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『スピードハックス』をテコに
2007/01/26 Fri 23:59 by 大橋 悦夫 このエントリをはてなブックマークに追加 このエントリを含むはてなブックマーク

タグ:『スピードハックス』 / 共同作業をうまく進める方法 / 書籍紹介 / 「成功」に近づくために

1/31発売予定の『スピードハックス 仕事のスピードをいきなり3倍にする技術』の見本が手元に届きました。原稿の段階で繰り返し内容を読んではいたのですが、改めて本の形で目にしたり手で触れたりすると、やはり印象が変わるものです。

まぁ、それはともかく、章構成を俯瞰しながら、本書の執筆プロセスを振り返ってみます。


本書の構成は、

 ・はじめに(9ページ)
 ・9章から成る本文(224ページ)
 ・巻末付録(50ページ)
 ・終わりに(4ページ)
 ・タグ索引(2ページ)

という大きく分けて5つのパートから成っているのですが、今回は本文について。

本文9章の内訳は以下の通り。

 1.まず「取りかかる」気持ちを起こす
 2.「段取り」を決めてスピードを上げる
 3.スピードアップにつながる「やる気」を引き出す
 4.作業の時間をスライスして管理する
 5.自分の今の仕事環境をテコにする
 6.1つの「原則」を決めて作業中の迷いを断つ
 7.「習慣の力」を最大限に活用する
 8.「アイドルタイム」(待ち時間)を減らす
 9.とにかく「ゴール」までたどり着く


本書は、佐々木正悟さんとの共著で、章単位ではなく章の下位の節単位で、それぞれが得意とするテーマで分担しました。つまり、ブログで言えば、めいめいが書いたエントリーを関連する章にぶら下げている、という格好になっています。

そういう意味では、本書の執筆中は、まるで1つのブログを2人で書いているような感覚でした。

そして、原稿はそれぞれが手元にテキストファイルとして保存しておくと同時に、今回のために用意したwikiにもアップするようにしていました。

2人でほぼ同時進行で1章から順番に書いていったのですが、節を1つ書き上げるたびにwikiにアップするようにしていたため、以下のようなメリットがありました。

 ・お互いの進捗状況をリアルタイムに把握できた
 ・無言のピア・プレッシャーを得ることができた
 ・常に相手の最新の原稿を読めることで、自分の原稿を書く際の参考になった
 

また、このwikiは編集者はもちろん、DTPを担当する方にも開放していたため、それぞれ別の場所で仕事をしているにもかかわらず、一体感をもって作業を進めることができていたようです。言い換えれば、ある程度書きためてから編集者にメールで送る、という“中断”を挟むことなく作業を進めることができた、と言えます。

仮にこのwikiの内容を編集者がまったくチェックしていなかったとしても、書いている側には、

 「見られている」

という感覚が生まれます。書いたそばから他人の目にさらされることになるブログの感覚と非常に近いものを感じたわけです。

さらに、これはwikiならではの特徴によるのですが、原稿を修正した場合、その履歴はすべて記録され、後から遡って古い版を確認できるため、気に入らない部分をバッサリ削ったり、大量に加筆する、といった派手な修正を躊躇することなく行うことができました。これは、迷うことなく書き進めていくうえでは非常にありがたい仕組みでした。


ところで、バッサリ削った後に、

 「やっぱり最初の方がよかったかも…」

という場合は往々にしてあるわけで、そのような時のために手を入れる前の原稿ファイルを別名で残しておくなどの手続きをしておく必要があります。でも、いつもこのような“備え”をするわけではなく、

 「ちょっと修正するだけだから」

ということで、直に原稿ファイルを修正し始めると、図らずもあちこちに直したい箇所が見つかり、気づいたら原形は失われていて、もはや元に戻せなくなってしまう、という事態に陥ることもあります。

対策としては、修正作業に取りかかる際には、欠かさずバックアップを取るようにすること、ですが、「ちょっと修正するだけだから」という時でも、本当に例外なくこれを実践できるかというと、人間は柔軟性に富んでいますから、

 「まぁ、いいか」

と“ズル”をしてしまいがちです。

さらに、この“ズル”を正当化する能力にも長けていて、

 「余計な作業をすることで、修正しようと思っている内容を忘れてしまっては元も子もない」

などという、いかにももっともらしい言い訳を即座に思いつき、思いつくと同時にすでに手が動き始めてしまうのです。


こういった人間の「弱さ」を補ううえでは、wikiのようなツールを使うことは有効である、と改めて感じます。ただし、この有効性は

 「バックアップを取らなかったがために、元に戻せなくなった」

という苦い経験があるからこそ、ありがたく感じられるのであって、

 「修正する時は、必ずバックアップを取りましょう」

というルールを頭で覚えても、実感できない類の感覚でしょう。


かと言って、故意に「苦い経験」をすることは、あまりしたくないですし、そもそも「苦い」とわかっていれば無意識にこれを避けるはずです。

そう考えると、「これさえやれば、苦労せずして○○できるようになる」という方法論はあり得ない、ということになります。言葉で語られる方法論というものは、それを見聞きした人が潜在的に持っている、あるいは経験として保持している何か別のもの(あるいは類似したもの)を呼び起こすための「きっかけ」にしかならないわけです。

このような状況において、方法論を語る人間には、相手の中にある目に見えない何かを相手自身に想起してもらうための触媒を方法論という形式でアウトプットすることが求められることになります。つまり、提供できるのは方法論そのものではなく、それを間接的に動かすための「テコ」というわけです。

とは言え、ターゲットは目に見えないわけですから、このテコをどのようにアウトプットするか、という“方法論”も見つからないでしょう(言わば「方法論の方法論」)。

結局のところ、

 「思ったように伝わらなかった」

という苦い経験を繰り返していくしかないのでしょう。そして、「これなら伝わるはずだ!」という自信が強いほど、“苦さ”から得られるリターンも大きくなるはずです。


<関連>
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