人の工夫で仕事の生産性を上げることには限界があります。いわゆる「組織の制約」が、障害となっているのかもしれません。

そこで、「チームハックス」が必要となるのです。チームハックスとは、「ライフハックス」をチームに導入し、チームで活用するためのハックスです。チームハックスを導入することによって、個人の工夫やライフハックスが、本当の意味で仕事に役立つようになるでしょう。

チームハックスを具体的に説明すると、ライフハックスをチームメンバーで共有していくことだといえます。そうすることにより、チームならではのデメリットや、ライフハックス活用の障壁となるものを、根こそぎ取り除くことができるのです。

たとえば、メンバーによっては、いつも自分の仕事を優先させ、チームのプロジェクトは他人任せという態度に固執する人がいます。

チームの仕事を優先させない人には、傍目には、身勝手で頼りにならないと見えてしまうでしょう。けれど、その人にはその人なりの考えがあるのかもしれません。チームの仕事とは、「チームの」仕事ですから、どこを率先してやればいいのかが、明確ではありません。余計なところまでやるのは損ですし、他のメンバーもどの程度本気で取り組んでいるか、定かではありません。

このような、よく聞かれるチームへの不満こそ「チームならではのデメリット」です。これを解決するハックとして「タスクや予定をメンバー間で共有してしまう」というチームハックがあります。このハックは、本書全体の根幹となるものです。そこでまず、このハックの説明から、話を進めていきます。

本書で一番の要点となるハックは、スケジュール、作業記録、タスクリストという、仕事の進捗に関わる情報を、可能な限りメンバーと共有してしまうことにあります。

これを本書の著者である、佐々木正悟と大橋悦夫とで実践してきました。

私たちは2人で本を書いたため、2人で実践しましたが、同じことをチームで実践することも、もちろん可能です。チーム内のメンバーで、ペアをいくつも作っていけばよいからです。1人余ってしまうということであれば、3人で組むのがよいでしょう。

次ページに示す記録は私・佐々木自身の2007年5月28日の予定、および5月28日の現実の実績です(図は省略)。

これは私自身が記録しているだけではなく、共著者である大橋さんもこのすべてを把握しています。

両者をよく見比べると分かるのですが、どうしても予定表どおりに行動することはできていないわけです。これを自分自身だけが知っているのであれば、そのまま見なかったことにもできますが、共著者の大橋さんもこのままの内容を知っているため、私には「説明責任」があります。むろん、生活の隅々までウォッチされているわけではないので、説明にはある程度の融通がききます。とはいえ、ずっとソーシャルネットワーキングサイト(SNS)の「mixi」をチェックしているなど、あまりおかしな行動については説明しないわけにはいかないのです。

その「説明」をするための時間も、あらかじめ設けてあります。「11:00 定例スカイプ」がそれです。ここで、「昨日」の実績を2人で読み返し、どうしてそのような結果になったかを簡単に検討します。そのうえで、「今日の予定」をお互いに確認し合います。

この過程で「この予定は実践できるのだろうか?」という素朴な疑問がわくことがよくあるわけです。これは、私たちに限らず、誰の予定であっても同じでしょう。

その理由は、未来の「自分」には、過度な期待をしがちでも、数時間後の「他人」には過度な期待をしないからです。私が大橋さんの予定に、あるいは大橋さんが私の予定に疑問を差し挟むことが容易なのは、期待という感情のかけ方が違うからです。未来の自分が仕事をすればするほど、現在の自分は楽になりますが、未来の大橋さんがどんなに仕事をこなしたとしても、私が楽になれるわけではありません。だから、他人の予定表の方が、「待った」をかけやすいのです。

「待った」をかけられたからといっても、予定を書き換えずに、メンバーの懸念を乗り越えて仕事を予定通り完了させられることもあるでしょう。しかしそれは、もしかすると疑念を差し挟まれたからこそできたことかもしれません。タスク共有、進捗の確認というチームハックスには、想像以上の効果が期待できます。

このように、自分だけでは律しきれず、コントロールしきれない作業予定や時間管理を、メンバーとともに進めていこうとする考え方が、「チームハックス」です。もちろんこれだけにとどまるものではありません。しかし、ここから始まることは、たしかなことです。


目次


●はじめに
●序章 チームはすべて「共有」から始まる
・01 「仕事の進捗」を共有できるか?
・02 「予定と実績の共有」がもたらすもの

●第1章 ビジョンを共有するチームを作る
・01 「他己紹介」で仲間を深く理解する
・02 チームのコミュニケーションに最適な「場」を用意する
・03 効果的なチーム名のつけ方
・04 「Wiki」にタスクリストを公開する
・05 “未完成”の仕事も共有してしまおう
・06 ミーティングで予定の表明はしない
 コラム:「KPT」でベストを尽くせるチームに

●第2章 「質問」でメンバーの力を巧みに引き出す
・01 メンバーとは「コーチ」し合う関係に
 コラム:頭の中にコーチを持つ
・02 アイデアは人から引っ張り出してもらう
・03 「どのようにすれば〜か?」と質問してみる
・04 その人を知りたければ「今後どうしたいか」を聞く
・05 「未来の行動」を変える質問の仕方
・06 結果的に要望を満たす“未完成な”質問
 コラム:グチをアイデアに変える

●第3章 コミュニケションの「困難」を克服する
・01 “有言実行”という呪縛
・02 “落ちこぼれ”をつくらない方法
・03 感情的な議論は不毛
・04 自分の都合のいいように解釈する
・05 他人を理解するための8つの心理的法則
 コラム:チームに見切りをつける覚悟も必要?

●第4章 チームを活性化させるメンバーへの「気配り」
・01 相づちのバリエーションを増やそう
・02 話を切り上げたいときのちょっとしたコツ
・03 最初の取りかかりだけ一緒に行う
・04 「思考停止語」を「行動促進語」に変換
 コラム:実際に「行動促進語」に変換してみよう
・05 人によって違う「当たり前」を共有しよう
・06 思わぬプレゼントを贈る
 コラム:プレゼントを選んで贈る難しさ
・07 やる気は「出す」より「与える」もの

●第5章 メンバーからの「プレッシャー」を追い風にする
・01 大変な仕事と簡単な仕事をセットにして頼んでみる
・02 「ついついしてしまう」心理を利用する
・03 チーム内に「早朝出社クラブ」を作る
・04 「Wiki」を使って常に見られている状態を作る
・05 ディスカッションには「タイムキーパー」が必要
・06 メンバーのタスクリストがすぐ見られると何ができる?
 コラム:思いついたことは即「ホワイトボード」に

●第6章 「共有」に役立つツールの実践事例
・01 相手の“リアルタイムな都合”を知る
・02 「スケジュールボード」をデジカメで撮影する
・03 「スカイプ」を使ってミーティング
・04 ブレインストーミングもオンラインで
・05 オンラインでタスクを管理する使い勝手のいいツール
・06 「グーグルカレンダー」で予定・実績・できなかった予定を共有
・07 すべての作業情報をグループブログに集中する
・08 大きなファイルでも「今すぐ」メールでやりとり可能
・09 記録・情報・知識の積み上げは「Wiki」が便利
 コラム:ツールはシンプルなものを一つだけ

●終章 「メンバーシップ」が人を動かす
・01 「リーダーシップ」から「メンバーシップ」へ
・02 「メンバーシップ」でリーダーの役割が変わる

●終わりに
●タグ索引


▼関連:
『チームハックス 仕事のパフォーマンスを3倍に上げる技術』




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