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「がんばれ!」と言う前に

壁にぶつかって落ち込んでいるような時、身近にいる人から「すぐに結果が出なくても、倦まず弛まず続けていれば、きっといつか花が咲く」というように励ましてもらえることがあります。でも、逆の立場で、へこんでいる人がいても(個人的には)このような言葉はあまりかけないようにしています。

似たようなニュアンスの言葉に「がんばれ」があります。実はこの「がんばれ」という言葉が苦手です。賛否両論あると思いますが、「がんばれ」という言葉は、相手の状況をよく知らなくても使用可能であるため、使い方を誤ると「人の気持ちも知らないで」とか「いい気なものだ」という反感を買うことになりかねないからです。

もちろん、言われた方としてはすぐにカチンと来る前に「きちんと自分の立場や状況を説明していないのだから、相手も『がんばれ』としか言いようがなかろう」という“一呼吸”が求められなくもありません。

とはいえ、それは相手次第のことであり、自分ではどうにもならないことなので、相手にそういう気づかいをさせないためにも「がんばれ」に類する励ましの言葉を使う時には慎重になってしまうのです。

それでも「がんばれ」と言いたくなることはあります。その場合は、「がんばれ」の代わりに、相手が最も必要としているであろう言葉を相手の中に求めます。つまり、相手が置かれている状況を具体的に教えてもらい、役に立てそうな余地を可能な限り探るわけです。「がんばれ」は最後の手段です。

ただ、このアプローチは自分一人でも実践可能です。つまり、落ち込んでいる、あるいはやる気を失っている自分に気づいたら、その状況を言葉にしてみて、それを読み返し、自分なりのアドバイス(自分に対してですが)の余地を探すのです。

特に「やる気を失っている」状態というのは、疲労骨折のようなもので、直接の原因がよくわからないままに気づいたら“折れている”という場合が多いだけに厄介です。

このような症状を改善するヒントになりそうなのが以下のエントリーです(このブログでも何度か取り上げさせていただいている『ロボット心理学』の著者である佐々木正悟さんのブログです)

「馴染み深くて新しいもの」

つまり、どうせ同じパターンを欲しがっているくせに、人は「まだ見たことのない」ものを欲しがるのです。同じパターンであることはかまわないが、完全に同じ筋立てではだめなのです。面白くも何ともない、と思う。

つまり、この心理を一文で説明するならこうです。

「馴染みのパターンを使った、新しいモノをみせてくれ!」

自分がよく知っているパターンの、新しい行為。それが人の体験したいことなのです。

(中略)

この「馴染みのパターンを使った新しいモノ」が、自分の身の回りに見あたらなくなってくると、人は無気力になっていきます。そこで、「精神力」や「根性」を発揮して、自分をムリヤリ駆り立てることはできますが、内心ではむなしくなってしまいます。

上記のエントリーでは、「ドラえもん」の新刊を心待ちにしている状況を例に、なぜ別のマンガではなく「ドラえもん」でなければならないのかについて解説されています。

「やる気を失っている」状況は、「ドラえもん」の新刊が欲しい状態であり、「アラレちゃん」では満足できない心境と言えます。まずは「そうか、自分は『ドラえもん』の新刊が欲しいのだ!」ということに気づくことが先決なのです。

それに気づくことができれば、あとは「ドラえもん」の新刊を買いに走るだけです。

もし「ドラえもん」の新刊がまだ発売されていないのであれば、「じゃぁ、『PLUTO』の3巻を読もう」という代替案を思いつき、そちらにシフトすることで状況を打開することができるかも知れません。いずれにしても、わかっているつもりでも意外とわかっていない、自分が置かれた状況の把握が何よりも優先されるわけです。

まとめると、

 1.自分が置かれている状況を言葉で表現する
 2.自分が志向している「馴染みのパターン」を見つける
 3.「馴染みのパターン」を踏襲しつつ新しいチャレンジに目を向ける

という手順になります。

例えば、いつもは調子よく書けていたブログが急に書けなくなってしまったような時、調子よく書けていた時の気持ちや目指していたこと、何気なくであれ習慣としていたことなどを思い出すことで、「そもそも自分がブログを書いているのは…」という「馴染みのパターン」を浮き彫りにすることができます。

このように自分なりの「やる気リバイバル手順」を定めておけば、「とにかくがんばらなくっちゃ!」とやみくもに意気込んで無駄にエネルギーを消耗することを防げそうです。

「がんばれ」という一言は、その構造上、このような状況把握のステップをスキップしてしまうところに欠陥があるのではないかと考えています。もちろん、十分に状況を把握した上で、他にそれ以上の言葉がないために仕方なく使う、ということはあるにしても。

※佐々木正悟さんとはこの4月から日経ビジネスオンラインの「今日の仕事のコツ」という連載でご一緒させていただいています。